「Much Ado About Nothing」鑑賞


ジョス・ウィードンが「アベンジャーズ」の製作中に休みをとって、しれっと短期間で撮影した低予算映画。シェイクスピアの「から騒ぎ」の舞台を現代に移し替えたもので、レオナートの屋敷にドン・ペドロの一行がやってきたことで生じる男女2組の恋愛模様と、それを邪魔しようとするドン・ジョンたちの悪巧みが巻き起こす騒動を描いている。

マイナーな登場人物の性別が変更されている点などを除けば、シェイクスピアの原作に非常に忠実らしいのだが…私事で恐縮ですが俺って大学で英文学専攻だったにも関わらずシェイクスピアって殆ど読んだことがありませんでして(授業で無理矢理学ばせられるのが嫌だったのだよ)、この作品もどのくらい脚色されてるのかはよく分からず。

おまけにセリフはすべて当時のままで言い回しが難解だし、登場人物の名前も古めかしくて、誰が誰なのかが分からないまま前半が過ぎていったような。ここらへんは原作に精通している人が観るとずいぶん違った感想になるかと。それでも後半になって話が佳境を迎えてからはどんどん面白くなっていったし、独身主義を貫いていたツンデレの男女が結ばれる結末は非常に微笑ましいものであったよ。モノクロ映画だけど日本でもきちんと宣伝すれば格好のデートムービーになるんじゃないでしょうか。

出演者はクラーク・グレッグやネイザン・フィリオンをはじめ、以前にウィードンと仕事したことのある役者たちが勢揃い。ウィードンは監督・脚本だけでなく作曲も担当し、撮影してるのもウィードンの自宅なので、とてもアットホームな雰囲気に満ちた内容になっている。奥さんが設計した家らしいが、デカくていい家に住んでるよなあ。

舞台を現代にしたことで「彼女は死んだことにしよう!」とか「決闘だ!」といった話の展開はさすがに無理があるものの、そこは目をつむりましょう。コケティッシュな魅力のある良い作品ですよ。

「EUROPA REPORT」鑑賞


インディペンデント系のSF映画。ちょっとネタバレ気味に紹介します。

木星の衛星エウロパにおける生命体の存在の可能性を調査するために、6人の宇宙飛行士が宇宙船に乗って1年以上もかかるような旅に出る。前例のない任務に胸を躍らせる彼らだったが、やがて悲惨な事故が起きてしまう。それでもエウロパに到着して地表に着地し、調査を始めた彼らだったが、そこで彼らを待ち受けていたものは…というストーリー。

物語の大半は宇宙船のカメラで撮影された映像で構築されていて、いま流行りのファウンドフッテージもののスタイルをとっています。宇宙飛行士たちに何が起きたのかを、地球の科学者たちが明らかにするという流れになっていて、記録された映像に科学者のインタビューが挿入されているような仕組み。また記録映像が順に出てくるわけではなく、時系列が意図的に乱されているので特に前半は話の流れを把握するのに難儀するかも。

科学的考証は、まあ、低予算映画にしてはいいんじゃないんですか。例によって無重力の描写は変なところがあるし、着陸船に全員が乗り込まずに母船に誰か残るだろとか、命綱くらい付けろよとかツッコミどころはあるものの、許容できる範囲内かと。ただ同じファウンドフッテージものでも、ホラーだと映像にとつぜん幽霊が映っても「あーこれ超常現象だから」と言い訳が出来るのに対し、SFだとどうしても科学的なリアリティが求められてしまうため、インパクトが薄まってしまうのかなとラストのオチを見て実感する。そういう意味では「プロメテウス」の荒唐無稽さはあれはあれで正しかったのだろう。

低予算作品だけどミカエル・ニクヴィストやシャールト・コプリーといった日本でも知られた役者が出演しているほか、音楽をベアー・マクリーリーが担当している。エウロパの氷の下の水中映像としてヘンリー・カイザーの南極探検の映像を使用しているのはヴェルナー・ヘルツォークの「Wild Blue Yonder」と同じだが、あそこまでポエティックな内容ではなく、「月に囚われた男」に雰囲気は似ているかな。地味だけど頑張ったことがよく分かる一品。

「Super Clyde」鑑賞


ルパート・グリントとスティーブン・フライが出演したシットコム。シリーズ化されることはなかったものの、パイロット版がCBSのサイトで公開されていた。ボツになったとはいえパイロット版がこうして公開されるのは良いことだと思うので、NBCの「ワンダーウーマン」とかフォックスの「Locke & Key」なども公開されるべきだろう。

主人公のクライドはスーパーヒーロー・コミックが好きな内気な少年で、若くして両親を亡くしてからは兄と姉とともに裕福な叔父に引き取られて暮らしていたものの、その叔父も亡くなり、さらに彼の遺産がクライドたちには譲られなかったころからファストーフード店でバイトするしがない日々を送っていた。しかし叔父の遺産が実は遺言によって、彼の死後しばらくの間はクライドたちに譲るなと命じられていたことが判明し、突然クライドたちのもとに大金が舞い込んでくる。兄や姉がその金を私利私欲につぎ込む一方で、クライドは叔父がその財産を人助けのために使っていたことを知り、自分もヒーローになろうと思って、叔父の執事だったランドルフとともに人助けを試みるのだったが…というようなプロット。

話の設定はね、悪くはないんだけどねぇ。実際に観てみると確かにつまらなくて、シリーズ化されなかったのも無理はないかなという感じ。どうも話のテンポが悪いというか、ジョークのあとに変な間があるというか、なんか観ててスッキリしないんだよな。ルパート・グリントも話し方に力が入りすぎていて軽快さがないし、彼ってこんなに演技が硬かったっけ。タイラー・ラビーン演じるクライドの兄とかも、話にいまいち絡んでこなくて存在意義がよく分からん。タイラー・ラビーンは毎年新たなシットコムに出て打ち切られている感があるが、今年はついに放送されることもなかったか。

あとクライドがコミックのファンだということで、劇中のフォントにコミックサンズが使われてたり、映像がマンガコマのようになったりするんだが、あれ観て喜ぶようなコミック・ファンっているのかね?あの駄作「ジョナ・ヘックス」の冒頭クレジットもモーションコミックっぽくなっていたけど、コミックに関係した内容だからコミックっぽい映像にしようね、という考えは安直だと思うのは俺だけでしょうか。

アメリカのTVシリーズにイギリスの俳優がどんどん出演しているなか、知名度の高い俳優が2人も出ているのにシリーズ化されなかったのは皮肉ではありますが、来年あたりまた頑張って再挑戦して欲しいところです。

「THIS IS THE END」鑑賞


ジャド・アパトー系のコメディアンがみんな本人役で出演したコメディ映画。でもアパトー自身はこれには関わってないよ。

ジェイ・バルチェルがカナダから久しぶりにロサンゼルスにやってきて、旧友のセス・ローゲンと再会するところから話は始まる。2人はそのあとジェームズ・フランコの大邸宅で行われているパーティーに参加し、ジョナ・ヒルやマイケル・セラ、クレイグ・ロビンソンといった同業者たちに出会う。パーティーは夜中まで続いていたが、街が突然巨大な地震に襲われ、住民の多くが天からの青い光につつまれて昇天してしまう。これは聖書の黙示録に記された終末のときがやってきたのだ。

善人たちは神に選ばれて昇天できたが、ハリウッドのセレブなどという邪な連中が神に認められるわけもなく、大半が地割れに落ちたり業火に焼かれて死んでしまう。バルチェルとローゲン、ヒル、フランコ、ロビンソンの5人はフランコの家に閉じこもり、街を跋扈する魔物たちから身を守ろうとするが、招かれざる客としてダニー・マクブライドがやってきたことから内輪もめが始まり…というようなストーリー。

内輪ネタみたいなものは殆どないのだけど、まあ出演者(および彼らの出演作品)をどれだけ知ってるかで話をどれだけ楽しめるかが大きく変わってくるでしょう。話の中心となるのがジェイ・バルチェルやダニー・マクブライドであることを考えると、日本での劇場公開が見送られたのも無理はないかな。セス・ローゲンはエヴァン・ゴールドバーグと共同監督を務めていて、コメディもできるイケメンのジェームズ・フランコはやはり得だなーといった感じ。他にもエマ・ワトソンやリアーナ、アジズ・アンサリ、ポール・ラッドなどがチョイ役で出ています。そしていちばん体張ってるのがチャニング・テイタム。そこまでやるか?と思うくらいに頑張ってます。

話の半分くらいは出演者のアドリブだったらしく、口論のシーンなんかは本当にケンカしてたらしいが、そんな彼らのやり取りをずっと楽しむような内容になっています。プロット自体は中学生がノートに落書きしてるようなレベルなんだけどね。それで106分という尺はちょっと長いよな。長尺になるところは別にアパトーに見習わなくてもいいのに。あと出演者の大半がユダヤ系であるにも関わらず、「ヨハネの黙示録」通りに話が展開していくことへのツッコミが無かったのが意外だったかな。

前述したように人を選ぶ内容だし、吉本の芸人が総出演したようなノリの映画ではあるものの、個人的にはそれなりに楽しめました。アメリカではヒットしたことで続編の話も出ているらしく、今度はこの映画のプレミア試写会において天変地異がおきるという、なんかメタな話になるらしいのでそっちにも期待しておきます。

「MASTERS OF SEX」鑑賞


Showtimeの新シリーズ。公式サイトで第1話が視聴可能だよ。

ドキッとするような題名だが内容は決して卑猥なものではなく、50年代から90年代にかけて性科学の研究を行ったウィリアム・H・マスターズとヴァージニア・ジョンソンを主人公にした話になっている。産婦人科医であったマスターズは男女における性的興奮などに興味を持ち、勤務する病院が難色を示すのにも構わず独自に研究行為を行っていく。その彼に秘書として雇われたジョンソンは彼の有能な助手として働き、やがてパートーナーとなるのだが…というようなプロット。

当然ながら男女の裸もたくさん出てくるのですが、電極をいろいろ付けられて科学者の前で行為に及んでたりするのを見るとなんか萎えますね。カメラをつけて女性の内部を調べよう、なんてことを大真面目にやってるのは結構笑えたりする。テーマ的にはどうしても「愛についてのキンゼイ・レポート」に似ていて、マスターズが美人の妻を持ちながらも性には完全に素人で、そのため性を科学的に研究しようと思い立つあたりも「キンゼイ」に似ているかな。一方でジョンソンは性的に奔放で、その経験をもってマスターズを助けていたりする。

マスターズを演じるのがマイケル・シーンで、ジョンソンを演じるのがリジー・キャプラン。マイケル・シーンの演技を毎週観れるというのは、結構特筆すべきことなのでは。他にもボー・ブリッジスやマーゴ・マーティンデールなどが出演していた。

マスターズとジョンソンが実生活で結婚する(後に離婚)することを考えると、病院での研究だけでなく私生活のほうでもドロドロとしたドラマが描かれていくのかな。また彼らの研究は当時でも現在でも大きな議論を呼んだもので(同性愛者の「矯正」なども試みたらしい)、大きなタブーをきちんと扱っているのには好感が持てるのですが、時代的には60年代の活動が中心になるのかな?ウーマンリブや公民権運動などが絡んでくることも示唆されてます。

「AVクラブ」では今年の新シリーズのうちでも最良のもの、というような褒め方がされていたけど、個人的にはこれって「キンゼイ」でやってなくね?という感想でした。でも「マッドメン」みたいに高い評価を受ける作品になる可能性は高いかもしれない。