更新小休止

訳あって青森のド田舎に小旅行することになったので、来週まで更新休止。

国内旅行って殆どしたことないんで、海外へ行くよりもなんか緊張するなあ。帰りの電車は時間に余裕を持ってスケジュールを組んだつもりなのに、2時間に一本しか電車のない駅があることが判明し、チケットを取り直さなければならなくなってしまった。

無事に帰ってこれるんだろうか。

「300」トレーラー

アップされてた(リンク切れてるかも)。

なんかチャチな気がするのは画質が悪いせいだろうか。
レオニダスの妻が多分にフィーチャーされてるあたり、原作とけっこう異なるものになるかもしれない。例の奇形児は「悪魔の毒々モンスター」みたい。

「シン・シティ」と同じで、原作に忠実に作ってんだけど原作に及ばない出来の映画になりそうな予感。

「BRICK」鑑賞


高校を舞台にした新型のフィルム・ノワールということでカルト人気を博した低予算映画「BRICK」を観る。

大・傑・作・!

すげー面白い。失踪した元彼女の行方を探そうとする主人公をはじめ、頭脳派の相棒、麻薬王、その血気盛んな手下、町のごろつき、主人公にクギを刺す警察署長(の代わりの校長先生)、そしてもちろんファム・ファタールといったノワールにつきもののキャラクターたちが登場し、謎が謎を呼ぶプロットのなかでは主人公がぶちのめされたり、好ましからざる死体が発見されたり、最後にどんでん返しが待っていたりと、これまた典型的なノワールのストーリー展開がいくつも起きるんだが、決してクリーシェだらけの話にはならず、むしろ古典的な枠組みのなかで斬新なストーリーテリングを行うことに成功しているのが素晴らしい。またストーリー展開だけでなく編集のテンポも良く出来ていて、観ているうちにどんどん話に引き込まれていく作品。

ストーリーについてはネタバレになるのであまり書かないが、あるカリフォルニアの高校のアウトサイダー的存在である主人公が、2ヶ月前に分かれた彼女から突然電話で連絡を受ける。彼女は何かにひどく怯えており、何があったのかを話さないまま電話を切ってしまう。こうして主人公は彼女の行方を追い、彼女が残した謎の言葉「ブリック(レンガ)」が何なのかを突き止めようとするうちに、大きな陰謀にまきこまれていく…といったもの。大したストーリー説明になってないね。失礼。

この映画を見るまで、主人公を演じるジョセフ・ゴードン・レヴィットという役者を知らなかったんだけど、その演技力のうまさは若手俳優ナンバーワンとまで言われている人らしい。メガネをかけて安っぽい服を着ている主人公の姿はフィリップ・マーロウやサム・スペードといった従来のガムシュー(探偵)のイメージとはずいぶん違うけど、その鋭い観察力と頭脳の明晰さで謎を解いていく姿はイヤミなところがなく非常にクール。黒人探偵シャフトことリチャード・ラウンドトゥリーもちょっと出てるよ。

高校が舞台の探偵ものというと、最近ではテレビシリーズの「ヴェロニカ・マーズ」があるけど、この映画はあれよりも内容が暗くて重く、雰囲気的には同じ低予算映画の「プライマー」に似たところがあるかな。高校特有の人間関係の窮屈さなどがうまく表現されていて、大人の上流社会の世界をそのままエリート学生の世界に置き換えてるところなんかは発想の勝利と言ってもいいだろう。プロットが複雑すぎるとかセリフが不自然すぎるといった批判もあるらしいけど、あくまでもこれはノワール映画へのオマージュ的作品なんだから、スタイリッシュなセリフの数々を吟味して鑑賞しましょう。

ノワールに興味ない人でも十分楽しめる作品。お勧め!

「アメリカン・コミックス大全」読了

近所の図書館で小野耕世の「アメリカン・コミックス大全」なる本を発見したので、借りて読む。小野耕世といえば70年代のSFマガジンで書いてた、アメコミに関するコラムを集めた本「スーパーマンが飛ぶ」と「バットマンになりたい」は結構名著だと思ってるんだが、この本は実にそれ以来の、30年くらいぶりの単行本になるらしい。もっともその間に「マウス」とか「ボーン」の翻訳など、何かしらアメコミと縁のある仕事をしてた人なんだけどね。

本の内容は3章に分けられ、最初は70年代の原稿をベースに、それ以前のコミックおよびスタン・リーやジャック・カービィにまつわる文章(本人たちへのインタビューもあり)が載せられている。
第2章は新聞連載のコミックが中心で、「ブロンディ」や「リル・アブナー」といった古典的作品の話から、「キャルビンとホッブス」や「善かれ悪しかれ」といった最近の作品などについて書かれている。日本ではなかなか知ることができない、アメリカの新聞連載コミックスについての情報はかなり貴重。「ブロンディ」を語るサミュエル・フラーのインタビューなんてのも載せられている。

そして第3章はいわゆるオルタネイティヴ・コミックスが中心となり、これも日本ではあまり知られていないジェフ・スミスやアート・スピーゲルマンやジョー・サッコといった作家たちの話が、本人たちの生の声とともに紹介されているのが非常にためになる。ハーヴェイ・カーツマンやウィル・アイズナーといった古典的「オルタネイティヴ」作家についての文章もあり。

個人的には小野耕世ていうと70年代の人というイメージが強かったんだけど、この本に書かれた文章は非常にアップトゥデートなものであり、「スパーダーマン」や「バットマン」の映画版や、911テロがコミックに及ぼした影響などについてもいろいろ書かれている。よってアメリカン・コミックス(特にオルタネイティヴ系)の最近の状況を知るうえでも役立つ本だと言えよう。最近は映画雑誌がよく「スーパーマン・リターンズ」や「X3」つながりで、アメコミに関する生半可で間違いだらけの記事を載せてるけど、あんなのとは比べものにならないくらい内容の濃い本になっている。

但し残念なのは、文体がいわゆる独りよがりな学者風でとても読みづらい(つうか文章ヘタ)うえ、明らかな誤訳にもとづいた文章があったり、ジム・ウッドリングの「フランク」について「フレッド」と誤記してたり、「ウォッチメン」のアーティストを「ウィリアム・ギブソン」と記したり(!)と、モウロクしてまっかあ?と思ってしまうようなミスが多い点。本当に近年の文章は文脈の逸脱が激しく、読んでてイライラさせられるところも少なくない。「ヘルナンデス兄弟という名まえは、明らかにスペイン系だから、彼らがメキシコとの国境近くの出身なのか、中米に住んでいたのか、そのあたりのことはわからない。もちろん調べればわかるけれど、それはたいしたことではない。」なんて文を読んだときは、本をブン投げようかと思ったくらい。ちょっとは調べろよ!あと「バッドマン」なんて表記が普通に載ってるのを見ると、編集者もそうとう手抜き仕事やったんだろうね。

こうした欠点のおかげで決して出来の素晴らしい本だとはいえないけど、アメコミを身近な視点から紹介した本としては日本では唯一といってもいいくらいのものであるのは間違いない。読むにはアメコミの初歩知識が必要かもしれないが、アメコミの深い世界を知りたい方には一読をお勧めします。

<国際天文学連合>「第10惑星」を「エリス」と命名

「ジーナ」というニックネームが付けられていた矮惑星(仮訳)「2003UB313」に、ギリシャ神話の混沌の女神にちなんで「エリス」という正式名称が与えられたとか

「ジーナ」といえば「闘姫ジーナ」こと”Xena: Warrior Princess”が連想されるということで欧米のギークどもの間で話題になった名前だけど、主人公ジーナを演じる役者がルーシー・ローレス(Lucy Lawless)だからLawless→Lawlessness→混沌→混沌の神→エリス、という感じでつながっていったんじゃないかと思うんだが、違うかな。

ちなみにこのエリスという神、トロイ戦争を勃発させた張本人とされるだけでなく、アメリカはベイエリア生まれのパロディ宗教「ディスコーディアニズム」においては最も崇められる存在であり、今回の命名はそっち方面でも話題になってるらしい。俺もアマチュアのディスコーディアンなので、我々の女神の名前がこうしてポピュラーになったことは非常に喜ばしいことなのです。

Hail Eris! All hail Discordia!