「トレジャーハンター・クミコ」鑑賞

Kumiko, The Treasure Hunter
iTunesストアで安かったので何とはなしに視聴。WOWOWで今週やるみたいですが。

コーエン兄弟の映画「ファーゴ」に出てくる、雪の中に隠された大金が実在すると信じ込み、単身ミネソタに渡って死亡したという日本人女性の物語をフィクション化したもの。しかしそもそもクミコの話というのが都市伝説のようなもので、ファーゴが好きだったという日本人女性が彼の地で自殺したことについて、「彼女は大金を探していた」という尾ひれがついてしまったものらしい。

主人公のクミコは社長のお茶汲みをしているしがないOLで、会社の同僚たちとも打ち解けず、実家の母親には早く結婚をしろと小言を言われる毎日を過ごしている女性。アパートではウサギを飼っているもののエサは丸投げだし、学生時代の友人にお茶に呼ばれても脱兎のごとく逃げ出してしまう、まあいろいろ問題を抱えた人なのだが、そんな彼女の唯一の趣味というか日課が、家でカップラーメンをすすりながらコーエン兄弟の「ファーゴ」を鑑賞すること(DVDの時代にすりきれたVHSテープで観ている)。そして例の大金を隠すシーンでひらめいた彼女は、画面をもとに宝の地図を書き上げ(なぜか布に刺繍する)、単身ファーゴに向かうのだが…というプロット。

もちろん安月給のOLが海外で宝探しをする予算もなく、彼女は本能の赴くままに会社の金を使い、タクシーを無賃乗車し、ひたすら真冬のファーゴを目指す!日本とくらべてミネソタの人たちはみんな親切で、クミコに手を差し伸べてくれるのだが、いわゆる『痛い』女性がそんな周囲の親切を反故にし、野生動物のごとく逃げ出して雪原に向かう光景は、観てて楽しいかというとそうでもないのよな。もうちょっとクミコの内面を描いても良かったような気がするが、そこは難しいとこだな。あと音楽がやけにおどろおどろしくて、ペットハウスの動物の鳴き声とか雪嵐の音とかがサイコな主人公の姿と相まってホラーっぽい雰囲気にもなっています。プロデューサーにアレキサンダー・ペインが名を連ねているが、彼のロードムービーほどのユーモアは無い感じ。

話の前半は日本のシーンだが、日本人スタッフも加わって撮影してることもあり変な日本の描写などはなし。クミコを演じる菊地凛子の無口な演技は、結局のところ彼女の英語の拙さを反映したものであって何度もこういう役を演じるべきではないと思うが、目つきとへの字になった口だけでの演技は巧かったし、こういう女性うちの職場にもいるじゃん!と思ったりもしました。

肝心のラストはね、おれは逃げちゃったなと感じましたが、まあ人によって解釈が分かれるとことでしょう。この映画を作った意図はなにか?と考えるとあまり答えは見当たらないのだが、まあオフビートな映画としては悪くないです。

「Moonbeam City」鑑賞

Moonbeam City, Season 1
コメディ・セントラルの新作アニメーション。

舞台となるのは題名ずばりのムーンビーム・シティ。すべてがゴージャスで美女だらけの優雅な街だが、その裏では麻薬が蔓延し、犯罪が多発していた。そんなななかでムーンビーム・シティ市警の刑事ダズル・ノヴァクたちは悪と戦うために奮闘するのだった…というような設定。

パステルカラーのレーザーがきらめき、シンセサイザーがガンガン鳴り響くさまは「マイアミ・バイス」のパスティーシュであり、アートはそのまんまパトリック・ナゲル(デュラン・デュランの「リオ」のジャケット画の人な)スタイルを踏襲しているのですが、全体的にはこれFXの「ARCHER」のパクリじゃん!口だけ達者で女好きだけど才能はまったくない主人公だとか、口うるさい女上司とか、現場での活動に憧れるデスク係の女の子とか、あちらの番組で出てきたキャラクターをまんまなぞっている感じ。まだ放送前なのでレビューとかはあがってないけれど、あちらのメディアでもこの類似性は絶対叩かれるだろうな。

声優にはロブ・ロウやエリザベス・バンクス、ケイト・マーラ、ウィル・フォルテといった有名どころが起用されているが、ロブ・ロウって今年だけで3つくらい新番組に出てないか?なんでそんな働くんだ?また裁判にでも巻き込まれてるのか?しかし「ARCHER」がジョン・H・ベンジャミンによる絶妙なセリフ廻しを誇るのに対し、こちらはロブ・ロウがカッコつけて話してるだけなのであまり面白くはない。

コメディ・セントラルって最近は「Key & Peele」とか「Inside Amy Schumer」とか強力な番組を揃えてる印象があるのですが、これはあまり長続きしないかも。