機内で観た映画2015

ヨーロッパへ数日の出張に行っていたので、飛行機のなかで観た映画の感想をざっと:

「SPY」:メリッサ・マッカーシー主演のスパイ・コメディ。マシュー・ヴォーンの「キングスマン」にも劣らぬスパイ映画への愛情を込めてポール・フェイグが監督しており、思ってたよりもずっと面白かった。よくある主人公が愚鈍で無能なコメディと違い、実戦の経験は無いものの優秀なエージェントだというのがいいんだよな。ミランダ・ハートやピーター・セラフィノウィッツといった脇を固めるキャストも良いし、ジェイソン・ステイサムとジュード・ロウのコメディ演技も面白い。これ日本で劇場公開しないんだっけ?

・「SLOW WEST」:アートシネマっぽいウェスタン。マイケル・ファスベンダー演じる無骨なガンマンはカッコ良いのだが、彼と一緒に旅する純朴な青年の言動が青っちょろくてイライラする。ラストの銃撃戦もいまいちスカッとしないので観ていて不満が残る内容。

・「カリフォルニア・ダウン」:揺れる機内で観るとまさかの4DX体験!地震の科学的信憑性(内地の地震であんな派手な津波が起きるのかよ、とか)よりも、ロック様とカーラ・グギノの娘が真っ白な肌を持っているというのが気になって仕方なかったのですが。ロック様は家族の愛を取り戻す前に、妻の不貞を疑うべきだったのだろう。あとヨアン・グリフィズってやはり悪人顔だよな。

・「Asterix and Obelix: Mansion of the Gods」:フランスのCGアニメ。原作のコミックは商業主義とかの風刺が凝縮されていてアステリックス作品のなかでも難解なほうだが、これは話の展開をうまーく脚色して、原作のエピソードを丁寧に補填している。最後のローマ軍との戦いも、アステリックス側の一方的な勝利になりがちなところにきちんと緊迫感を持ち込んでいた。コミックを映像化するときはこうするんだよ、という1つのお手本になるくらいの出来ではないかと。

・「Me and Earl and the Dying Girl」:難病の少女をめぐるヤングアダルト小説という、最近流行りの原作をもった作品ですが、主人公たちがアートシネマかぶれのスネた奴、というのが共感が持てる。ヘルツォークとかニコラス・ローグのパロディを黙々と自主制作しているという。ナレーションに頼りすぎてるのがサンダンス映画だな、とは思うものの、ブライアン・イーノによる音楽も効果的に使われていて、最後はちょっと感動してしまったよ。主人公の親たちも手堅い役者たちが揃ってるし(モリー・シャノンがすごく良かった)、結構よい作品。

「イカとクジラ」でも使われてたけど、「ストリート・ハッスル」って青春映画の定番曲になったのか?

「The Daily Show with Trevor Noah」開始

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ジョン・スチュワートに続く新司会者として、トレバー・ノアを迎えた「デイリーショー」が今週から始まったのだよ。

52歳のスチュワートから31歳のノアにバトンタッチされて雰囲気がグンと若くなった感じ。俺みたいな40代にとっては自分の世代が跳ばされたような気もして寂しいが、スチュワートも司会を始めたころは30代半ばだったんだよな。セットも大きくなったような?

なお番組の構成は以前のままで、「特派員」としてはジョーダン・クレッパーやアル・マドリガル、そしておそらくジェシカ・ウィリアムズやジョン・ホッジマンがスチュワートのときからそのまま残っていて、ロイ・ウッド・ジュニアなど3人くらいが新たに加わったみたい。

南アフリカ出身のトレバー・ノアはアパルトヘイトの時代に白人の父と黒人の母のあいだに生まれ、当時は異人種間の結婚は違法であったために母親が実際に収監されたのだとか。そして後に離婚した母親は別の男性のDVに苦しめられて銃撃されるという、実にサウスアフリカンな経歴をノアは持っているわけですが、そんな苦労を感じさせないほど彼は若さにあふれ、似たような番組を南アフリカで司会していたということで初週から自身に満ちていていい感じ。セレブや政治家をゲストに迎えても余裕をもって接しているし、「デイリーショー」がいちばんネタにしにくい銃の乱射事件が早くも起きたものの、うまく扱っていたな。

まだ第一週ということで「僕は新人だから…」と「アフリカに住んでたころは…」といった発言をよくしているけど、じきに慣れてくるでしょう。個人的にはアメリカの時事ネタを(自虐的に)語るのはアメリカ人でないと視聴者に反感を持たれるのではないかと思ってましたが、そこらへんは「デイリーショー」の先輩のジョン・オリバーの成功が参考になるでしょう。

またスチュワートが「ユダヤ人の愉快なおっさん」という感じだったのに対し、ノアは若いぶんセリフやツッコミも多くて、ジョークの量が2割くらい多いかな?そのぶんジョークにトゲがあるような印象も受けるが、まあ回を重ねるにつれていろいろ向上していくことに期待。あと8カ国語を話せるという一方で英語に訛りがある(「really」を「レアリー」と発音してるような)のが気になるが、まあクレイグ・ファーガソンの訛りよりはマシかと。

革命的な存在であったジョン・スチュワートを超えるのは相当難しいだろうけど、第一週を観た限りではかなりいい感じで始まっているので、大統領選をはじめ多くのニュースについて鋭くかつ面白くツッコんでくれることに期待しましょう。