「THE DETOUR」鑑賞

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「デイリーショー」出身のジェイソン・ジョーンズが主演するTBSの新シリーズ。同じく「デイリーショー」出身でジョーンズの奥さんのサマンサ・ビーがジョーンズとともにプロデューサーを務めてるわけですが、彼女は彼女でTBSの「Full Frontal with Samantha Bee」のホストもやってるので、夫婦揃ってTBSで番組を持ってるわけですね。

ジョーンズ演じるネイトは家族想いだがどこか抜けたところのある父親で、妻と娘と息子を連れてフロリダへ家族旅行に行くはずだったのが、飛行機代が払えないということで彼の独断でペンシルバニア州をボロな車に乗って突っ切ることに。しかし案の定車が故障し、さらに地元の住民たちとのトラブルに見舞われて…というあらすじ。

一家のママさんを演じるのは「Justified」のナタリー・ジー。ケーブル局の番組ということもあり通常のシットコムに比べて際どいネタもあり、間違って子供がストリップクラブに入ってしまうなんて展開もあります。その一方で最近のネット配信向けの「Difficult People」や「Casual」みたいな、ギャグの少ないダウナー系のコメディよりかは典型的なシットコムに近い感じ。

これアメリカの田舎をずっとうろつく内容になるのかな?ロード・トリップ系のコメディといえば、映画ではそれこそ「ロード・トリップ」とか「お!バカんす家族」とかいろいろあるけど、テレビシリーズでは聞いたことがないな。しかも早くもシーズン2の製作が決定したらいく、今後もずっと旅を続ける話になるのかしらん。

ジョークは比較的凡庸で、そんなに面白いという訳ではないものの、ジェイソン・ジョーンズの体を張った演技がやはり面白いのですよ。「デイリーショー」のときはイランやインドやロシアに赴き、現地の人々の白い目を無視して(ゴルバチョフには本気で怒られていた)アホな特派員を演じていた彼ですが、コメディの演技がここまで上手いとは思わなかったな。

個人的には健闘してもらいたい番組。「デイリーショー」絡みの番組はどうしても評価が甘くなってしまうのです。

「Wynona Earp」鑑賞

Wynonna Earp, Season 1
Syfyの新シリーズ。IDWから出版されているボー・スミス(DCで「ガイ・ガードナー」とか書いてた人ね)の同名コミックが原作らしいが、すまんおれ原作の存在知らなかったよ。

舞台となるのはアメリカの田舎町パーガトリー。伝説の保安官ワイアット・アープが開拓したというこの町に、彼の子孫であるワイノナ・アープが叔父の葬式のため数年ぶりに帰郷してくる。実はワイアットが法のもとに処刑したという77人の悪者たちが悪魔となって蘇っており、「レヴェナント」と呼ばれている彼らを倒せるのはワイアットの子孫だけなのだが、すでに戦いで父親と姉を失ったワイノナは自らの運命を嫌って町を離れていたのだ。しかし帰郷しているあいだに町が悪魔に狙われ、妹が誘拐されたことを知った彼女は、悪魔を倒せるワイアットの銃「ピースメーカー」を抱え、悪魔たちから町を守ることを決意するのだった…というあらすじ。

ワイノナの味方には彼女の妹や政府の超常現象部門のエージェント、あと蘇ったドク・ホリデイ?なんかがいるのだが、レヴェナントを倒せるのはアープ家の年長者でワイアットの銃でのみ、とか微妙にややこしい設定があるみたい。ワイノナもケンカが強いんだか弱いんだかよく分からないし。

カナダで低予算で撮影された典型的なSyfyのアクション番組といったところですが、全体的なノリは意外と悪くない。出演者も比較的無名の人ばかりなものの、主演を務めるメラニー・スクロファーノも役にはまってるのではないかと。まだ荒削りなところが多い印象は否めないが、もっと洗練してくればそれなりに楽しめる番組になるかもしれない。

「ANOMALISA」鑑賞

Anomalisa
チャーリー・カウフマンの新作。以下はネタバレ注意な。

元々は10年くらい前に音声のみの劇として上演されたものを、ストップ・モーション・アニメとして映像化したもの。人形の動きとかが、むかしアダルトスイムでやってた「モラル・オレル」に似てるな、と思ったら共同監督のデューク・ジョンソンは「オレル」のクリエーターだったディーノ・スタマトプーロスのもとで働いていた人なんですね。

舞台は2005年。仕事のためにLAからシンシナティにやってきた中年男性のマイケルは、ひとりホテルにチェックインしたあと、かつての恋人に会おうとして彼女をバーに呼び出す。しかし久しぶりの再会もケンカで終わり、寂しく部屋に戻った彼は、別の部屋に宿泊しているリサという女性に出会う。彼女に魅かれるものを感じたマイケルはリサを自分の部屋に誘い、二人は親密な夜を過ごすのだったが…というあらすじ。

デューク・ジョンソンの姉の元夫をモデルにしたというマイケルの声を演じるのがデヴィッド・シューリスで、シャイな女性であるリサの声を演じるのがジェニファー・ジェイソン・リー。その他のキャラクターの声はすべてトム・ヌーナンがあてていて、マイケルの元彼女などから男の声がするのは変に感じられるけど、すべて意味があるんすよ。

アニメーションの出来も素晴らしく、人形の表情がものすごく豊かで人物の感情を的確に表現している。ホテルのデザインなども丁寧に作り込まれていて非常に美しい。一方で「コラライン」などでは消されていた顔の目の部分の継ぎ目がそのまま残されているし、やけに艶かしいセックス描写なんかは人形を使う必要があったのかと思ったけど、これもまた意味があって、人形アニメでないとできなかった表現がきちんと隠されてるわけですね。

話のプロット自体は比較的シンプルな反面、最後のセリフも含めて「ん?」と感じるようなところがいくつかあるわけですが、観終わったあとでそれらについてよくよく考えると、ちゃんと意味が隠されていることに気づくのですね。ホテルの名前とか。

思うに自分と他者とのアイデンティティの境界が大きなテーマになっていて、海外では内容についてある1つの解釈が主流になっているようだけど、それが正しいと思うかどうかは観た人の判断にまかせます。鑑賞後にいろいろ考えさせられる作品であった。

あーげましゅよーあーげましゅよー。