「VIRTUALITY」鑑賞

「ギャラクティカ」のロン・ムーアとマイケル・テイラーが脚本で、「ハンコック」のピーター・バーグが監督という豪華なスタッフによるフォックスのSFドラマ。

舞台になるのは2040年の未来。地球は気象の急激な変化などに見舞われ、人類はあと100年で絶滅するとまで予測されていた。そんななかフェイトン号という人類初の恒星間宇宙船が地球を出発する。フェイトン号のクルー10人に与えられた使命は、エリダヌス座イプシロン星まで10年をかけて旅を行い、地球外知的生命の有無を確認することと、地球を救うための物資を持ち帰るというもの。クルーの行動は同行する2人のテレビ局スタッフによって逐次録画され、「目玉番組」として地球へ送信されるのだった。また長旅におけるクルーのストレスを発散させるため、各人にはヴァーチャル・リアリティのシステムが与えられ、そこで好きな仮想現実に浸って遊ぶことができるのだった。しかし彼らの仮想現実のなかに謎の人物が出現し、仮想のクルーを次々と殺していく出来事が起きる。これと同時に、現実世界でも不可解な出来事が起きてクルーの1人が命を落とす。これらはすべて機材の故障によるものなのか、それとも何者かがクルーを狙っているのか…というのがおおまかなプロット。

「2001年宇宙の旅」にフィリップ・K・ディックの小説にリアリティー番組(あとちょっと宇宙戦艦ヤマト)といった要素がてんこ盛りの内容ですが、それらが巧みに編み込まれていてかなり楽しめる、緊張感に溢れた作品になっている。リアリティー番組のスタイルを使うことでクルー同士の葛藤を描いたり視聴率至上主義を皮肉っているほか、現実とは何かというテーマを扱っていたりして話はなかなか深い。またフェイトン号も「2001年」のディスカバリー号なみにローテクな宇宙船で、核パルス推進を使って加速するところは結構圧巻。久しぶりにSFしてる番組を観たなあという感じ。

でね、俺はてっきりこれって夏のミニシリーズだと思ってたのよ。6話くらいで完結するような。でも本当はピックアップされなかったTVシリーズのパイロット版らしい…つまり話の続きは一切予定されてない!例によってフォックスは、このパイロット版の視聴率が良かったらシリーズ化も考えるみたいなことを言ってるらしいんだが、視聴率が低いことで知られる金曜日の夜に何の宣伝もなしに放送したって視聴率が稼げるわけないじゃん。実際に視聴率は悪かったようなので、フォックスでのシリーズ化はまず無理だろう。パイロット版がクリフハンガー的な終わりかたをするだけに、話の続きがどうなるのかものすごく気になるんだがなあ。蛇の生殺しとはこのことか。せめてサイファイチャンネルあたりが拾ってくれないものか。やはりSF番組にとってフォックスは鬼門だな。

ちなみにクルーの1人の仮想現実が「ロック・コンサートで片言の日本語で歌う」というものなんですが、あれは何なんですか?「マンスターズはわからない〜だっーてキチガイだから〜」なんて歌われるともう脱力しまくり。いくら外国語だからって放送禁止用語で歌うなよ!

「THE BOX」トレーラー


リチャード・ケリーの新作。キャメロン・ディアスもオバハンになったな。

「サウスランド・テイルズ」は風呂敷を広げすぎて失敗した感のあるケリーだけど、今回はリチャード・マシスンの短編が原作とのことなので、「ドニー・ダーコ」くらいにはコンパクトにまとまった話になることを期待(なんか派手なアクションがありそうだけど)。

リチャード・マシスンのテレビ/映画に対する貢献度というのは、もっと評価されていいと個人的には思う。

ジャッコー死去

あんま関係ない話で恐縮ですが、俺むかし「ビアハンター」として知られるビール評論家のマイケル・ジャクソンに日本のビールを紹介するという夢を見たことがありまして、それから目が覚めて朝刊を読んだらそのジャクソンがちょうど来日してるのを知った、という経験がある。

今まで予知夢とかいうものは一切見たことがなくて、だから悪夢を見たりすると逆に安心したりするのですが(現実にならないから)、あの夢だけは現実とちょっと関連した夢をみた特殊な例でありました。

いや、それだけなんですけどね。80年代のミュージック・シーンって「スリラー前」と「スリラー後」にきれいに分けることができるよな。

「Better Off Ted」鑑賞

iTunesストアで無料配布されてた、ABCのラフトラックなしシットコム。

主人公のテッドは大企業の研究開発部門の中間管理職を勤めるシングルファーザー。倫理よりも利益を優先する会社の姿勢に疑問を抱きながらも、同僚に恋心を抱いたり、部下の管理に手を焼いたり、上司の理不尽な要求に耐えながら、無事に一日を過ごそうとするのでした…といった感じの内容。

ギャグは結構シュールで、俺が観たエピソードでは「黒人に対応しないモーションセンサー」なんてのが出て来てました。これに加え上司役を演じるのがポーシャ・デ・ロッシであることから「アレステッド・ディベロップメント」と比較する声もあるようだけど、主人公のテッドにどうも魅力がないのが欠点かな。オフィスを舞台にしたコメディとしてはNBCの2大巨頭「THE OFFICE」と「30 ROCK」に及ばないものの、決して悪い作品ではないみたいですよ。

最近の新シリーズの常としてシーズン途中に放送が休止され、打ち切りが危ぶまれたらしいが、無事シーズン2も放送されるらしいので今後の健闘に期待。

「恐怖のまわり道」鑑賞

こないだRotten Tomatoesのビデオキャストを観ていたらエロール・モリスが出て来て彼の好きな映画ベスト5を挙げておりまして、そのなかで「恐怖のまわり道」(Detour, 1945)なる低予算作品を史上最高のノワール映画だと讃えていたのが気になって、さっそくarchive.orgでダウンロードしてみたのであります。

物語の主人公はニューヨークのしがないピアノ弾きで、ハリウッドに行った恋人に会いたくなって西へヒッチハイク旅行をしていたところ、裕福そうな男性の車に乗ることに。そしたら何の因果かその男性が急死してしまい、仕方なしに主人公は彼の死体を隠して、彼の免許証を使って身分を偽り旅を続けることに。そして到着したカリフォルニアで1人の女性を乗せてあげるのだが、彼女は急死した男性のことをたまたま知っており、主人公が身分を偽っていることに対して恐喝をしてくるのだった…というのが大まかなプロット。

鬼女のごとく恐喝をしてくるアン・サヴェージの演技はなかなか迫力があるものの、まあ普通の作品かなあといった感じ。ストーリーの大部分が車中で進行していく点がイマイチなのかな。モリスに限らずアメリカでの評判は高い作品らしいけど、個人的にはさほど素晴らしい作品だとは思えなかった。

ちなみにモリスの最も好きな映画は、なんと原一男の「ゆきゆきて、神軍」なんだそうな!インタビューの対象が何を言い出すのか、まるで予想がつかない状況というのが彼にとっての憧れらしい。まあ確かに奥崎謙三が相手じゃ予想はつかんよな…。