「Fargo」シーズン3鑑賞


こないだ『レギオン』のシーズンが終わったばかりだが、早くもノア・ホーリーの名を世に知らしめたシリーズのシーズン3が始まったのだよ。

今回の舞台となるのは2010年のミネソタ。エミットとレイのスタッシー兄弟は兄のエミットが成功したビジネスマンであるのに対し、弟のレイは汚職に手を染めた保護観察官として貧乏暮らしをしていた。保護観察の相手として知り合ったニッキーと結婚したいレイはエミットに結婚指輪の代金を無心するものの、エミットにむげもなく断られる。頭にきたレイは元犯罪者のモーリスに、エミットが所有する高価な切手を盗むよう依頼するものの、エミットの家の住所を失念したモーリスは間違った家に押し入り、そこの住人である老人を殺してしまう。そしてその老人は、地元の女性警察署長の父親だった…というあらすじ。

なお冒頭ではいきなり1988年の東ドイツが出てきて、人違いで逮捕される男の話が語られるのだが、それが2010年のミネソタとどうやってつながっていくのやら?また一見裕福そうに見えるエミットも、怪しい連中から金を借りていたことが判明し、いろいろ複雑な展開になっていくみたい。

シーズン2はシーズン1のプリクエルという扱いだったが、今回のシーズンは過去のシーズンとどういうつながりがあるのかは明らかにされていない。シーズン1の4年後という時代設定の近さを考えるとシーズン1の登場人物がそのまま登場してくることも可能だろうが、はてさて。

シリーズの特徴である、ミスや悪運の連なりによって不遇な死を遂げる人が今回も出てきて、それが一連の物語の始まりとなるわけだが、過去のシーズンにくらべると比較的地味なスタートだったかな。もちろん今後の展開がどうなるかはまったくわかりませんが。

エミットとレイの兄弟はユアン・マクレガーが一人二役で演じている。双子ではなくて、メイクで別人になっている頑張りぶり。マクレガーってどの役でも同じようなイントネーションで話すことがよく知られてるが、今回はいちおうミネソタ訛りも入れてるのかな…?少なくともマーティン・フリーマンほどの訛りではありませんでした。レイのガールフレンドを演じるのがメアリー・エリザベス・ウィンステッドで、警察署長に『ゴーン・ガール』のキャリー・クーン。あとはデビッド・シューリスやマイケル・スタールバーグなど、相変わらず豪華なキャストが脇を固めています。

シーズンが始まったばかりなので話の展開の憶測などはとてもできないけど、過去のシーズンのクオリティを保てるのであれば大変面白いものになるはずなので、ここは黙ってワイルドな話の展開を楽しみましょう。

「PATTERSON」鑑賞


ジム・ジャームッシュの新作。日本では「パターソン」の邦題で8月公開かな?

舞台となるのはニュージャージーのパターソンという街。主人公のパターソン(街の名前と同じだね、というツッコミが劇中でも入る)はバスの運転手をして暮らしており、毎朝早く起きてバスを運転し、夕食には妻と愛犬の待つ自宅へ帰る、という生活を繰り返していた。そんな彼の隠れた情熱は詩を書くことで、同じくパターソンに住んでいた詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズに憧れながら、自分が目にして経験する物事について詩をノートに綴っていくのだった…というあらすじ。

ジャームッシュの前作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」はファンタジーというかサスペンス性が強い内容だったが、こちらは一転して日常系の物語。パターソンの月曜から日曜までの1週間を切り出し、彼の淡々とした生活を描いている。事件というかトラブルも発生するものの、あまり影響が出ずにそのまま人生が続いていく感じ。あとは乗客の会話に耳を傾ける運転手、という点では「ナイト・オンザ・プラネット」に通じるものがあるかな。

主人公のパターソンは暇さえあれば詩を綴っている人物だが、アーティスト気取りのようなところは一切なく、詩人かと聞かれても否定するほど。むしろケーキ作りやインテリアやギターに興味が移りまくる彼の妻のローラのほうが、いわゆる意識の高い人にように振舞っているかな。

パターソンを演じるのはアダム・ドライバー。やはり「スター・ウォーズ」なんかよりもこういう一般人の役のほうが似合うよね。彼が書く詩はジャームッシュの好きな詩人が提供したものらしいが、撮影にあたってちゃんとバスの運転手の資格を取得したというのは流石だなと。あとは「ミステリー・トレイン」にも出演してた永瀬正敏がちょっと登場してます。

内容が内容だけにナレーション形式で詩がたくさん詠まれていて、これ日本語に訳すの大変そうだなと思っていたら「詩を訳すのは雨具を着てシャワーを浴びるようなものです」という身も蓋もないセリフが出てきておりました。まあそれでも訳さないといけないわけですが。

あまりにも淡々としすぎていて、アメリカで非常に高い評価を得ているのがちょっとよく分からないのだけど、ごく普通の人々が持つアート心への賛歌、という点が受けてるのでしょう。悪くはない作品。

「ドクター・フー」シリーズ10開始


昨年はクリスマス特番とスピンオフの「CLASS」だけだったので1年半ぶりの新シリーズ。ピーター・カパルディが今シリーズで降板することが発表されてるほか、スティーブン・モファットもショウランナーを交代するので1つの大きな区切りのシリーズになるのかな。

前シリーズでクララたんがコンパニオンを離れたので、今回からはパール・マッキー演じるビル・ポッツという少女が新たなコンパニオンになる。まああまり器量好しなタイプでもないので、コメディエンヌ的な要素が強くなるのかな?コンパニオンとしては初のゲイのキャラクターであることが一部で話題になってたが、ラッセル・T・デイビス時代のほうがもっとゲイゲイしてたし、マット・ルーカス演じるロボットのナードールも引き続き登場してるので、そこらへんはあまり大したことではないです。彼女が好意を抱く「目の中に星を持つ少女」が今後の展開にも絡んでくるのかな?

一方でカパルディ演じるドクターはビルが働く大学で長年教えている教授、という役回りになっている。コスチュームが若干新しくなっていてフードつきのコートを着ているほか、髪が少し長くなったので初代もしくは3代目ドクターを彷彿とさせるな。大学の地下にある謎の扉を長年開こうと努力していることが示唆されており、これも今後のプロットに関係してくるのでしょう。

第1話はいわゆる「新しいコンパニオンがドクターに出会う話」であってあまり目新しさはないものの、「シャーロック」ではファックユーな展開を繰り広げていたモファットってやはり「ドクター・フー」が似合うと思うので、大きなフィナーレに向かって盛り上がっていくシリーズになることを望みましょう。初っ端からダーレクが登場してたけど、もう出さなくてもいいからね!ミッシーやオリジナルデザインのサイバーメン、さらにはジョン・シム演じるザ・マスターといったキャラクターが復活することが報じられているほか、噂では年末を待たずにドクターが新しい役者へとリジェネレートするという話もあるようで、いろいろ期待せずにはいられないではないですか。

「T2 トレインスポッティング」鑑賞


前作は劇場で2回観て、原作もクッソ読みづらい原書で読んだし(「ポルノ」は読んでない)、舞台版も見に行った。それくらい思い入れのある映画であったので、果たしてこの続編が期待に応えることができるかについてはそれなりの不安を抱いていたわけですね。海外での評判もいまいちだったようだし。

んで結論から言いますと、十分に楽しめる良作であった。もちろん前作ほどのキレというか疾走感は無いよ。あちらはボンクラがカタギの生活をしようと努力するエネルギーに満ちていたのに対し、こちらは中年にさしかかって人生の壁にぶつかった男たちが右往左往する話なのだから。でもそれが自分のような主役たちと同い年の者にとっては非常に親身に感じられるわけですね。公開週なのに劇場ガラガラだったけど、これもっと若い人が観たらどう感じるだろう。

20年の時を経て、登場人物も役者たちもみんな年をとっている。ユアン・マクレガーこそ未だに童顔であるものの、他の人物たちは髪が薄くなったり、丸っこい体型になっていた。30代でホグワーツの女学生を演じていたシャーリー・ヘンダーソンも(前作に出てないけど)さすがに老けてきている。そして彼らは結婚したり子供をつくったりしている一方で真っ当な大人になれず、家族への責任も抱けないわけだが、ベグビーに妻子がいる設定はちょっとズルいと思いましたよ。

そんな彼らが金儲けの話よりも夢中になれるのが「昔話」であり、過去の写真や逸話を壁に貼りながら、以前の武勇伝を語り合うときだけ、彼らの目は輝いている。(ここの部分はちょっと感情移入できなかったかな。自分が子供だったときの写真とか見て楽しいか?)

そして彼らは結局のところ怪しい金儲けに手を出すわけだが、スコットランドの経済状況や政治状況をうまく反映させてるのが面白かったな。親英派の集会とか。そして彼らを待ち受ける、ほろい苦い終わり方もまた良かった。

ダニー・ボイルの映像と音楽は相変わらず美しくて無駄がない。いつも彼の映画を通して(自分にとって)新しいミュージシャンを知るのですが(「トランス」のエミリー・サンデーとか)、今回はウルフ・アリスとかヤング・ファーザーズなどがめっけものでした。前作の映像と音楽も効果的に組み込まれてましたね。

一人くらいはカタギになってオフィスで働いているものの、安い給料で暮らしがしんどく、老いた親の介護でろくに結婚もできないような設定になっててもいいんじゃないの、とも思ったけどそれって日本的な発想なんだろうか。何にせよここ20年が何もなかったような設定の続編が多いなかで(インデペンデンス・デイとかX-ファイルとか)、時が経ったことを直視し、登場人物のその後をきっちり描いたことで、意義のある「続編映画」になっていたところに、この映画の大きな価値があるのでしょう。

リック・ウェイクマンの受賞スピーチ


「ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)」の受賞式典が昨夜ニューヨークで開催されたそうな。今回の受賞者はELOやイエスやジャーニーなど。ロックの殿堂って大衆受けする連中しか選出されないし、年寄りの同窓会という印象が強くてそれってロックじゃないよね、と個人的には思うのです。ましてやイエスみたいなプログレっておれあまり聴かないし、特にキーボードのリック・ウェイクマンってふんぞり返った大御所みたいなイメージがあって好きではなかったのですが、彼の受賞スピーチがなぜか下ネタ満載のスタンダップコメディのごとき内容になっていて大変面白かったので、例によって英語の勉強として訳してみる。原文はこちら

このマイクもっと上にあがる?俺の人生そのまんまだな(笑い)。まあいいや。この受賞式に来ることができて幸せな理由は2つあります。1つはイエスのメンバーとしてロックの殿堂に入れてもらったことですね。もう1つは、言うべきではないかもしれませんが、この建物から半マイルもいかない場所で、私は意義のある性経験を初めてしたということです(笑い)。いやいや、そんなに良くなかったかな。

スティーブ・ハウが妻に感謝の言葉を述べたように、私も自分の妻に感謝します。残念ながら彼女はこの場にいません。今朝彼女のもとを離れたとき、彼女は昏睡状態でした。セックスはいつも通りでしたが洗濯物がたまってましたね。

イエスのメンバーに加えて、私は自分に大きな影響を与えてくれた父親に感謝します。彼も芸能界で働いてましてね。うちの家族はとても貧しかったんですが、彼はエルビスの物真似をやってました。1947年にはまったく需要がなかったのですが(笑い)。彼は多くのことを教えてくれました。私を座らせて、「いいか、安くて汚いストリップ小屋なんかに行くなよ。目にしたくもないものを見ることになるぞ」と教えてくれたので、もちろん私はストリップ小屋に行きました。そしたら親父がいるのを目にしたのです(笑い)。

イエスを招いてくれて、ロックの殿堂には大変感謝しています。実のところ(今日スピーチをする)3番目のバンドとなったのは幸運でした。年をとると前立腺が肥大してトイレが近くなってね。真面目な話、前立腺の検査がいかに重要かをお伝えしたいです。私も月曜日にやったばかりでね、女性たちは知らないでしょうがしんどいものですよ。胎児の姿勢になってね、ゴムの手袋をつける音がして、ホリネズミが体内を駆け上ってる感じがします。検査中に医者が言うんですよ。「恥ずかしがらなくていいですよウェイクマンさん、この状況で勃起するのは普通ですから」って。「でも先生、私は勃起してないですよ」と言ったら「知ってます。私がしてるんです」だって。

どうもありがとう!

んー日本語に訳すとパンチ力が弱まるかな。映像はこちら。後ろに誰かの娘らしい少女がいるんだがこんな下ネタ聞かせていいのか?