「THE NEXT DOCTOR」鑑賞

もはや年末の恒例行事となった感のある「ドクター・フー」のクリスマス・スペシャル最新作。舞台となるのは1851年のクリスマスのロンドン。そこに1人でぶらりとやって来たドクターは、サイバーメンの一味、および自らを「ドクター」と名乗る謎の男性に出会う。果たして彼はドクターが再生した後の「次のドクター」なのか…?というのが主なプロット。

今回は珍しく女性コンパニオンが同行せず、デビッド・モリッシー演じる「次のドクター」がその代役となってるわけだが、彼が本当に次のドクターなのかどうかは最初のほうで何となく分かっちゃうこともあり(だってカッコ悪いキャラなんですもの)、いつものようなコンパニオンとの軽妙なやりとりは無し。ドクター1人で話を支えるのは難しいんだなあと再認識した次第です。でも悪役として「Ballykissangel」のデヴラ・カーワンが出てたのが個人的には嬉しいかも。

全体のストーリーはこの「次のドクターは何者か?」というプロット以外は比較的凡庸で、せっかくサイバーメンが出ているのに勿体ないなあと思ってたんだけど、最後のサイバー・キングの登場には笑えた!突然B級怪獣映画のノリになってしまうけど、まあクリスマスだしいいんじゃないですか。

2009年はあと4本くらいこうしたスペシャル番組が作られるんだっけ?とりあえず今回のものよりも優れたものになることに期待したいところです。

「Wallace and Gromit in ‘A Matter of Loaf and Death’ 」鑑賞

「ウォレスとグルミット」の30分ものとしては13年ぶりの新作。こういう番組を国営放送が流してくれるイギリスって羨ましいよなあ。

今回のウォレスとグルミットは自宅でパン屋を営んでおりまして、相変わらず怪しい発明品だらけのパン屋なのですが、それなりに繁盛しているようなのでした。そんなある日、彼らはパイエラという女性を自転車事故から救い出す。彼女は若かりし頃にパンのCMに出ていた女性で、ウォレスにとって憧れの存在なのでした。そのままいい仲に発展していくウォレスとパイエラ。しかし巷ではパン屋が次々と殺されていくという事件が起きており、グルミットはそれらの事件にパイエラが絡んでいることに気づくのですが…といった内容の作品。パイエラの飼い犬としてフラッフルズというメスのプードルも出てくるぞ。

粘土アニメーションの出来は相変わらず素晴らしいし、細かいジョークも満載で「エイリアン2」のパロディもやってくれるなど十分に楽しめる作品になっている。しかし単なる殴り合いや暴力的描写が多いなど、今までの作品に比べるとちょっとウィットに欠けたものになっているかな。最後の爆弾の処理方法だってもっと面白く出来たと思うんだが。ここらへんは製作期間が短かったことが影響しているのかも。それでも大変に楽しめる作品であることには変わりないので、今後も2年に1度くらいはこうして新作を発表していって欲しいところです。

「THE WIRE」シーズン1鑑賞

最近は暇さえあれば観ている。評判通りの素晴らしい出来。話の進展が遅いという批判も分からなくはないが、無駄なシーンが一切ないので重厚な小説を読んでいる気分になって何エピソードでも続けて鑑賞できる感じ。

あらゆる演出やストーリーが良い意味で徹底的に抑えられた作りになっており、派手さはない代わりに観ていて飽きることもまるでなし。また単なる勧善懲悪のドラマには全然なってなくて、警察側は官僚主義と汚職によって主人公たちの捜査を妨害してばっかりだし、ギャング側も自分たちの組織を守るためにめまぐるしい努力を続けていたりと、善と悪の境界線がひたすらグレーなのも特徴的かな。なかでも一番グレーなキャラであるオマーに人気が集まったのも納得できる。俺のお気に入りは麻薬組織ナンバー2のストリンガー・ベルですが。

この派手な展開が無いとか勧善懲悪でないという作りは、下手すればものすごくつまらない作品になった可能性もあるんだけど、このシリーズはそこらへんのバランスのとりかたが非常に見事なんですよ。こういう作品は視聴率重視の地上波ネットワークからはまず出てこないでしょうね。

ちなみにこないだDVDセットを135ドルで購入して格安だと思ってたら、何と今では90ドルで販売されている。いずれ値下がりするとは思ってたけど、こんなに早くなるとは。何か損した気分。

フランク・ミラーの次の監督作

コミック・ファンのあいだでは定説となりつつある話として、「フランク・ミラーはここ10年のあいだ、徐々にしかし確実に正気を失いつつある」というのがありまして、これは例えば「シン・シティ」の「THE HARD GOODBYE」と「TO HELL AND BACK」、もしくは「ダークナイト・リターンズ」と「DK2」を読み比べてみたり、「ALL-STAR BATMAN AND ROBIN」を一瞥してみれば明らかなことなんだけれども、ここしばらくの作品はみんな話が大味になっていて、登場人物に深みが無いものになってるんだよね。911テロに精神的打撃を受けたことは本人も認めてるし、カラーリストのリン・ヴァーリィとも離婚したりして、まあいろいろあったのかもしれないけれど、昔はもっと業界で絶大なリスペクトを受ける作家だったんだがなあ。

でもその一方で「シン・シティ」と「300」という自身が原作者の映画がヒットしてしまったため、最近は映画業界の人になってしまった感があるのですが、その監督第一作である「THE SPIRIT」は公開前からボロクソに叩かれているらしい。これでもう映画監督としてのキャリアは無くなったかな、と思いきや次は「バック・ロジャース」の劇場版を監督するという話が伝わって来た。なぜ今になってバック・ロジャースなのか?ミラーのスタイルとは180度違う、明るくて未来的なコミックなのに…?「ミラー流の暗い話になる予定だ」なんて書かれてるけど、誰もバック・ロジャースにそんなもの期待してないぞ!とりあえずゴミ映画を作るのであれば、他人のコミックではなく自分の作品を映画化しましょうね。

ちなみに俺は70年代の「バック・ロジャース」のTVシリーズのオープニングが死ぬほど好きなのです:

こちらは「サウス・パーク」の良く出来たパロディ:

メイジェル・バレット死去

新作劇場版「スター・トレック」のコンピュータの声も彼女が担当したと聞いて喜んでいたばかりなのに。

決して有名な女優さんではないが、元祖スター・トレックのチャペル看護婦として(そういや未公開パイロットの副船長「ナンバー・ワン」も彼女だ)、新スター・トレックのラクサナ・トロイとして、全STシリーズのコンピュータの声として、そして何よりもシリーズの生みの親ジーン・ロッデンベリーの妻として、我々スター・トレック・ファンにとっては母親のような存在だったわけです。2人の結婚式を明治神宮でやったというのも日本のファンには愛着の沸くところだったな。各エピソードのエンドクレジットに「コンピュータの声:メイジェル・バレット」と出てくるのを見るたびに、ジーンの亡きあともSTを見守ってくれている気がしていて安心感があったものです。

また1人TOSの役者が亡くなってしまって寂しい。合掌。