「Rally to Restore Sanity and/or Fear」鑑賞


「デイリーショー」のジョン・スチュワートが主催した、ワシントンDCにおける大規模な集会をコメディ・セントラルのウェブから生中継で観た。当初はスティーブン・コルベアーがこれに続いて「March to Keep Fear Alive」というイベントを開催するなんて話があったんだけど、結局のところ両者による合同イベントという形になったみたい。

スチュワートの常として、これが政治的なイベントであるという明言は避け、右と左に両極化しつつあるアメリカの世論に対して、まだまだ多数いる穏健派の人たちによる「正気の回復」を呼びかけるための集会だということなんだが、まあフォックス・ニュースやティー・パーティー運動による大衆の右傾化を明らかに意識したものであり、この集会自体も先日フォックス・ニュースのグレン・ベックがワシントンで開催した保守派の集会に対抗するものなんだよな。最終的な参加者の数は不明だけど、一説には15万人から20万人ということで、グレン・ベックの集会の2倍は集まった大規模なものになったようだ。

イベント自体は内容や参加者が事前に公表されず、冒頭はウォーミング・アップとしてザ・ルーツとジョン・レジェンドのライブが長らく続いたのでグダグダなものになるんじゃないかと心配したけど、続いて「怪しい伝説」の2人がさらなるウォーミング・アップをしたあとにスチュワートとコルベアーが出てきてからは笑いあり歌ありのショーがテンポ良く続いて見応えのある3時間だった。他に出演したゲストはオジー・オズボーンやユーサフ(キャット・スティーブンス)、シェリル・クロウ、キッド・ロック、トニー・ベネットなど多数。お笑いのほうでは「このイベントにスタッフの参加を禁じたニューヨーク・タイムズみたいなメディアよりもずっと度胸のある、7歳の女の子にメダルを贈呈します!」なんてのをコルベアーがやってたのが面白かったな。

そして最後はスチュワートによる感動的なスピーチで締め。メディアによる世論の煽りを批判しつつアメリカの多様性を讃える内容のもので、「メディアは様々なことを大げさにとりあげて恐怖を煽るけど、すべてを増大したら我々は何も聞こえなくなってしまう」とか「アメリカは混雑した高速道路みたいなもので、いろんな人種や職業のドライバーがいます。たまに道を遮る乱暴なやつもいるけど、みんなが仲良く道を譲り合うことで成り立ってるんですよ」なんて語っているのが素晴らしかった。

先週「デイリーショー」にオバマが出演したことも合わせ、このイベントについてアメリカのメディアは大きく取り上げていたんだが、意外と批判的な論調のものが多く、要するに体制を風刺する側だったスチュワートがこのような政治的な集会を主催するのは『一線を越えている』と見なされたらしい。でもあんたらメディアが煽り記事ばかり書いていて物事をきちんと報道しないから、仕方なしにスチュワートが行動したんだろうがよぉ。しかし胸を張って堂々とスピーチをするスチュワートの姿はコメディアンというよりも政治家のように見えたのも事実で、今までのような「俺はケーブル局のコメディアンだから、威厳なんて何もないよ」というスタンスはもうとれないだろうなあ。ここ10年のあいだにスチュワートの影響力は非常に大きくなってこのイベントで1つの頂点を迎えたわけですが、こうした勢いがいつまでも続くわけでもなく、彼が今後どうなっていくのかについては一抹の不安を感じなくもないのです。

「Night of Too Many Stars」第3弾鑑賞

前回から2年半ぶりに開催された、コメディ・セントラルによる人気コメディアン総動員の自閉症児へのチャリティ・イベント。司会は今回もジョン・スチュワートで、出演者はスティーブン・コルベアやスティーブ・カレル、ルイス・ブラック、オリビア・マンといった「デイリーショー」関係者のほか、アダム・サンドラーやリッキー・ジャヴェイス、ティナ・フェイ、クリス・ロック、サラ・シルバーマンなどといった連中が再び登場。今回初めて出演した人たちとしてはデビッド・レターマンやトレイシー・モーガン、ジョエル・マクヘイルなどなど。

また前回まではニューヨークでのショーを(生放送で?)放送したものだったのに対し、今回はロサンゼルスで生放送をして寄付の電話を受け付けながら、ニューヨークでのショーを録画した映像を流すというスタイルになっていた。よってハリウッドの俳優なんかも多数ゲスト出演していて、トム・ハンクスやジョージ・クルーニー、ブライアン・クランストン、エイミー・ライアンといったスターたちが電話の応対をしていた。チャリティ電話の仕組みってよく分からないけど、寄付をすれば普通にああいった有名人たちと電話で話せるものなのかね?

会場がニューヨークとロサンゼルスに別れたために、今まであったようなライブっぽい雰囲気は薄まったけど、ニューヨークのショーは面白かったですよ。今回は比較的スタンダップが多くて、リッキー・ジャヴェイスやルイス・ブラックなどがなかなかキワどいネタを披露していた。スタンダップ以外では、クリス・ロックが元恋人を罵倒する権利のオークションというのが非常に面白かった。あとロビン・ウィリアムスが自分の映画の出演権をオークションにかけるというのも面白かったな。前にも書いたがウィリアムスって即興でジョークを飛ばす才能は本当に優れていると思っていて、なぜ映画に出るとああもツマらなくなってしまうのかは分かりません。

2時間のコメディ番組ということもあり中には不発に終わるネタもあって、相変わらずジミー・ファロンはまったく笑えなかったりするのですが、みんな良きチャリティのために出演してるせいか全体的にホノボノとした感じがあり、大変面白い番組でありましたよ。
サラ・シルバーマンいいよなあ。

「NO ORDINARY FAMILY」鑑賞


こないだ始まったABCのドラマ。

ここ最近のハリウッドではスーパーヒーローもののトレンドが一段落した感じがあって、相変わらずアメコミ原作の大作映画が作られている一方で、『普通の人が超能力を身につける』というプロットの映画がいろいろ企画されてるらしい。こんど日本でも公開される「キックアス」もその1つになるのかな。

この「NO ORDINARY FAMILY」もそんな内容のドラマで、ティーンの娘と息子を抱えた夫婦が、家族そろって南米に旅行へ行ったところ、飛行機が墜落してジャングルの川に4人は放り出されてしまう。その結果4人はそれぞれが特殊な能力を持つようになり、父親は強靭な肉体を誇り、母親は猛スピードで走れるようになる。そして娘は読心術を身につけ、息子は難解な計算も瞬時に解く能力を持つようになった。彼らはこれらの能力を犯罪撲滅などに役立てながらも、ごく普通の一家として暮らそうとするのだが…というようなプロット。

まあ一言でいえば「実写版Mr.インクレディブル」といった感じだけど、当然ながらあの映画ほどの面白さはなし。一家のほかにも超能力をもった人物がいることも示唆されて、ちょっとサスペンスっぽい話にもなってるんだけど、ファミリードラマをやりたいのかコメディをやりたいのかサスペンスをやりたいのか、どうも煮え切らない感じがすることは否めない。

主人公の父親を演じるマイケル・チキリスは「ザ・シールド」の主演で知られる人だが、こういうコメディ・タッチの作品てあまり向いてないんじゃないかな。本国でも大して評判は良くないようだし、すぐに打ち切られないとしてもあまり長続きはしないんじゃないでしょうかね。

「TOWER PREP」鑑賞


放送前からアメリカのオタクどものあいだでは結構話題になっていた、カートゥーン・ネットワークの実写ドラマ。

なぜ話題になったかというと、この番組のクリエーターがポール・ディニなんですね。ディニといえばアニメシリーズのライターとして「Batman: The Animated Series」などで多くのファンを魅了したほか、アメコミのライターとしても名作「The Batman Adventures: Mad Love」などを手がけ、優れた作品を次々と世に送り出しているライター/プロデューサーなのですよ。(カミさんが20歳以上も若い女マジシャンだというのも、オタクの憧れではあるな)そのポール・ディニが「Xファイル」のライターたちと組んで作ったのがこの「TOWER PREP」というわけだ。

主人公のイアンはアメリカの田舎町に住む高校生だったが、ある日奇妙なノイズを耳にして気を失ってしまい、目が覚めると謎の全寮制高校「タワー・プレップ」に連れてこられていた。そこは皆が同じ制服を着て、名もなき教師たちから高度な授業を受けさせられる学校だった。なぜ自分がそこにいるのか分からず、何の説明もされないイアンはさっそく脱出を試みるが、周囲の森を徘徊する謎の鉄仮面の集団に行く手を阻まれてしまう。しかし彼は自分のほかにもタワー・プレップからの脱出を試みている3人の男女と出会い、彼ら4人が特殊な能力の持ち主であることを知る。そしてイアンたちはその能力を駆使して、いつの日かタワー・プレップから脱出することを誓うのだった…というのが大まかな設定。

主人公が謎めいた場所に連れてこられる、という内容から当然ながら「プリズナー」と比較されてるわけだが、基本的には子供向けの番組なのであそこまでのスタイリッシュさはなし。でもAMCのリメイク版「プリズナー」よりは面白いよ。予算のなさが感じられるという点では今夏の「PERSONS UNKNOWN」に通じるところがあるかも。でも夜にうごめく鉄仮面の集団の映像なんかはよく撮れていたぞ。

それと主人公たち4人が持っている特殊能力がなかなかユニークで、1人はあらゆる声帯模写ができ、1人は顔の表情からその人の思考を読み取ることができ、もう1人は会話によってあらゆる人を説得でき、そして主人公はすべての動きを数秒前に感知できる(よって攻撃をかわすのが上手)というもの。これらの一風変わった能力を使ってタワー・プレップの謎を解き明かしていくのが本作の醍醐味らしい。

第1話を観た限りではあまり話が先に進まず、これから面白くなってくのかどうか判断つきかねるものだったが、AintItCoolのハリー・ノウルズなんかは既にシーズン1全話を観たらしくて、「このシリーズは最高だぜ!」なんて書いてたけど、彼はよく煽り記事を書くからなあ。どこまで信用していいのやら。でもやはりポール・ディニの作品ですからね。今後はもっと面白くなっていくんじゃないでしょうか。

「Detroit 1-8-7」鑑賞


ABCの新作刑事ドラマ。犯罪の街デトロイトを舞台に、昼夜問わず犯罪者たちを追う刑事たちの姿をとらえたリアルなドラマという設定のはずなのだが、パイロットはアトランタで撮影したというのがお茶目である。

登場人物は一匹狼の刑事を主人公に、ヘマばっかりやってるルーキーや主人公と恋仲になりそうな女刑事、タフな女ボスに加え、定年退職の1日前に殉死しそうな おやっさん刑事など、刑事ドラマのお約束的な役割のメンツが揃っているわけですが、主人公を演じるのが「ソプラノズ」のマイケル・インペリオリだということもあり、彼の魅力も手伝ってあまり古くさい設定だとは感じなかったかな。インペリオリは「ライフ・オン・マーズ」の失敗したリメイクに出演した時は似合わぬヒゲ面で「何これ?」って感じだったけど、この番組では一匹狼の刑事の役がよく似合っている。

もともとはモキュメンタリーぽくなるはずで、それが製作途中で方向転換したらしく、悪態をつく犯罪者の口にモザイクがかけられるなどといった演出がまだ残ってたりする。また各エピソードで2つの犯罪が捜査されるという仕組みになってるようだけど、番組をそうやってフォーミュラ化するのはどうなんだろうね。

まあでもマイケル・インペリオリは好きな役者だし、ストレートな刑事ドラマとしては悪くないですよ。ABCの刑事ドラマということで「NYPDブルー」と本国では比較されているみたい。あちらでファンシー署長を演じた役者も出ているし。ただし視聴率はぱっとしないようなので、「NYPDブルー」ほどの長寿番組にはならないだろうな。