ネタバレしないように感想をざっと:
・ディカプリオが(やっと)アカデミー賞を受賞したことで知られる作品だが、演技自体は前作の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のほうが遥かに上であって、あれがコメディだったから受賞できなかったのを、残念賞的な意味合いをこめて本作で賞を与えられたのだと個人的に思ってるのですがどうでしょう。
・しかし「ウルフ」で鍛えた技術が本作で如実に生かされているところが1つあって、それは「這うこと」!前作では麻薬でラリって腰が抜けたまま這いつくばって車に乗り込むという会心の演技を見せつけたディカプリオですが、今回はさらに雪原や森のなかをひたすら這う!這う!ほふく前進をやらせたらいま一番の役者ではないかと、スクリーンを見ながら考えてしまったよ。次は軍隊ものか難病ものでまた大地を這ってほしいところです。
・でも役どころとしてはやはり悪役の得というか、トム・ハーディのほうが凄みがあって良かったと思う。本国ではブツクサ言っていて何を言ってるのか分からないという批評も受けた演技だが、幸いなことに日本では字幕があるのでセリフの内容も理解でsきたし。あとはウィル・ポールターもいい役者になったなあと。
・実話に基づいたせいか、ストーリー自体は比較的凡庸だったものの、大自然の壮大な光景と巧みなカメラワークがそれを補って見る人を飽きさせない作りになっていた。最近VRアプリの映像を見る機会が多いのだけど、ワンカットで周囲でいろんなことが起きているなか、視点があちこちに移っていくカメラワークはVRのそれに近いものを感じました。今後はエマニュエル・ルベツキのカメラワークを参考にしたVR映画が増えてくるのではないかと。
・ネイティブ・アメリカンにいろいろ配慮したストーリーになっていって、やはり今後のハリウッド映画ってそういう流れになっていくのかなと。主人公にネイティブ・アメリカンの妻と息子がいたというのも完全な脚色らしいし。まあアダム・サンドラーみたいに差別的な作品を作るよりはマシでしょうが。なおフランス人はいつまでたっても悪者ですね。
・音楽も効果的に使われているが、作曲者が3人?いるみたいなのでどこらへんに坂本龍一が貢献してるのかはわからず。
・本国では「ディカプリオは熊にレイプされた」という噂が出回ってましたが、確かにそう思いたくもなる腰使いであった。まあメスの熊でしょうけどね、あれ。
・「バードマン」に比べると監督の暴走というよりも技巧が際立った作品ではあるが、悪くはないですよ。いろいろ血まみれにはなるので万人向けではないだろうけど。