公開中なので感想をざっと。以下はネタバレ注意。
・冒頭の戴冠式とかを目にして思ったのは、なんかマーベル的というかディズニー的な作品だなということ。歌と踊りがあってカラフルなあたり、「ライオン・キング」や実写版「ジャングル・ブック」で培ったノウハウを活かしているというか。それ自身は悪くないことだけど、ディズニーとマーベルの融合はこういう形で進んでいくのかな、と思いました。
・話のプロット自体は典型的なものではあるものの、キャストに勢いがあっていいですね。特に(比較的無名な)女性キャストたちが生き生きと演技してるので観ていて楽しかった。「シビル・ウォー」ではMCUで何やってんだか良く分からなかったマーティン・フリーマンもいい感じだし。
・でも尺はもうちょっと削ってもよかったかも。ハーブを飲んで祖先に会うシーンが3回繰り返されたのはさすがに冗長だと感じましたよ。そんなに複雑なプロットではないのに、説明過多になっているシーンが多いというか。
・話の展開は「ライオン・キング」に似ているんだけど、現在のアメリカのアナロジーとしても通じるんじゃないかと、ふと思いました。王となる権利はいちおう多くの人に与えられていて、それでも王になるのにふさわしい人が選ばれていたのだけど、そしたらチーズバーガー食ってるようなゴロツキが突然現れて、制度を悪用して王様になってしまいました、というあたり。それでその王様は当然ヒドい命令を臣民に与えるわけだが、王様だからって言うことを聞けばいいのか?いやそうじゃなくて反抗して王を倒すべきだろ!という内容は、どこまでトランプ政権を意識したんだろう?たぶんあまり関係はないと思うが、そんなことを考えながら観てました。
・肉弾戦の多い戦闘シーンは迫力があるものの、黒づくめのキャラクターが暗闇のなかで戦うのはなんか見づらかった。ライアン・クーグラーは前作の「クリード」のほうがアクションはずっと優れていたな。
・そしてこれはスーパーヒーロー映画の大きな課題であるのだが、コミックと違って実写映画では、感情的なセリフを話すときはマスクでなく役者の素顔が見えないと効果的でないという問題。このためマスクの下の顔を映したり(「アイアンマン」)、主人公のマスクが吹っ飛んだり(ライミ番「スパイダーマン」)する工夫が必要となるわけですが、今回は幸か不幸かスーツのマスクが自在に付いたり外れたりするものだから、「マスク外す→セリフを話す→マスクつける→マスク外す→セリフを話す」という光景がクライマックスで続くので妙に気になってしまったよ。マスクをつけたままセリフを話したって、バチはあたらないと思うけどね。
・「アベンジャーズ2」に続いて、今回も大規模な韓国ロケが行われている。これによって韓国の映画業界がどれだけのメリットを得たか、みたいな数字は出ているのかな。「アベ2」のときは韓国での撮影はすべて第2班が行ったという話を読んだのだが、世界各地でロケをするほど監督の実質的なアプローチが減っていくことになるんだろうか。
・ベジタリアンの種族の漁師って、何を捕ってるんだ?ワカメ?
・作品の出来としては決して革新的なものではないだろうが、やはり黒人が大半のキャストでスーパーヒーロー映画を作り上げるということが、どれだけ待ち望まれていたかは、非常に好調な興行成績を見ればわかるだろう。最近のコミック映画やTVシリーズにおける、原作では白人のキャラを有色人種に差し替えるトレンドって必ずしも関心しないのですが(それはコミックが長らく白人ばかりを登場させていたツケなのだが)、ブラックパンサーは正真正銘の黒人ヒーローだからね。昨年の「ワンダーウーマン」に続き、マイノリティを主役にしたスーパーヒーロー映画が予算をかけて作られ、幅広い観客層に迎え入れられたということは非常に素晴らしいことだと思うのです。