イギリスからの低予算SF。あらすじはネタバレ注意。
舞台は近未来の山梨県(いやホントに)。科学者のジョージは人里離れた研究施設でAIの開発に打ち込んでおり、交通事故で亡くなった妻の性格を模したAIを搭載したアンドロイドの開発に没入していた。彼は最初は5歳児ほどの知能を備えたもの、それからティーン並の知能を備えたアンドロイドを製作し、ついにはほぼ完璧な3号機を完成させようとしていた。しかしジョージの真の目的はAIの独自開発ではなく、亡き妻の性格がそのまま保存されている(そういうことをするサービスがあるらしいの)アーカイブを、その有効期限が切れる前にアンドロイドにコピーすることだった…というあらすじ。
いま流行のAIものと言ってしまえばそれまでなのだけど、AIを搭載したアンドロイドが3体あるのが特徴的で、彼女(?)たちはロボット3原則なぞ知らね、と人間的に振舞う。特にティーンの知性を持った2号機は自分よりも優れた3号機に対して複雑な感情を抱いており、実は彼女がいちばん感情移入できるキャラクターだったりする。
ジョージが暮らすのは山梨県にある研究施設という設定だが、郊外の撮影はハンガリーでやったらしくて舞台を日本にした意味はあまりなし。でも雪の積もった森林とか、流れる滝の風景とかは非常に美しいですよ。いちおうジョージが街に出かけるシーンもあり、天下一品とかびっくりドンキーのロゴが連なる雑居ビルのバーでゲイシャ風のサイバーガールが対応してくれて…という80年代サイバーパンク風まんまのスタイル。近未来なのにレトロというか、日本がテクノロジーの最先端を走っていたころはこんな未来が予測されてたんだよ…と変に懐かしくなってしまった。
山奥の施設でアンドロイドと暮らす男の話、という点では「エクス・マキナ」に通じるものがあるかな。外国語を多用した施設のデザインやコンピューターのUIは「月に囚われた男」によく似てるな、と思ったら監督のギャビン・ロザリーってあの映画のコンセプトデザインやってた人なのか。だから似ていて当然。ジョージ役は「ダイバージェント」のセオ・ジェームズ、亡き妻役に「ハイ・ライズ」のステイシー・マーティン、ってあまりよく知らないけどいい演技してました。あとこないだの「FIRST COW」に続いてトビー・ジョーンズがちょい役で出演。
ここ最近は低予算SF映画を観てると「映画にしなくても『ブラック・ミラー』の1エピソードで良かったのでは?」とかつい考えてしまうのでして、この映画も最後のオチに対する伏線がちょっと弱いし中盤がたるむのであと20分くらい削っても良かったかな。でもコンセプト・デザイナーの監督だけあってセットのデザインとかは凝っているし、3号機完成のシーンなどは非常に見応えのあるものになっておりました。悪くはない作品。