「DEAD PIGS」鑑賞

中国語名は「海上浮城」で、「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey」を監督したキャシー・ヤンの2018年のデビュー作。

2時間にわたる群像劇になっていて、話の中心になるのは投資に失敗して借金取りに追われている豚農家と、その姉(妹?)で美容院を経営しており、自宅が高級マンションの建設予定地域にあっても唯一立ち退かず、建設会社の地上げ攻勢を受けている女性。彼らの住む地域から少し離れた上海では豚農家の息子がバーの従業員を務めており、そこに通う金持ちの娘に彼は恋慕している。そして豚農家が飼育している豚たちが謎の原因で次々と死んでしまったことから、処分に困った彼は豚の死骸を上海の上流にある川に投げ捨てるのだが…というあらすじ。

上海を流れる黄浦江に豚の死骸が不法投棄された、2013年の事件をモチーフにしているが、社会派作品というよりもコメディっぽく現代の中国を風刺した内容になっている。地上げ問題をはじめ、都市と田舎の貧富の差とか、文化の西洋化などがテーマかな。中国の映画公開における当局の検閲基準って本当に謎で、個人的にも胃がキリキリした経験があるのですが、こういう社会風刺は容認されるのですね。その反面、あまり鋭く切り込んでない部分もあって、最後はちょっと焦点が定まらないまま中途半端に終わってしまった印象を受けた。

格闘シーンこそ無いものの、夜の上海のネオンの光景とか、タフな女性の描き方あたりが「ハーレイ・クイン」に通じるところがあるかな。美容院経営の女性を演じるのがヴィヴィアン・ウーで、ザジー・ビーツなんかもちょっと出演してます。

プロデューサーとしてジャ・ジャンクーが関わっていて、中国企業の資本もバックについてるのだろうけど、デビュー作からいろんな場所でロケ撮影してハリウッドスターを起用してるのってスゲえな。ついでに言うとエンドロールの曲は「時の流れに身をまかせ」の中国語バージョンだぞ。デビュー作がサンダンスで披露された程度でハリウッドのアクション大作の監督に抜擢されたのは運なのか実力なのか。とりあえず個人的には「ハーレイ・クイン」よりも面白かったです。