「THE WANTING MARE」鑑賞

UPSTREAM COLOR」のシェーン・カルースが関わっているということで興味のあった2021年の作品。カルースはもともとエグゼクティブ・プロデューサー扱いだったそうだが、恋人に対するDV容疑で逮捕されたことで名前を消されたそうで、何やってんだか。

話の設定はディストピアSFもしくは異世界ものといったところで、アナメーアと呼ばれる世界においては2つの都市があり、北のウィズレンは暑くて馬たちが駆け回り、この馬たちは毎年、南にある寒いレヴィセンに船で輸出されていた。ウィズレンの住民たちはレヴィセンに渡ることを渇望しているが、船のチケットは非常に貴重なものだった…というもの。

設定は壮大なのだけど低予算映画だから内容はもっと小ぢんまりしていて、このような世界設定は冒頭で説明されるだけ。あとはウィズレンに住む人々の話が語られていく。人物の背景が全く説明されないので推測するしかないのだが、過去の世界を夢見ることができる少女モイラが、重傷を負って目のまえに現れたローレンスという男性を介護しているうちに彼と恋に落ちる。そしてローレンスは海辺で赤ん坊を拾い、それをモイラに託して彼女のもとを去る、というのが前半の流れかな?そこから話は突然24年間とんで、今度はその赤ん坊だった少女エイラの物語になる…といった感じで結構分かりにくいのよ。

被写界深度を徹底的に浅くして背後の映像をボカし、レンズフレアを多用して荘厳な音楽を流し、ストーリーについては全く説明しない…というのがまんま「UPSTREAM COLOR」と同じで、シェーン・カルースは製作にかなり関わってたんだろうな。内容が意味不明の雰囲気だけの映画、と言ってしまえばそれまでなのだけど、映像は美しいし、ノバスコシアで撮影されたらしいウィズレンの外観もセンス・オブ・ワンダー感があって嫌いじゃないよこういうの。監督のニコラス・エイシュ・ベイトマンってスペシャル・エフェクツ出身の人のようで、それがこの独特の映像美につながってるのかな。

本国でもあまり評判は良くないようで、まあ分からなくもないのだが、今やゲーム業界のほうが主流になった、オリジナルの世界設定を掲げて作品を作っていく姿勢は応援したくなるのよな。シェーン・カルース、もう1本くらい映画製作に関わらないかな…。