「THE BIKERIDERS」鑑賞

日本ではそのまま「ザ・バイクライダーズ」の題で11月公開?

原作はあるのだが小説などではなく60〜70年代のバイカーギャングの姿を撮った写真集で、それをもとにジェフ・ニコルズが想像を膨らませて脚本を書いたらしい。ストーリーも極めてルーズな作りになっていて、シカゴのバイククラブで寡黙なベニーというバイカーと偶然出会ったキャシーという女性が彼とすぐさま結婚。クラブの姐さん的な存在になった彼女に、上記の写真集のカメラマンが取材するのが狂言回しとなって話が進んでいく。

そもそもこのクラブ「ヴァンダルズ」の結成の理由が、妻子もいる中年男性のジョニーがテレビでマーロン・ブランドの「乱暴者」を観てバイカーギャングに憧れたから、というもので反体制・反権力とかいったメッセージ性はゼロ。青春群像でもなくいい年した男たちが昼間から酒飲んでバイク乗って近所に迷惑かけているという、まあ個人的にはあまり共感できないキャラクターたちであった。馬鹿でかいバイクに乗ってヘルメットも被らずに道路を疾走している姿は流石にカッコ良いけどね。

ポスターではベニーを演じるオースティン・バトラーが主役並みの扱いだが、感情で動くヤクザの鉄砲玉みたいな役柄なので、オツムがどうも弱そうに見えてしまうのが残念。むしろクラブの運営に汗を流し、70年代になって入ってきた若手のメンバーたちの統率に苦労するジョニー役のトム・ハーディのほうが主役っぽい立ち回りだったような。そんな男たちをちょっと冷めた目線で見ているキャシー役のジョディ・カマーも大変良かった。

あとはジェフ・ニコルズ作品常連のマイケル・シャノンが出ているほか、ボイド・ホルブルックやノーマン・リーダスといった、いかにもバイク映画に出そうな役者がしっかり出てます。

当初はディズニー傘下の20世紀スタジオから公開される予定だったのが、放出されてユニバーサル傘下のフォーカス・フィーチャーズに買われる。配信スルーの憂き目は避けられたものの劇場公開の興行成績は散々だったという不遇な作品だけど、まあ確かに話の軸になるような要素も薄いので宣伝しにくかったのかもしれない。なんか物足りない出来だった。