「MONKEY MAN」鑑賞

デヴ・パテル監督・脚本・製作・主演のアクション映画。日本は8月公開かな?以下はがっちりネタバレ注意。

舞台はインド。非合法の闘技場で猿のマスクをかぶった「モンキー」として闘っている主人公は、高級ホテルのオーナーにうまく取り入って料理人として働くことになる。森の中の村で育った彼は、悪徳政治家の手先である警察署長によって村が襲撃されて母親が殺されたため、その復讐としてホテルの秘密のクラブにやってくる警察署長を狙うのだが…というあらすじ。

なんかパテルが「最近のアクション映画は気合が足らん!」といった意気込みで携わって、最初はニール・ブロムカンプに監督を頼んだらしいけど断られたので自分で監督したらしい。低予算の環境のなか本人もいろんなところ骨折しながら撮影したそうで、よくも悪くも荒削りな出来になっているかな。寡黙な主人公の復讐劇が生々しく描かれる一方で、ストーリーの流れや撮影が必ずしも洗練されていないというか。特に「ジョン・ウィック」とか「ザ・レイド」のようにスタイリッシュでぶれのないアクションシーンで目が肥えているとちょっと物足りないと感じるかも。

ストーリーについても、主人公の動機がなかなか明らかにされないのがちょっとまどろっこしい。いろいろフラッシュバックが重ねられて徐々に主人公の過去が明かされてはいくものの、なんか展開が遅いのよ。ジャッキー・チェンの作品並みの明快さは必要ないとはいえ、主人公の目的が最初からもっと分かりやすいほうがアクション映画としてはメリハリが出たかもしれない。

インド(の架空の街)が舞台であるものの、COVIDによるロックダウンのために撮影はインドネシアで行われたというのがご愛嬌。役者はパテルが出ずっぱりだが冒頭に俺の好きなシャールト・コプリーが出てきて、いろいろ話に関わるのかなと期待していたらそうでもなかった。

これもともとネットフリックスが購入して配信オンリーになる予定だったのが、内容の過激さと政治的な配慮からインドでの展開を躊躇していたとき、ジョーダン・ピールが気に入ってユニバーサルに買い戻させて劇場公開作品にさせたらしい。確かに最後に出てくる黒幕の政治家は、その過激なヒンズー至上主義で知られるインドのモディ首相をモデルにしているなというのがよく分かる一方で、そこまで露骨なポリシー批判をやっている訳でもなく、この程度の描写で市場に配慮されるくらいインドでのモディ批判というのはタブー視されているんだろうか。

初監督作品としてはやはり荒削りな部分が目立つものの、勢いにまかせて撮影しているようなエネルギッシュな感触もあって楽しめる作品ではありますよ。デヴ・パテル、このままもう数作品撮ってこなれてきたら結構面白い映画監督になれるかもしれない。