ケヴィン・スミスの新作「CLERKS II」を観る。以前はちょっと否定的なことを書いたけれども、ネット上の評判が結構いいのと「30代になったサエないオタクたち」というテーマが心の琴線に響くところがあり、観てみた次第なのです。
で、まあ、確かに30超えてもロクな生活してない男たちの物語ではあるんだが、それ以前に:
下ネタ多すぎ。
同世代の女と結婚するのと17歳の学生と遊んでるのではどっちがいいかという話から”Ass To Mouth”の是非についての長い議論につながり、”Pussy Troll”の話が出てきて、しまいにはロバさんまでが登場してものすごくヤバいことになってしまうんだが、単なるオゲレツ映画と違って、これらの会話がキャラクターの設定にちゃんとつながっているのが巧いところか。
そして監督のトレードマークである「スター・ウォーズ」に関する話もちゃんと出てきて、今回は「ロード・オブ・ザ・リング」のファンとの舌戦を繰り広げてくれる。こういうポップ・カルチャーの解釈に関する大論説とかって最近の映画ではまるで見られなくなったね。タランティーノのパクリが流行ってたころはみんなやってたのに。90年代は遠くになりけり。でも肝心の登場人物たちは、ジェイ&サイレント・ボブが相変わらずラリってて、ランダルはやること全てムチャクチャで客にケンカ売ってるし、ダンテだけが1人でオロオロしてて前作の頃と誰も変わってないでやんの。もちろんみんな年とって肌のツヤもなくなってきてるんだが、昔の友人と会ったら何も変わってなくって懐かしかった、といった感じでちょっと嬉しいかも。ちなみに主人公たちの高校の同級生で大金持ちになったイヤな奴が登場するんだが、ジェイソン・リーが演じてるんで全然金持ちに見えないでやんの。
そんな彼らにも人生の岐路は訪れるわけで、前作の舞台だったコンビニが火事で焼失してしまい、ダンテとランダルがファストフード店(「ドグマ」に出てきたムービーズだ)でしがない仕事をするようになってから1年。ダンテが結婚するために婚約者とフロリダに去る前日というのが今回の設定。フロリダでの幸せな生活を目前にしながらもダンテは相変わらず優柔不断で、1夜をともにしてしまった職場の上司ベッキー(ロザリオ・ドーソン)のことが気になっていた。そんな彼の悩みをまるで知らないランダルは盛大なさよならパーティーを企画するが、ベッキーの意外な秘密が明らかになって…。というのが主なプロットで、前作同様に小話がいくつもつながって1つの大きな話になってるといった感じ。でも単なる楽屋オチの集まりだった「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国の逆襲」と違って、ちゃんと最後にはホロリとするシーンもあったりする。ここらへんは監督の成長の度合いが表れてんのかな。ロザリオ・ドーソン(俺の好み)がダンテのようなダメ男を好きになるというのは絶対ウソだと思うけど。
そもそも「クラークス」って、20代の若者のダメダメだけど気楽な生活を同世代の監督が徹底的な低予算で描いたところが魅力だったんだが、今回も結局のところ30代のやっぱりダメダメだけど気楽な生活を描いてるわけでだ。そしてラストに至っては「そこまで何も変わらんのか?」というくらいの展開になってしまうんだが、これが逆に俺のようなダメ人間にとっては自分の生活を肯定されてるようで、それはそれで楽しいことなのです。まあ現実はそううまく行かないんだけどね。ケヴィン・スミスは40代になったダンテとランダルの姿も描きたいと言ったらしいので、彼らが10年後にどうなってるかに今から期待しておこう。
ちなみに俺はこれで「世界で一番パパが好き!」以外のケヴィン・スミス作品、つまりいわゆる「ヴュー・アスキューバース」の作品を全部観たわけだが、好きな順に並べると:
1、クラークス
2、チェイシング・エイミー
3、クラークス2
4、モールラッツ
5、ジェイ&サイレント・ボブ
6、ドグマ
みたいになるかな。他の人のはどうなんだろう。