カーマイン・アピスって既に他界してたかと思ったんだけど、俺の勘違いだったのね。
バンドの努力と挫折を描いた非常に素晴らしいドキュメンタリー。ラーズ・ウルリッヒも冒頭でちょっと言及しているけど、アンヴィルが成功できなかった理由は彼らが「カナダ人であった」ような気がしてならない。国民性としてアクが弱いというか、リップスもロブも基本的にいい人すぎて、生き馬の目を抜く音楽業界で成功することは出来なかったんじゃないだろうか。でも成功したバンドの人なんてのは多くが家庭を崩壊させたり酒や麻薬で死にかけたりしてるわけで、そういう意味では暖かい家庭に恵まれた2人はそれなりに幸せなんじゃないでしょうか。
国民性といえば「日本人はコンサートに早く来る」ことも重要なファクターになっていることも見逃してはならない。あちらでは前座のバンドを律儀に最初から見るなんてことはあまりないですからね。あとアメリカでのライブの光景が1つも紹介されないけど、この作品の撮影時に彼らはどのくらい人気があそこであったんだろう。
それと多くのバンドが抱える悩みである、アルバム製作の資金の工面やアルバムの売り込み、そして配給の問題といった音楽業界の事情についてもそれなりに詳しく取り上げられているのが興味深い。作品中に彼らが仕上げたアルバムはレーベルが見つからず結局自分たちで配給することになったわけだが、そうしたことでバンドの手元に入る利益はどう変わったのかとか、インターネットによって配給の仕組みがどう影響されたかなんて話も聞きたかったな。
日本でのライブで終わる最後は「スパイナル・タップ」そのまんまで感動的。日本政府はこういう年取ったメタルの人たちが安泰に暮らせる保養地のようなものを作って、地方をドサ回りさせたりすればいいんじゃないでしょうか。定年退職したスコーピオンズのファンとかにとってのいい娯楽になりそうなもんだが。