あの素晴らしき前作「IDIOCRACY」が着実にカルト的人気を集めている(しかし日本ではあの邦題のせいで…)マイク・ジャッジ師匠の新作。トレーラーはこちら。
話の舞台となるのは、植物などの成分を抽出(エキストラクト)してエキスを作っている小さな工場。そこの創業者であり社長であるジョエルは、商売が順調で大企業からの買収も持ちかけられていることに満足していたが、その一方では妻のスージーがセックスをさせてくれないことにフラストレーションを感じていた。そこで彼は不倫をしようかと考えるのだが、妻に罪悪感を抱かないために、まず彼女に不倫をさせようと自称ジゴロのバカな若者を妻に差し向けることに成功する。また工場では作業員たちの些細な不満がたまったことで事故が発生し、職員の一人がキンタマを片方失う不運に見舞われてしまう。企業に工場を買わせるためできるだけ早急に事故の処理を済ませようとするジョエルだったが、事故に遭った職員に美人詐欺師が近づいて工場に多額の訴訟を起こさせてしまい…というようなストーリー。本当はもうちょっとややこしいんだが、まあいいや。
マイク・ジャッジの最大の強みといえば何といっても「バカの描写」だが、今作もいろんなバカが登場するぞ。しかし「イディオクラシー」ではバカたちが話の要となって1つのストーリーを前に進ませていたのに対し、今作では同時に展開するプロットが多すぎるうえ、それぞれにバカが出てくるものだから1つ1つのプロットが散漫になってしまい、どれも話にヒネリがないままストレートに終わりを迎えてしまうような感じ。また愉快なバカと不愉快なバカがいるとしたら、今作は不愉快なバカばかり出てくるのが問題かな。隣人とのエピソードなんかはまるごと削除しても良かったのに。
褒められる点はキャスティングの絶妙さで、会社と部下の管理に四苦八苦するジョエルの役にジェイソン・ベイトマンがハマってるのは当然としても、彼の右腕を演じるJ・K・シモンズや妻を演じるクリステン・ウイーグも好演してるし、美人詐欺師を演じるミラ・キュニスが意外に良かった。彼女って単に外見だけの人かと思ってたので。一番素晴らしかったのは豪腕弁護士をKISSのジーン・シモンズが演じてたことで、あの強面で無理な条件を突きつけてくる姿は異様な雰囲気を醸し出していたな。主人公の友人を演じるベン・アフレックはハズレでしたが。
話の落としどころはちゃんとわきまえているし、そんじょそこらのコメディ映画よりかは面白いものの、主人公をあまりにも常識人にしてしまったためシンパシーの対象となり、彼が見舞われる災難について笑えなくなってしまったのが大きな欠点かな。マイク・ジャッジは去年製作したTVシリーズ「The Goode Family」もハズしているので、次回作が「IDIOCRACY」並みの傑作になることに期待したいところです。