第5代ヘイデン=ゲスト男爵ことクリストファー・ゲストのモキュメンタリー作品「みんなのうた」を観る。彼のこの前の作品「ドッグ・ショウ」はいまいちピンとこなくて、どんな内容だったか正直覚えていないくらいなんだけど、こいつは面白かった。
フォークミュージックのプロモーターが死去したことで、彼に世話になったバンドたちが再結成してコンサートを行うまでの姿を追った作品で、よく観てないと冗談なんだか真面目なんだかよく分からないような、ひたすらシュールなジョークが続いていくところは「ドッグ・ショウ」と同じ。出演者はゲスト自身のほかに、ユージン・レヴィやマイケル・マッキーン、ハリー・シェアラー(スパイナル・タップだ!)などなど、ゲストの作品ではおなじみの面々が顔を揃えている。
特徴的なのはコメディなのに底辺には徹底したペーソスがあることで、それを象徴してるのがレヴィとキャサリーン・オハラが演じるミッチ&ミッキーというフォークデュオ。ずっと前に別れた彼らの片方は平凡な主婦生活を営み、片方は精神を病んでしまっている。そんな彼と彼女が久しぶりに再会して歌をうたう姿ははかなくも美しい。コンサートが成功に終わったからってまたスターになれるとは限らず、その後のバンドたちの微妙な姿までを描いてるのがちょっと酷でもある。
そして劇中でバンドが披露する曲がどれも素晴らしく、コンサートのシーンだけでも十分楽しめるかも。特にバンドが総出演で歌う「A MIGHTY WIND」の光景には圧巻される。これらの曲をすべて出演者たちが自ら作曲して演奏したというんだから、才能あるよなあ。