こないだやっと劇場公開されたヴェルナー・ヘルツォークの映画「RESCUE DAWN」のもととなった、ヘルツォーク自身によるドキュメンタリー「Little Dieter Needs to Fly」を鑑賞。
これはディーター・デングラーというドイツ生まれのアメリカ人に関する作品で、子供の頃に目撃した飛行機の素晴らしさにとりつかれたディーターは18歳のときに単身アメリカへと渡り、夜学で勉強しながら大学を出て空軍に入り、念願のパイロットとなる。しかし折しもアメリカはベトナム戦争に突入しており、ディーターも戦地へ向かわされて戦闘機に乗るが、ベトナム軍に撃墜されて捕虜になってしまう。そこで地獄のような拷問を半年にわたって受け続けた彼は、ある日ほかの捕虜たちと脱走を決行する…。というのがおおまかなプロット。
いちおう戦争ドキュメンタリーなんだけど、むしろ空を飛ぶという夢にとりつかれたディーターの姿に話の焦点はあてられており、この1つの夢に向かって突き進んでいく男の姿というのは「アギーレ」や「フィッツカラルド」に似たところがなくもない。もっともディーター本人は温厚にベトナム人たちとも会話するような老人で、キンスキーのようにトチ狂ったところはまるでない。飛行する夢、という点ではJ.G.バラードにも通じるところがあるのかな。ディーターが受けた拷問の再現として、彼の手を後ろで縛ってベトナム兵と一緒に走らせるシーンとかがあるけど、よくあんなこと承諾したよなあ。本人も「思い出が甦って心臓がバクバクした」みたいなこと言ってるし。あとジャングルに生きるベトナム兵の知識と、ジャングルでの遭難を軽視したアメリカ軍の教育映画が対照的に紹介されてるのがちょっと面白い。ああいうのを観ると、アメリカ軍がなんで負けたのかがよく分かるような気がする。
ヘルツォークのドキュメンタリーとしては地味な部類の作品だけど、これが「RESCUE DAWN」でどう映画化されてるのか興味深いところです。