アラン・ムーアとミッチ・ジェンキンズがキックスターターで資金を調達した短編映画「His Heavy Heart」が完成してダウンロード用のリンクが送られてきたので、過去の4作品とあわせて一気に鑑賞。5つあわせて「The Show」という作品を構成するのかと思いきや、「The Show」はもっと包括的なコンセプトで、これらはその1部を成す「Show Pieces」という作品群になるんだとか?よって今後もこの世界を舞台にした話が作られていくのかな?まとめて鑑賞することで、以前に書いたときよりもなんとなく世界観が分かるようになったので、各作品を時系列ごとに紹介する:
「Act Of Faith」
タブロイド紙の記者をやっているフェイスという若き女性が、クローゼットで一人SMを試みるものの、最悪の結果を招くことになる。
「Upon Reflection」
怯えたファイスは小汚いパブ(兼クラブ)にたどり着く。そこで彼女はクラブのマネージャーのマッチブライト氏と出会い、彼から侮蔑的な扱いを受ける。部屋の角の鏡に映った映像になっているのが特徴的な一編。
「Jimmy’s End」
土砂降りのなかクラブにたどり着いたジェームス。彼はそこでフェイスとマッチブライト氏、そして道化のボブルスに出会う。赤い光のなかでダンスをするジェームスとフェイス。クラブのもう一人のマネージャーであるメタートン氏がステージに現われ、スピーチを行なう。
「A Professional Relationship」
マッチブライト氏とメタートン氏がクラブの楽屋で、お互いの微妙な関係と将来について語り合う。
「His Heavy Heart」
ボブルスに拷問を受けるジェームス。彼のハートは羽と天秤にかけられ、彼は有罪であることを宣告される。恐ろしい運命から逃れるために、彼は1つの提案を受け入れるのだが…。こないだ亡くなったムーアの師匠、スティーブ・ムーアに献辞が捧げられている。
これだけ読んでも話がさっぱり分からないだろうが、映像を観てもわからないんだよ!かなり明白なのは舞台となるパブ(クラブ)は死後の世界を表していて、だから事故死したフェイスはそこに辿り着いたらしい。一方でジェームスがやって来た理由は明言されないものの、女性絡みであることが示唆されている。ハートと羽を天秤で量るのはエジプトの「死者の書」からの引用だよね。
またクラブのマネージャーであるマッチブライト氏とメタートン氏はそれぞれ影と光を象徴するような存在で、ムーア御大自らが演じるメタートン氏は顔を金色に塗りたくり、さらにGCTA(遺伝子の塩基を表す)と書かれたカードを並べ替えて思索しているあたりは、創造主でもあるのかしらん。ここらへんキリスト教の概念っぽいが、「キリスト教なんてモダンすぎる!」なんてセリフも出てきます。
とりあえずこれで今回の映像化の話は一段落ついたと思うのだけど、DVDの売れ行き次第ではまた撮影とかするのかな?あるいは別のメディアで「The Show」の物語は続いてくのだろうか。でもやはりムーアはコミックを主体に活動してほしいと思うのです。