「ブリッジ・オブ・スパイ」鑑賞

Bridge_Of_Spies_2015
ううむ、地味な題材とパッとしない予告編のおかげであまり期待せずに観たのだが、かなり面白かった。

伝記映画の常として脚色がいろいろ入っていて、例えば主人公のジェームズ・ドノヴァンはごく普通の保険弁護士というよりも実はOSS出身で諜報活動には詳しかったらしいが、そういうことを差し引いても、国のまっとうなサポートを受けられないまま外国で孤軍奮闘する彼の描写が見事であったよ。

前半は法廷でのシーンが多いので「リンカーン」や「アミスタッド」を彷彿とさせて、それはそれで悪くはないものの、やはり後半になって主人公がベルリンに乗り込み、CIAの忠告もあまり聞かず、数に劣る人質交渉をやりくりするさまが面白かったよ。ここらへんはコーエン兄弟の脚本の手直しによるものなのかな。

キャストはトム・ハンクスが相変わらず「良い人」っぷりを発揮して好演。ソ連のスパイを演じたマーク・ライランスという役者のことは知らなかったけど、抑え気味の演技が見事。ただし今回の役はメークの関係か「老けたダニー・ボイル」にしか見えなかったのは俺だけ?あとはアラン・アルダやジェシー・プレモンズ、ドメニック・ロンバードッジなども出てます。エイミー・ライアンはクレジット見るまで彼女だとは気づかなかったぞ。

音楽も今回はじめてスピルバーグと組んだトーマス・ニューマンのものが抑えつつも効果的に使われていて素晴らしい。一方ではヤヌス・カミンスキーの色あせた撮影スタイルが個人的にはどうも好きになれんのよな…スピルバーグはそろそろ他の撮影監督を使ってもいいだろうに。

政治的な内容を扱っているだけに、説教的というかプロパガンダ的な要素がそれなりに含まれているのだけど、アメリカの寛容さを見せつけるためにソ連のスパイにもちゃんと法廷の裁きを与える、という大義がだんだんと薄れていき、それと反比例して主人公がどんどん奮闘していくさまも良かったな。ここらへんは現代社会においてもいろいろ学ぶことがあるんじゃないかと。

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