ツイッターのTL上の評判がとても良かったのと、みんな当面はネタバレをするまい、という雰囲気がひしひしと感じられたため、ならばネタバレされる前に観てしまえ、ということで劇場に行ってきました。ギャレス・エドワーズ版を除けば、「ゴジラ」を観るのって1984年版以来となります。
それでね、個人的にはまったくダメだったのですよ。
ストーリー的には悪くないんですよ。ゴジラが現れて暴れるというコンセプト自体は非常にシンプルながら、東日本大震災と原発事故の出来事をうまく取り入れて、怪獣映画にブレンドしている手腕はとても良かったと思う。ただあのときって、直接の被害を受けなかったとしても人々のあいだには重々しい不安感があり、福島の状況に対する無力感があり、ネット上では有象無象の見解(というかデマ)が飛び交ってたじゃないですか。それに対してこの映画ではゴジラが襲撃してない間はごく普通の日々が続いてるような描写がされていて、なんか違うんじゃないのとは思いましたが。
そんで自分にとって何がダメだったかというと、やはり演出。ちなみにおれ「エヴァンゲリオン」は観ていて(テレ東のものではなくてWOWOWでやった総集編みたいなやつ)、それ以外の庵野秀明の監督作は観てません。よって彼が他の作品でどういう演出をしているか知らないし、今回は意図的に「エヴァ」に似せたという話も聞くものの、何にせよアニメと同じ演出を実写でやることが個人的には受け入れられませんでした。
あまり意味のなさそうな変なカメラワークはまあ置いておくとして、無愛想な理系女子とか、データサンプルみて興奮するメガネ男子とか、言葉の節々に英語を交えるハーフ女性といったキャラクターはね、アニメの世界だからこそ存在が許容されるのですよ。この国の状況をクールに見据えるキャラクターなんて二次元だからこそ映えるわけで、さすがに顔が脂ぎってきた竹野内豊に演じさせてもカッコ悪いのよ。石原さとみに至っては日本語も英語もなに言ってるか分からなくて論外。「サンダ対ガイラ」のラス・タンブリンみたいに外人起用して声を吹替えたほうが良かったのでは。人物だけでなくゴジラも、巨神兵まんまな描写がありましたね。
昨年押井守の「パトレイバー」を観たときも思ったけど、アニメだから映える演出ってあるはずなんですよね。「どっひゃー!」なんて派手に驚くオッサンとかが現実世界にいたら、単に痛々しいだけじゃないですか。国の未来を論じるようなセリフがやたら多いのも「パトレイバー」に通じていたな。監督が主義主張を作品に反映させるのはいいよ、でも映像作品なのにセリフに頼っているのは力不足でしょう。聞いてる人のことを考えてないような、やたら早口で話すセリフまわしも好きにはなれなかった。最後のクライマックスに至っては防護マスクをしながら喋ってるので、声がくぐもって何言ってるか聞こえないのだもの。高層ビルがまるまる倒壊した直後に作業車がガレキのなかを余裕で通れる都合のよさが認められるのであれば、主人公がゴジラを前にマスクを外す都合の良さも認めてほしかった。
周囲では絶賛されてるし、興行的にも大ヒットしていることを考えると自分のような意見は少数派なんでしょうが、まあ要するに監督の演出が自分の肌に合わなかっただけです。アニメに近い演出をしてるのはあくまでも監督が意図しているもの、と言われればそれでおしまいなのだけど、アニメから実写に移ってすぐホームラン級の作品を撮ったブラッド・バードなんかがいることを考えると、やはりアニメと実写の演出は異なるものだろうと思うのです。