実はこないだアメコミ業界では衝撃的な出来事があって、それが大きな反響を呼んでいるわけだが、著作権法などの難しい法律に関わる事柄なのでいろんな記事を読んでみてもいまいち全体像が見えてこなかったりもする。とりあえず俺が理解してる点を挙げると:
1、今からちょうど70年前、ジェリー・シーゲルとジョー・シュスターという2人の少年が、彼らの創作した「スーパーマン」というコミックのキャラクターの権利をDCコミックスに130ドルで売り渡した。
2、「スーパーマン」は大ヒット作品となり、今日にいたるまでDCコミックスと親会社のワーナー・ブラザーズに膨大な富をもたらした。その一方でシーゲルとシュスターはその富の分け前をもらうことができず、70年代になってやっと功績が認められてDCから年金をもらえるようになった。
3、それでも彼らが受けた扱いは不当なものであるとして、シーゲルの遺族がスーパーマンの著作権を求めて訴訟をおこしたところ、少なくとも著作権の一部はシーゲルに属する、という判決がこないだ下された。
これの何が衝撃的かというと、アメコミのキャラクターの著作権というのは誰が創作しようとも、ライターやアーティストといった創作者ではなく出版社に属するのが一般的であり、特に30年代から60年代あたりのアメコミ作家たちは自分たちが創作したキャラクターを出版社に奪われ、搾取されていたと言っても過言ではない。それが今回、少なくとも著作権の一部は創作者にあるんですよ、という判決が出たのが画期的だというわけ。
逆にDCコミックスやワーナーは著作権の一部を失うわけだから上告するかもしれないわけで、たぶん著作権をめぐるドロドロした争いは今後も続くんだろう。数年後にはシュスターの遺族も訴訟を起こす権利が持てるらしいし、これとは別に「スーパーボーイ」の著作権をめぐる争いも起きているようだ。
個人的には今回の件については2つの意見があって、1つはまず作家たちの功績が認められたことは非常に喜ばしいことであり、今後も例えばジャック・カービーやガードナー・フォックスといった偉人たちの功績が認められるようになればいいかなと。あとボブ・ケインが不当にも独り占めしていた「バットマンの創作者」という肩書きがビル・フィンガーやジェリー・ロビンソンとかにも与えられることにならないかな。
ただしその反面で思うのは、この判決によってDCやワーナーがスーパーマンの使用に消極的になって、コミックや映画の製作を行わなくなり、結局のところ我々消費者が損をするのではないかという事。実際に「スーパーボーイ」は訴訟の影響でDCユニバースから消えてしまったからね。「スーパーマン・リターンズ」の続編も製作中止になったら嫌だな。
あとこれと関連して思い出したのが、日本でも話題になっている著作権の保護期間。NYタイムズの記事によるとスーパーマンの著作権は少なくとも2033年まで保護されるみたいだけど、そんなに長い保護期間って本当に必要なのか?作家が自分の創作物に対して印税を受け取る、という仕組みには何の異論もないけど、なぜ作家の孫や曾孫までがその恩恵を受けなくてはならないのかは理解できないのです。