「KNIVES OUT」鑑賞

ライアン・ジョンソンの新作。日本では「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」の邦題で1月末に公開らしい。キャスリーン・ケネディに解雇されずに「スター・ウォーズ」作品を監督したことで一躍名を挙げたジョンソンだが、デビュー作は高校生探偵映画「BRICK」であったわけで、今作はその原点に戻るかのような推理ものになっている。よって以下はネタバレ注意。

舞台はボストンの巨大な館。そこには有名推理小説家のハーラン・スロンビーが住んでいたが、ある朝彼は喉を切られた死体となって発見される。警察によって彼の死因は自殺とみなされ、彼の膨大な遺産を分けるために彼の子供たちが館へと集合するが、何者かによって雇われたという探偵のブランクが現れ、皆に聞き込みを始める。そして家族に隠された秘密が徐々に明らかになっていき…というあらすじ。

原作などはないもののアガサ・クリスティの作品にインスパイアされたとかで、設定自体は「BRICK」に比べると比較的ストレートなフーダニットものになっているかな。ただし途中でプロットに大きなヒネリがあって、単純な犯人探しものではなくなったりする。個人的にはちょっとそれが興醒めだったけど、最後にまたヒネリがありまして、まあそこは観てのお楽しみ。

家長の遺産を狙って子供たちがいがみあい、皆が何らかの殺人動機を持っている一方で、ウソをつけない人物が出てくるなど、なかなか特徴的なキャラクターたちがストーリーにアクセントを加えている。敏腕なんだかよく分からない探偵のブランクもいい感じ。

というかこの作品、キャストがえらく豪華で、ダニエル・クレイグにクリス・エバンズ、クリストファー・プラマー、ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、マイケル・シャノン、アナ・デ・アルマス、ラキース・スタンフィールド、トニ・コレットなどなど、ほかの作品なら主役を張ってるような役者がズラリ。

「ヘレディタリー」のあとでは屋敷にいるトニ・コレットがとても怖いのが難点だが、これだけの役者が揃っているのを観るだけでも一見の価値はあるかと。「ミッドナイト・スペシャル」で親子を演じたマイケル・シャノンとジェイデン・マーテルがここでも親子を演じてるという小ネタもあるよ。個人的には「ロイス&クラーク」のK・カランが出てたのがツボでした。

これだけのキャストを率いるのがブランクを演じるダニエル・クレイグで、007のような寡黙な役を演じることが多いだけに、今回のようなコミカルでよく喋る役は意外だったし面白かった。南部訛りで話すのがちょっと耳障りだが、あの青い目で真実を聞き出そうとする姿がカッコいいのよ。

推理ものということで内容について多くは語れないのが残念だが、批評家に絶賛されている通りに楽しめる作品だった。ジョンソンの「最後のジェダイ」は自分の周囲ではそんなに評判良くないようだけど、あれの監督だということを気にせずに映画館に足を運んでもらいたい一品。