「SLACKER UPRISING」鑑賞

マイケル・ムーアがウェブ上で今日無料公開したドキュメンタリー。公式サイトからダウンロード可能だけど、北米の視聴者が対象なので日本から入手するにはHotspotshieldなどを経由する必要があり。iTunesやアマゾンのストアでも入手可能になるみたい。感想などを箇条書きで挙げていくと:

●これって昨年トロント国際映画祭で公開された「Captain Mike Across America」とは別物の映画なの?あれを再編集したもの?

●2004年の大統領選挙の際に、ブッシュ再選を阻止するためムーアが全米各地をまわって講演した様子を記録した作品。ムーアのツアー映画といえば「ビッグ・ワン」もそうだったが、彼の他のドキュメンタリーにくらべて一貫したテーマがないために、全体的に散漫な感じがするのは否めない。また暗い講演会場での映像が大半であり、撮影や音声に乱れが生じることも多々あり。金を払ってまで観るほどのクオリティを持った作品ではない。

●結局ブッシュは2004年に再選されたわけであり、冒頭に「これは失敗した活動の記録である」と出てくるように、ムーアたちの活動を今になって観るのは少し空しい感もある。

●しかしどの都市でも会場に非常に多くの若者たちが押し掛け、反ブッシュを掲げて団結する姿はなかなか印象的。日本じゃこういう集いはそう多くは起きないだろうな。

●ムーアの活動スタイルの最大の欠点として、彼の意見に反対する人たちを説得するよりも、逆にかえって反発を招いてしまうという点が挙げられる。この映画でも反ブッシュをアジった結果として多くの共和党員たちに目の敵にされるわけだが、公演会場に来たブッシュ支持者たちの罵倒にも動じず、きちんと反論しているところは見事。

●ただし良くも悪くも彼ってアジテーションが巧くなりましたね。キリスト教右派のテレバンジェリストとかの姿がダブって見えるときもあって、ちょっと違和感を感じてしまう。昔はもっとユーモアで権力に立ち向かう姿勢が強かったような気がするんだが。

●セレブなゲストも多数登場。REMやジョーン・バエズ、エディ・ヴェダー、ロザーヌ・バーなどなど。スティーブ・アールの「Rich Man’s War」は名曲だなあ。

●ヴィゴ・モーテンセンが「この国ははカナダみたいな文明国と違って18歳になれば自動的に投票用紙が送られてくるわけじゃないから、みんな投票登録をしてくれ」といった発言をするんだが、なんでアメリカって投票するのに登録の手続きが必要なんだろう。黒人層が意図的に登録を済ませられなかったとかいう話を聞くたびに、あの国の選挙システムってどこかおかしいと思わずにはいられない。

まあ「華氏911」と同じで、ドキュメンタリーというよりもプロパガンダに近い作品ですかね。いろいろ考えさせられる内容なんだけど、ここに描かれたことをすべて鵜呑みにするわけにもいかないでしょう。

あとこないだラリー・キングとのインタビューでムーアが言ってたことで、なるほどと思ったのが「車を修理したいときに、1つのレンチを8年間使ってうまくいかないようであれば、もう1つのレンチを使いたいと思うのは当然のことでしょう。それもダメだったら4年後に捨てればいい」みたいな発言。まあこの8年のあいだには、無駄な戦争やボロボロになった経済など多くの失敗があったわけで、いまの政策が今後も踏襲されるのは日本人としても勘弁してほしいと思わざるを得ないのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です