みんな大好きA24が今年配給した映画。ゾーラ・キングという女性が実際にフロリダで経験したという一連の出来事をツイッターで148連投(!)したところバズって、「ローリング・ストーン誌」の記事になって、それがこの映画の元ネタになったものらしい。
デトロイトのレストランで働いていたゾーラは、客として来ていたステファニと意気投合し、彼女に誘われてフロリダのクラブでストリッパーの仕事をして一儲けを計画する。ステファニの彼氏のデレク、および彼女の友人の「X」とともに車に乗ってフロリダに到着したゾーラだが、Xは実はステファニのポン引きであり、ストリッパーだけでなく売春の仕事をゾーラとステファニに強制してくる。最初は断ったゾーラだが、Xに脅されて仕方なしに客の待つホテルにステファニとともに向かうことに…といったあらすじ。
上記のローリングストーンの記事によるとXのモデルになった人物はのちに人身売買の容疑で逮捕されてるようで、話の展開はサスペンス的ではあるものの、映画の作りはもっと「アフター・アワーズ」みたいな夜のドタバタを描いあブラックコメディっぽいものになっている。35ミリフィルム(たぶん)で撮影された映像にレトロなフォントが乗っかるオープニングなんかは70年代のブラクスプロイテーション映画を彷彿とさせるものの、その一方でツイッターの送信音や通知音が鳴り響くモダンさ。時たまデジタル撮影した映像が挿入され、登場人物が第4の壁を破ってカメラに話しかけたりもして、これぞアート映画!という香りがプンプンしてます。そういうのが苦手な人にはダメな映画かも。おまけに音楽はミーカ・レヴィだぞ。
さらにローリングストーンの記事によると実際のゾーラによる一連の出来事の供述と、ステファニのモデルとなった人物の証言もまた食い違ってるそうで、劇中でも突然ステファニが自分なりの解説を始めたりするものの、基本的にはゾーラの視点で物語が進んでいく。なんかいろんな演出を劇中で試して、それがすべて成功している、というわけではないような。
監督のジャニクザ・ブラヴォーって知らなかったが今後いろいろ活躍するかもしれない。ゾーラ役にはテイラー・ペイジでステファニ役にライリー・キーオ。ふたりのビッチなやりとりも面白かったが、X役のコールマン・ドミンゴの威圧的な演技がいちばん良かったかな。
観た後に何かが残るような作品でもないが、試みとしては野心的で悪くないというか。おそらく今後も「ツイートを映画化」という作品が(日本でも)出てきそうな気がするけど、これくらいの出来を目指さないといけないよという1つの試金石的な作品となるのではないでしょうか。