「INFINITY POOL」鑑賞

新作がもはや伝統工芸のようになっていた父親よりも、前作「ポゼッサー」のほうがクローネンバーグ感のあったブランドン・クローネンバーグの新作。

舞台は架空の国のリゾート地リ・トルカ。裕福な妻とそこを訪れていた作家のジェームズは、自分の本のファンだという女性とその夫に出会う。彼らに誘われて地方を訪れたジェームズたちだが、夜中にドライブしてホテルに帰る際に地元の住民を撥ねて殺してしまう。リ・トルカの警察は信用ならないと聞いた彼らは事故について黙っていることにするが、翌朝彼らは逮捕されてしまい…というあらすじ。これは話の序盤で、このあとリ・トルカの司法制度に関する重要な事実が明かされるのだがネタバレになるので伏せておきます(予告編で分かるけど)。

特に観光名所があるわけでもなくボーッとするだけのリゾート地における、怠惰な金持ちたちによる暇潰しの暴力行為が繰り広げられるあたりはJG・バラードの後期の小説に似ていて、そういえばブランドンの次作はバラードの「スーパーカンヌ」のシリーズ化だったなあ…というのは無理のある関連付けでしょうか。実際はリ・トルカ警察の不可思議な官僚主義はカフカ的なところもあるし、「ポゼッサー」のようなSF的要素もあるのだけどね。

このようにいろんな要素を詰め込んだ一方で、少し全体的に散漫な印象を受けるかな?それぞれの設定は興味深いものの、きちんと深掘りされてないというか。あと「ポゼッサー」もそうだったけど衝撃的なシーンは70年代のSF映画のごとく画面を揺らして色をチカチカさせる演出を行なっていて、それ自体は悪くないのだけど多用するのもどうかと。グロいシーンをハッキリ見せてもええんやで。

いろいろ非道い目に遭うジェームズを演じるのはアレクサンダー・スカルスガルド。体を張った演技を見せてくれます。そんなジェームズを勧誘するのが、なんか最近ホラーにばかり出ている能面ことミア・ゴス。こないだ観た「PEARL」は田舎の保守的な暮らしにブチ切れた少女の演技がとても良かったのですが、彼女もしかしてオーバーザトップな演技しかできないのかな…?裏でいろいろ企んでいる女性という今回の役には繊細さが足りなかったような。

興行的には散々だったようで、そこだけはクローネンバーグ親子の共通点ですかね。個人的に「ポゼッサー」がすごく良かったのでちょっと肩透かしだったが、興味深い設定が詰め込まれている作品ではあります。「スーパーカンヌ」に期待。