
普通に面白い作品であったよ。日本公開が急に決まってろくに宣伝されてないような気がするが、IMAXの空き状況にあわせて公開されたのかな。
- ホラー作品としてみれば「フロム・ダスク・ティル・ドーン」に近いのかな。怪物たちに襲われる酒場での一夜の攻防を描いた内容ではあるわけだが、アメリカ南部における黒人文化を守り通すことをテーマにした秀作。パーティーへの準備と盛り上がりまでの過程は「SMALL AXE」の第2話目、ジャマイカ系移民がサウンドシステムを持ち込んでパーティーを開催するエピソードに通じるものがあると思いました。
- そんな黒人たちを狙うのがアイリッシュ系の吸血鬼たちということで、個人的にはこっちのほうに興味を持ったな。アメリカにおけるマイノリティ同士が殺し合うという皮肉があるわけだが、その一方でどちらも自分達のルーツの音楽は愛しているという共通点がある。ヴァン・モリソンだっけ?が言っていた、ロックンロールはケルト音楽と黒人音楽がアメリカで融合して生まれたという言葉を連想した。まあ公民権運動の際に黒人を最後まで差別したのは、かつて自分達が虐げられてきたアイルランド系移民だったのだけど。
- マイノリティといえば、IMDBのトリビアによると劇中に出てくる中国系の店は実際にあったものをモデルにしていて、通りを挟んで片方では黒人相手に商売をして、もう片方では白人を相手にしていたそうな。面白い。
- ケルト系の吸血鬼といえば「プリーチャー」のキャシディでしょ、というわけであのマンガにインスパイアされてるのかなとも思ったけどその証拠は見当たらず。よく聞き取れなかったけど、劇中でキリスト教の祈りに対して「俺らを追い出した連中の言葉だ」とか言ってたのはケルト人がローマ人に侵攻されたことを言ってたんだろうか。
- 役者はマイケル・B・ジョーダンが相変わらず手慣れているなと。ただし主人公ふたりがよく似ていて、帽子の色でしか区別つかないから序盤はどっちがどっちだか分からないシーンもいくつかあり。あとは個人的にデルロイ・リンドーを見たのが久しぶりで、いい俳優だよねえ。
- 普通に手堅い作りで楽しめる作品だった。アメリカでもヒットしたそうで、フランチャイズに頼らなくてもいい作品なら稼げることを証明したのではないか。