「LAKE OF FIRE」鑑賞

めでたい新年には気の滅入るドキュメンタリー映画を観よう、ということで妊娠中絶を扱った作品「LAKE OF FIRE」を観る。これは「アメリカン・ヒストリーX」を監督したトニー・ケイが18年もの期間をかけて自腹で製作したもので、中絶反対派と賛成派両方のインタビューを中心に中絶問題の奥の深さを浮き彫りにしていくもの。

監督自身は今でも中絶について特に確固とした意見を持っていないことを公言しているんだが、俺は「客観的なドキュメンタリー」というものはありえないと思っているので何かしらのオピニオンが含まれているんだろうと疑いつつ観てみたら、確かに特に偏向のない内容になっていた。これはバランスのとれた作りになっているというよりも、中絶というテーマがあまりにも深すぎて、すべての意見が一理あるように聞こえるためなんだろう。作品中に出てくる「中絶に関してはあらゆる意見が正しい」という発言が印象的である。

俺自身もこの作品を観るまで自分は明確にプロチョイスだと考えていたけど、母親の腹から出てくる胎児の断片などといった非常にショッキングな映像を見せられると、やはり子供の命は可能な限り守るべきだと実感した次第です。でもその一方で、中絶反対を声高に唱える連中の殆どが、子供の育て方も知らないようなキリスト教右翼のファナティックであるのを見るとプロライフという思想も問題があるよなあと思わずにはいられない。胎児を殺すのはダメだけど中絶医たちを殺すのはオッケー、というロジックは俺には理解できないですね。宗教的な縛りの薄い、たとえば日本のような国ではまた異なる意見がいろいろ出てくるんだろうな。

2時間半という尺は長過ぎるものの、いろいろ考えさせられる作品であった。そして中絶を認めるにせよ認めないにせよ、とにかく苦労するのは女性だということを、われわれ男性は性交渉の前にきちんと肝に銘じておくべきでしょう。

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