アメリカでは今週末に公開される「ウォッチメン」のレビューがいろいろ挙ってきていて、Rottentomatoesなんかを見る限りでは「悪くはないんだけど、素晴らしくもない」という評価が多いみたい(「AVクラブ」の評価は「B」)。この映画のように原作がカルト的人気を誇り、長らく映像化が期待されていた作品は「予想以上の素晴らしい出来」でないとファンを満足させることが出来ないと思うので、結局今回の映画化は失敗だったということになるんだろうか。まあ見てない映画を論ずるのは嫌なので、いずれ日本で公開されたら観に行きますが。
その日本での配給はワーナーでなくパラマウントだったのがちょっと意外だったけど、公式サイトとか街の広告とかを見ていると、宣伝のやり方に戸惑っている感じがするのは気のせい?確かに原作の知名度が圧倒的に低い日本でこの映画を売るのは難しいだろうな。ちなみに本国の公式サイトではアラン・ムーアのことは一切言及されてないけど、日本のサイトでは言及されていた。「ウォッチメン」を語るには不可欠な情報だからね。
この映画の公開にあたり、そのムーアが自分の作品の映画化を嫌っていることが多くのところで紹介されて広く知れ渡るようになったんだけど、それに対する反論としてよく書き込みがされているのが、まず「ムーアは映画化で金を儲けたんだから黙っておれ!」という意見。これは事実に反していて、ムーアはここ一連の映画化からの報酬はすべて拒否しているし、自分の名前が原作者としてクレジットされることも断っているんだが。
次の反論は「映画化が嫌なら映画化権を売るな!」というもの。でもムーアはアーティストと組んで作品を製作しているわけで、自分が映画化を拒否したらデイブ・ギボンズやデビッド・ロイドといったアーティストに報酬が行かなくなることを考慮してると思うんだが。実際に彼の分け前はアーティストにまわすように指示しているはずだし。あと「フロム・ヘル」あたりの頃はまだ映画化に今ほど否定的ではなかったんじゃなかったっけ。それが次から次へと駄作が作られるものだから映画化を嫌うようになったという経緯のはず。ちなみにムーア本人は「ザ・ワイヤー」くらいの高い出来になるのなら映像化を考えてもいい、みたいなことを言ってるので自分の作品の映像化を完全に否定しているわけではないようだ。
そして最後にいちばん噴飯ものなのが「ウォッチメン」が話題になったことで自分の本の売れ行きが上がってるんだから、映画を貶すのはやめろ!」という意見。これは「フロム・ヘル」のプロデューサーも言ってるらしいけど、「ウォッチメン」などの作品をムーアは自分で生み出してるわけですよ、それがいかなる理由で売れてムーアが利益を得たとしても、彼はあくまでも自分の仕事の正当な対価を得ているわけで咎められる必要はないと思うんだけどね。逆に映画化されたことでコミックの評判が下がることもあり得るわけだし。「V・フォー・ヴェンデッタ」なんて実に素晴らしい作品なのに、一般の人は映画版のイメージしか湧かなくなっちゃったでしょ。
まあムーアも少しは柔軟になって、もらえるものはもらっちゃっても良いような気がするけど。いずれは彼をギャフンと言わせるくらいの映像化に成功した作品が出てくるかもしれないし。でも「ウオッチメン」はそういう作品ではなさそうだな。余談だがアラン・ムーアの経済状況については、ずっと前にニール・ゲイマンが「ムーアの家は後ろが沼地で地盤沈下を起こしていて、彼の稼ぎの大半はそれの修繕に消えている」みたいなことを言っていたような気がするんだけど、家の状況は大丈夫なのかムーア先生。映画化の報酬を断ったせいで傾いた家に住んでたりするのではあるまいな?
追記:日本のサイトを見て知ったんだが、映画だとコメディアンたちは「ウォッチメン」と呼ばれてるの?原作で彼らが直接そう呼ばれたことは無いんだけど(正式名称はミニットメン、もしくはクライムバスターズ)。
追記2:実写映画よりもこいつを観てみたい:
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