野球が題材のアートハウス・シネマなんて初めて観た。
ドミニカ共和国の野球クラブでピッチャーをしていたミゲル・”シュガー”・サントスは、スカウトに教えられたナックル・カーブが認められてカンサス・シティーのメジャーリーグ・チームのキャンプへと招かれる。家族を離れてフェニックスのキャンプ場にやってきたシュガーはそこでも実力が認められ、アイオワのド田舎に拠点を置くマイナー・リーグのチームでプレーすることに。慣れない環境に戸惑いながらも徐々に力をつけていき、勝利を重ねるようになったシュガーだが、足を怪我したことでスランプに陥ってしまい…というのが大まかなプロット。
話の前半はそれなりのサクセス・ストーリーなんだけど爽快感などはまるでなく、レストランのメニューも読めないような選手が異国のマウンドに立つことの壮絶な孤独感がうまく描かれている(全体的に撮影が巧い)。成績が出せなければ即刻で解雇される環境のなか、周囲の人間とろくに意思疎通もできずにプレッシャーに押しつぶされていくシュガーの姿が哀愁を誘っていた。
そしてシュガーやその代わりのピッチャーがどれだけ活躍したとしても所詮はマイナー・リーグでの話であるわけで、アメリカの野球界の選手層がどれだけ分厚いかを実感させてくれる映画であった。前に「フープ・ドリームス」を観たときもNBAの選手層の厚さに驚いたけど、メジャー・リーグの場合は海外にも太いパイプを持っているぶんさらに選手の層は厚いんじゃないかな。故郷にいてもろくな職につけないなか、アメリカン・ドリームを夢見てアメリカにやってくる選手たちは数多いんだろうけど、そのなかで大成できるのは本当にごく限られた一部なんだろうな。