「ALL-STAR SUPERMAN」鑑賞


DCコミックスの新作アニメーション映画。グラント・モリソンとフランク・クワイトリーによるミニ・シリーズを映像化したもので、原作はスーパーマン作品としては数十年に1度の傑作と言われるほど高い評価を得ているんだよな。

ストーリーは既存のコンティニュイティ—と関係のない独自の設定になっていて、宿敵レックス・ルーサーの策略により大量の太陽エネルギーを浴びたスーパーマンは力が増大したものの体の細胞が飽和状態となって炸裂を続けており、やがてそれが自らの死に至ることを知る。死が迫っていることを知ったスーパーマンは、この世からいなくなる前に自分に課せられた課題を解決していこうとするのだが…というような話。原作のストーリーをうまく拾ってはいるんだけど、ビザーロ・ワールドでの冒険やジョナサン・ケントの死などといったエピソードは省かれている。個人的にはユニバースQとか飛び降り自殺を阻止する話とかの細かいところも含めて欲しかったんだけど、まあ無理か。

原作は話の展開が比較的ゆっくりしていて、それがモリソンのトリッピーな話とクワイトリーの夢想的なアートにうまく合っていたんだけど、アニメーションでは各エピソードが凝縮されて並べられている感じで、どことなくせわしない感じになってしまったのは残念。原作を読んでないと意味が分かりにくいシーンが多々あるかも。まあ原作自体もコミックスに詳しくないと分からないマイナーなキャラがいろいろ出てたんですが。暴君太陽ソラリスとか。

あと絵柄は原作のアートと大幅に違っていて、従来のDCのアニメーション作品のスタイルを踏襲したものになっている。フランク・クワイトリーのアートって一見するとすごくクセがあるんだけど、その奇抜なキャラクターデザインや宙に浮いているような感じのスタイルはとても好きなので、もうちょっと原作に近い絵柄にしても良かったかと思う。なお原作が高い評価を得たのは、万能の存在であるスーパーマンを非常にリラックスした大人のキャラクターとして描いたことで、変に悩んだりせずどんな善行も厭わない姿が共感を呼んだわけだが、その部分はこのアニメーションでもうまく描かれていたと思う。

ちなみにこの作品には悲しい話が1つあって、脚本を書いたドウェイン・マクダフィーが手術後の合併症のため、よりによってこの作品の発売日に亡くなってしまったそうな。マクダフィーといえばマイルストーン・メディアという出版社を立ち上げて多くのマイノリティーのヒーローを生み出すことに貢献したほか、最近ではアニメーションのライターとして「ジャスティス・リーグ」などの優れたエピソードを担当していた人だけに、その早すぎる死が悔やまれるのです。