ついに出てきたLOEG最終章。当初の予定からどれだけ出版が遅れたかはタイトルを見れば明らかですな。
2009年において「リーグ」は解散状態にあり、ミナ・ハーカーは前作の終わりからずっと精神病院に入れられ、アラン・クオーターメインは再びヤク中になってホームレスに身を落とし、オーランドーは中東の戦地において生ける殺戮機械と化していた。そして彼らが阻止するはずだったアンチクライストはすでに誕生してしまっていた。これについてプロスペローから叱責されたオーランドーは40年ぶりにミナを見つけ出し、2人はアンドリュー・ノートンの助言を受けて北の魔法学校に向かうのだが…というような展開。
毎度のことながら当時の文化に関するリファレンスがてんこ盛りの内容になっているわけだが、ほぼ現在が舞台になっているだけに従来の話よりも分かりやすいネタが多かったような?「ハリー・ポッター」やジェームズ・ボンドなどといった明確な元ネタなどに加え、マルコム・タッカーやドクター・フーの面々といったブリティッシュな人たちのほか、意外とアメリカンなネタも盛り込まれていた。まさかアラン・ムーアのストーリーにおいて「バーン・ノーティス」や「30ロック」などが言及されるとは思ってもいなかったよ。また「リーグ」にしては珍しく、実在の人物(ジョニー・デップやアミン大統領)への言及がチラホラあったような。
また今までの話に比べてムーアのメッセージが強く打ち出されており、それは「現代における文化は貧相なものになってしまった」ということ。人々はビクトリア王朝時代のように貧しくなり、当時よりも希望がなく、そこから生み出される文化は弱々しいものばかりであり、それが「リーグ」の世界や魔法の世界の荒廃として反映されているのだという。そしてアンチクライストを倒して生き残るのは現代人ではなく、少なくとも60年代以前から活躍していた女性たちであり、彼を倒しても万事よしになるわけではないことがラストで示唆されている。
このムーアの厭世的なメッセージが少し鼻につくところもあるし、ネモ船長の子孫がほとんど話に絡まなかったり、肝心のアンチクライストが意外と弱い(世界に破滅をもたらす規模では火星人たちの比にもならない)といった不満もあるものの、これによって「リーグ」の長い歴史がついに最終章を迎えたことを考えると感慨深いものがありますな。とはいえこれで「リーグ」の話が終わったわけではなく、「Nemo: Heart Of Ice」などといった外伝が早くも年末に出るらしいので(ホントかよ)、今後さらに「リーグ」の世界が掘り下げられていくことに期待しましょう。
I’m gone to tell my little brother, that he should also
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