「THE AMERICANS」鑑賞


FXの新作シリーズ。プロデューサーに「Justified」のグラハム・ヨストが名を連ねていて、第1話の監督は「Warrior」(日本公開まだ?)のギャビン・オコナー。

舞台となるのは1981年のアメリカ。フィリップとエリザベスは一見すると普通の夫婦だったが、実は2人とも60年代にソビエトから送り込まれたエージェントであり、その事実を2人の子供たちにも隠しながら、クレムリンからの指令を受けてスパイ行為を働いていた。しかし長年のアメリカ暮らしにおいて彼らの忠誠心が揺らぐなか、レーガン政権はスパイのあぶり出しに力を入れ始め、さらに彼らの近所にFBIのエージェントが引っ越してきて…というプロット。

ソ連のエージェントは当然のごとく銃もケンカも強くておまけに床上手で、誘拐してきた要人を車のトランクに閉じ込めたまま平穏な生活を子供たちの前で送ろうとする設定はまるでコメディのようですが、内容はあくまでも真面目なサスペンスになっている。二重生活を送るストレスから、フィリップは「いっそ亡命すれば楽じゃね?」と考えたりするものの、もっと祖国に忠実なエリザベスに喝を入れられてます。しかしお互いの本名も知らぬまま夫婦を装ってるのに、子供が2人もいるのってやるこたやってんなあ。

フィリップ役が『ブラザーズ&シスターズ』のマシュー・リースでエリザベスを演じるのがケリ・ラッセル。ラッセルは年取って顔つきがキツくなってきたのでこういうサスペンスも似合うようになったのですが、その一方でフラッシュバックで20年前の姿をそのまま本人に演じさせるのは少し無理があるような。あとロシアでもみんな英語を話してるのはご愛嬌。

米国内のスリーパーエージェントというテーマは「HOMELAND」にも似てるが、過去が舞台なのであちらほどシリアスな印象は受けず、ちょっとソフトな感じ。時代感を出すため例によって80年代のヒット曲が使われてるものの、「The Carrie Diaries」よりもずっと控え目になっている。あと第1話は夜のシーンが多いのだが画面が暗くて話が分かりづらい気がしたのは俺だけ?

斬新な題材をもった、うまく作られたサスペンスという感じなので「HOMELAND」や「MAD MEN」くらいの評判になって欲しい番組。

「Searching for Sugar Man」鑑賞


邦題は「シュガーマン 奇跡に愛された男」になるはず。今年のアカデミー賞にもノミネートされてるドキュメンタリー。

70年代に社会性の強いアルバムを2枚出したシンガー・ソングライターの(シクスト・)ロドリゲスを追ったもので、デトロイトで肉体労働をしながらクラブで歌っていたロドリゲスは地元のプロデューサーに見いだされてアルバムを発表し、多くの期待が寄せられていたもののアメリカやイギリスではまったく売れず、彼はレーベルから落とされてしまう。しかしその後2枚目のアルバム「Cold Fact」が南アフリカに渡り、アパルトヘイトに反発していたアフリカーンの若者たちのあいだでその歌詞が共感を呼び、ラジオ局では放送禁止になっていたにも関わらず彼の曲は南アフリカで広く知れ渡っていく。しかし肝心のロドリゲス本人は表舞台から完全に姿を消しており、ステージで焼身自殺をしたとか、銃で頭を撃ち抜いたという伝説がまことしなやかに語られているほどであった。果たして彼の身に何があったのか?疑問に思った南アフリカの音楽ジャーナリストは、彼の曲の歌詞にあった僅かな手がかりをもとにしてロドリゲスの消息を追っていくのだが…というようなプロット。

トレーラーを観れば明らかなのでネタバレにもならないと思うが、ロドリゲスは健在でして、デトロイトでひっそりと暮らしていたのを「発見」されて南アフリカで1998年にツアーを行ったところ熱狂的に迎えられ、本国アメリカでもこのドキュメンタリーのおかげでやっと多くの人が知ることになったという次第。ただしこのドキュメンタリーでは途中までロドリゲスの消息を明かさず、ミステリー仕立てにしているのが巧いな。犯罪映画っぽい作りにしてた「マン・オン・ワイヤー」に通じるものがありますね。

またアパルトヘイト時代の南アフリカの若者文化にも多分に言及しており、国際的に隔離された文化のなかで多くのことが検閲を受けており、ロドリゲスのアルバムを通じて若者が反体制のカルチャーに始めて触れたとか、ラジオ局では放送禁止の曲の部分がレコード盤に傷が付けられて再生できないようになっていたなどという話が興味深い。なお彼の曲はアパルトヘイトに反対する白人の若者たちに指示され、彼の90年代のコンサートの客もほぼ全員が白人なのだが、黒人たちのあいだで彼がどう受け取られていたのかも知りたかったな。

個人的にはこの映画を観るまでロドリゲスの曲を全く聴いたことがなかったのだけど、艶のある声で社会問題を詩的に歌った曲の数々はどれも素晴らしい。声の質はボブ・ディランというよりディオンに似ているような?人気の再燃により今年のコーチェラやグラストンベリーにも出演するようです。

ロドリゲスが発見されたあとの展開が失速気味になることは否めないが、苦労人が報われるという意味で微笑ましい内容のドキュメンタリーになっている。「アンヴィル」とかが好きな人は観て損しないと思う。

「THE FOLLOWING」鑑賞


ケヴィン・ベーコン様がベーコン指数のさらなる拡大のために地上波TVシリーズへ降臨されたのだよ。原案は変態ケヴィン・ウィリアムソン。

若き女性を10人以上も殺害したジョー・キャロル教授が刑務所より脱獄。10年前に彼を逮捕したFBIエージェントのハーディはその際に負ったトラウマのため一線を退いていたが、キャロルを最も良く知る男として現場に復帰することになる。キャロルが殺害しそこねた最後の被害者を中心に捜査を進めていくハーディたちだったが、キャロルは刑務所にいるあいだにそのカリスマ性を活かして数多くの信者を世間に生み出していた。こうして彼のフォロワーたちによるコピーキャット殺人が行われるようになり…というプロット。

地上波番組にしてはずいぶん過激な殺人シーンなどがあるのだが、それ以前にこのネタで何エピソードも引っ張るのは相当厳しいんじゃないのか?キャロル教授よりもそのフォロワーたちによる事件がメインになっていくようなんだけど、あまりにもフォロワーたちがキャロルを盲信しすぎていてリアリティに欠けるんだよな。『男性のフォロワー2人がゲイのふりをして、何年も前から被害者を狙っていた』なんて設定が通ってしまうなら、もう何でもありではないかと。例えばBBCの「ルーサー」みたいに6話ほどのなかで刑事と犯罪者の駆け引きが行われていくのなら緊迫感も最後まで途切れないだろうけど、これで何エピソードも話を続けるのは難しいだろうな。

主人公のハーディは仏頂面で同僚に協力せずに単独行動に走りがちで魅力的とは言い難いし、キャロルも「エドガー・アラン・ポーに憧れ、殺人をアートとして考えている」なんて設定があまりにも典型的というか。ケヴィン・ウィリアムソンは「スクリーム」ではホラー映画の決まり事をうまくパスティーシュにしてたけど、こちらは単に「羊たちの沈黙」の劣化コピーのようにしか思えんのよね。

とはいえケヴィン・ベーコンが主演というのはかなり注目度が高いわけで、それに脚本が見合っていないのはどうも勿体ないな。対するキャロル教授を演じるのはジェームズ・ピュアフォイだが、気のいいオッサンといった感じで凄みはなし。もっと個性的な俳優を使えばよかったのに。あと「Justiied」で薄幸な元妻を演じてたナタリー・ジーがここでも薄幸な元妻を演じてます。

FXとかのケーブル局で13話くらいのシリーズにしてれば、もっと面白くなりそうなんだが…。

「THE CARRIE DIARIES」鑑賞


暴走する超能力を持った少女キャリーが、日々受ける虐待について恨みを込めて日記に記していく物語…などでは当然なく、邦訳もあるキャンディス ブシュネルの小説を原作にした「セックス・アンド・ザ・シティ」の前日譚で、放送局はHBOではなくティーン大好きのThe CW。

舞台は80年代のロードアイランド。高校生のキャリーは母親を亡くしたばかりの少女で、父親と妹とともに新しい生活に慣れようとしていた。学校ではイカした転校生といい関係になるものの、恋人にまで発展できずやきもきするばかり。そんな彼女を励まそうと、父親は彼女をニューヨークでインターンとして働かせることに。こうして憧れのニューヨークに行けることになったキャリーは、刺激的な人たちと出会ってナウいシティライフの世界へ足を踏み入れるのでした…というプロット。

80年代の世界ということもあり、「SATC」よりもジョン・ヒューズの映画を観てるような気になってくる番組。ホームセンターで売ってるベスト盤のごとくニュー・オーダーやサイケデリック・ファーズをはじめとした80年代の曲が背後で流れまくってるのですが、そこまで80年代を強調しなくてもねえ。番組の対象年齢層は40代とかじゃなく、いまのティーンエイジャーだよね?なお地元の高校生活の描写は、普通のThe CW的なものといった感じ。トレンディな主人公よりもゴスな妹のほうに共感できるのは言うまでもない。

主人公のキャリーを演じるのは「ソウル・サーファー」のアナソフィア・ロブ。名前からしてThe CWっぽいよな。彼女がニューヨークで出会う「インタビュー」誌の編集者を「ドクター・フー」のマーサことフリーマ・アジマンが演じているのが個人的にはいちばんの注目点でして、彼女はこれをきっかけにアメリカでもブレイクしてほしいところです。

日記がテーマの番組の常として、主人公のナレーションが延々と続くのはちょっと興醒め。まあ自分のような視聴者を対象にしている番組でないことは承知してるのですが。とはいえ「SATC」のようなシリーズを期待してると肩すかしをくらうと思う。批評家の評判はぼちぼちだったようだけど、どれだけの視聴率を稼ぐことができるかな。

「DO NO HARM」鑑賞


「ジキルとハイド」をベースにしたNBCの新作シリーズ。

ジェイソン・コールは有能な神経外科医だったが、彼は暗い秘密を抱えていた。実は彼は二重人格者であり、毎晩8時25分になると性格が一変し、イアン・プライスという凶暴な人格にとって代わられてしまうのだった。ここ数年は試薬を投与することでイアンを抑え込んでいたジェイソンだったが、やがて薬が効かなくなってイアンが再び出現するようになり、彼はジェイソンの生活をぶち壊そうと画策するのだった…というプロット。

コンセプトは分かるんだけど、何をしたいのかがよく分からん番組。医療ドラマに猟奇サスペンスっぽい味付けをしたつもりなんだろうけど、その2つがぜんぜん噛み合っていないというか。そもそもこういうヤバい秘密を抱えている主人公が医者をしているというのが現実味ゼロなわけで、イアンがジェイソンを装って手術をメチャクチャにしようとする姿などは見ていてかなり不快。また患者を虐待していた夫(しかも警官)をボコボコにして虐待を止めさせる展開があるんだけど、ふつう警官にそんなことしたら発端は何であれ裁判沙汰になるよなあ。主人公は人里離れた山奥にでも引きこもるべきで、2つの人格の攻防を毎週観たいという気持ちにはならないのであります。

ジェイソンがイアンに「変身」するシーンは眼のアップになったりして「超人ハルク」を彷彿とさせるのですが、あっちはハルクの登場が大きな見せ場だったし、流れ者のペーソスなどもあったけど、この番組は主人公に共感できるところが皆無。主人公を演じるスティーヴン・パスクールって「シックス・フィート・アンダー」などに出てた人らしい。他にも「フリークス学園」のサム・レヴィンとかナベQことジョン・キャロル・リンチなどが出演してるが、みんなもっといい番組に出れるよなあ。

2重人格を扱った番組なら、速攻で打ち切られた「My Own Worst Enemy」のほうがまだ面白かったんじゃないの、と思わせるような作品。