「BATWOMAN」鑑賞

THE CWの新作シリーズで、アローバースに加わる新たなスーパーヒーローですな。

舞台は当然ながらゴッサム・シティだが、バットマンは3年前から行方不明になっているという設定。ブルース・ウェインの従姉妹であるケイト・ケインはかつては軍の兵士だったが、レズビアンであるという理由により除隊を命じられ、遠く離れた地で密かに訓練を続けていた。だがかつては彼女の恋人であり、ケイトの父親が運営する警備会社の社員であるソフィーが暴漢に誘拐されたためにケイトはゴッサムへと帰ってくる。そこでブルースの遺したバットマンの基地を発見した彼女は、バットマンのコスチュームを身にまとってソフィーの救出に向かうが、その陰には死んだはずのケイトの妹がいた…というあらすじ。

コミックでは10年くらい前に登場したケイト・ケイン版のバットウーマン、日本ではそんなに馴染みはないかもしれないけどアメリカでは人気キャラクターですね。TVシリーズ版のオリジンも大体はコミックを踏襲している感じかな。父親はもっとガチガチの軍隊オヤジだったけど。

バットウーマンの宿敵となる、双子の妹のアリス(上)は子供のときに母親とケイトとともに橋の上で交通事故にあって、バットマンがケーブル張って助けようとしたものの、なぜかケーブルが切れて母親とアリスは橋の下に落ちていったが、どうもアリスは生きていたという設定みたい。昼間に突然現れて、救助に失敗するバットマンがなんかとてもカッコ悪いぞ。まあ事故の真相はこれから明かされていくのだろうけど。

バットマンがいなくなったゴッサムシティ、という設定は短命に終わったTVシリーズ「BIRDS OF PREY」と同じなのだが、「スーパーガール」にスーパーマンが出てきたように、いずれこっちにもバットマンが登場するのだろうか。バットマンが3年間行方不明、ということは当然ブルース・ウェインも同じあいだ不明なので、ブルースってバットマンじゃね?と思う人がいそうなものだけど、そうでもないらしい。バットマンの基地や装備はルシアスの息子のルーク・フォックスが管理していて、彼もいずれコスチュームをまとってバットウィングになるのかしらん。

第1話ではケイトがバットマンのコスチュームを着るだけで(よくサイズが合ったな)、コミックでおなじみの赤毛のコスチュームはなし。TVシリーズに映画並みのアクションを期待するのは酷だろうけど、「アロー」とかに比べてもアクションシーンが稚拙で、なんか安っぽい気がするな…原作だともっとモラル的にグレーなキャラクターだった(バットマンと必ずしも気が合うわけでは無い)と思うので、そこらへんを強調する必要があるのでは。

ケイトを演じるのはルビー・ローズ姐さん。まあ適役ですな。素顔でビシバシ戦った方がカッコ良さそうな気もするが。スタントで怪我して緊急手術を受けたりと、撮影は大変だそうです。彼女自身もレズビアンだけど、レズビアンが主役のスーパーヒーロー番組はこれが初だそうな。その彼女の父親役にダグレイ・スコット。個人的にはやはり彼って演技が下手だと思うのですよね。いつも仏頂面で硬い演技しかできないというか。原作だとケイトと父親の関係が重要な要素なわけで、これからのストーリーにどれだけ貢献できるのだろう。あとなぜかMSNBCのキャスターであるレイチェル・マドウが声だけ出演してます。

第1話を見た限りではそんなに面白いとも思わなかったけど、主役はいい役者使ってるのだし、これから話をどう練り上げていくかが成功のポイントですかね。

「ジョーカー」鑑賞

まだ公開したばかりなので感想をざっと。以下はネタバレ注意。

  • 話がどこにたどり着くのかは最初から分かってしまっているので、ストーリー自体に驚きなどはない。ホアキン・フェニックス演じる主人公の変化の過程を楽しむ作品かと。
  • 「タクシー・ドライバー」や「キング・オブ・コメディ」そといったスコセッシ作品のパスティーシュと呼ばれ、確かに70年代感を強く出している一方で、内容は非常に現代的というか、貧富の格差とかインセル問題といった現代社会にはびこる欲求不満をうまく反映させていた。観てる最中に香港でのデモやアノニマスのことを連想した人は多いはず。
  • 音楽はゲイリー・グリッターの「Rock And Roll (Part 2)」といえば野球の試合とかでの定番曲だったかと思うが、グリッターが児童ポルノで捕まってからは、この映画のように「悪人のテーマ」として使われるようになってしまいましたね。
  • ゴッサム・シティの風俗街では「Ace In The Hole」というポルノ映画をやっているらしく、「Zorro The Gay Blade」もタイトルからてっきりそっち系の映画だと思って、ウェイン家は子連れでそんな映画を観てるのか?と驚きましたが、れっきとした80年代のゾロ映画だったのですね。
  • ボブ・ケインとビル・フィンガーに加えて、ジェリー・ロビンソンがジョーカーのクリエイターとしてクレジットされたのは初かな?
  • コミック作家のクレジットにブライアン・ボランドが載っているけどアラン・ムーアはいない。まあまたムーアが断ったんだろう。
  • ブライアン・タイリー・ヘンリーは最近いろんなところで見かけるな。彼よりも上位にクレジットされているマーク・マロンは3分くらいしか出演してなかったぞ。
  • ホアキン・フェニックスの演技は凄かったものの、やはりジョーカーというのは対になるバットマンがいてこそ映えるキャラクターなので、そういう意味では個人的にはヒース・レジャーのほうが「らしい」ジョーカーだったと思うのです。

「THE DAY SHALL COME」鑑賞

FOUR LIONS」に続くクリス・モリスの監督作がしれっと出ていたので早速鑑賞。

舞台はマイアミ。モーゼス・アル・シャバズはアヒルを通して神が自分に語りかけてきたという妄想を抱いた男性で、妻子や友人などを集めてスター・オブ・シックスという数名ほどの教団を作り、農園を営みながら細々と活動を続けていた。彼の教えは白人社会の転覆を訴える一方で、銃器の使用を禁じるという決して暴力的なものではなかったが、教団の行いはFBIの知るところとなる。テロを防止していることをアピールしたいFBIは、モーゼスの教団をテロ組織にでっち上げるべく、イスラム国のメンバーが資金と武器を提供したがっているという話をモーゼスに持っていく。銃の受け取りに難色を示したモーゼスだが、農園の立ち退きを迫られて金に困っていたため、この話を受け入れることになる。しかしFBIとマイアミ市警の主導権争いなども絡んで、話はあらぬ方向に展開していく…というあらすじ。

テーマ的には「FOUR LIONS」によく似ていて、あちらは頭の弱いテロリストたちの話だったのに対し、こちらは間抜けなFBIの話といったところ。ただしこの映画では本当のテロリストが出てこないというのがポイントなわけだが。愉快なドタバタを描いているようで、終わり方がメランコリックなのも前作と同様。

ポスターに書かれている「100の実話に基づいた物語」という文言は映画の冒頭にも出てくるのだが、FBIがテロリストをでっちあげているという実例はモリスが調査をしているうちに何百件も目にしたものらしい。

映画のプロットによく似ているのがマイアミでカルト教団(イスラム教徒ですらない)が逮捕されたLiberty City Sevenと呼ばれる事件で、あちらはFBIが偽のアルカイダになりすまして、シカゴでのテロを持ちかけたものなのだとか。教団のメンバーを起訴する確固とした証拠が見つからず何度も裁判が行われたようで、それでも結局は何年にも渡る禁固刑が下されたらしい。

これに合わせてクリス・モリスのインタビュー映像を観てみたけど、FBIは黒人をテロリストにでっちあげている一方で、白人至上主義団体は標的にしない、と糾弾しているのが印象的であった。ヘイトデモは警察が守る一方で、反政府デモは厳しく取り締まる日本にも似てますね。

映画の出来としては、モーゼスが頭がちょっとおかしい人として描かれ、FBIも目的のためなら手段を選ばない人たちとして登場するので、誰にも感情移入できないのがちょっと辛かったかな。あと「FOUR LIONS」を先に観ているとインパクトが弱まると思う。

出演は、モーゼスを最初に見つけながらも、あとで良心の呵責を感じるFBI捜査官にアナ・ケンドリック。あとは知った顔ではコメディアンのジム・ガフィガンがチョイ役で出ています。モーゼスを演じるのはほぼ新人のまーしゃんと・デイビスという役者だが、「FOUR LIONS」のあとにリズ・アーメッドがブレイクしたように、彼の名前を今後いろいろ見かけることになるかもしれない。

まあクセのある映画であることは間違いないのだが、いろいろ考えさせられる風刺映画ではありますので、「FOUR LIONS」およびアーマンド・イアヌーチの「IN THE LOOP」とともに、いずれ日本でも公開されることに期待。

新作シットコム雑感

アメリカでは秋の新作ドラマシーズンが始まったようで、新しいシットコムの第1話をいくつか観たので感想を書きます:

・SUNNYSIDE (NBC)

素行不良で落選したクイーンズの元議員が、アメリカの市民権テストを通過するために勉強する移民たちを助けることになるというもの。落ちこぼれの教師と型破りな生徒たち、という構図が「COMMUNITY」っぽいな。オバマ政権でスタッフとして働いていたカル・ペンが主演&脚本ということもあり、ちょっと説教くさい箇所がなくもないが、多様な人種の役者たちが揃って話を盛り上げてるのは応援したいところです。カメラが微妙にグラグラ揺れてるのが気になったが。

・PERFECT HARMONY (NBC)

これも「COMMUNITY」っぽい内容。妻を亡くして自暴自棄になった元音楽教授が、町の合唱団を指揮することになる物語。さまざまなバックグラウンドを抱えた男女が、歌うことで力を合わせていく…って「グリー」やんけ。主演はブラッドリー・ウイットフォードで、おれこの人はシリアスな役のほうが似合うと思うのだが…?

・CAROL’S SECOND ACT (CBS)

教師だった女性がセカンド・キャリアとして医師になることを決意し、自分の子供くらいに若い他のインターンたちとともに奮闘するという内容。最近は少なくなった、ラフトラックの入りマルチカメラのシットコムで、このスタイルが好きな人は気にいるんじゃないですか。主演は「ザ・ミドル」のパトリシア・ヒートン。白髪のカイル・マクラクランが間の抜けたベテラン医師を演じてるのですが、「ツイン・ピークス」の印象が強いのでなんか不気味に見える。

・MIXED-ISH (ABC)

日本では知名度が皆無だがアメリカでは大きな人気を誇る、黒人家庭のコメディ「BLACK-ISH」のなんと2つめのスピンオフ。トレイシー・エリス・ロス演じるママさんの少女時代を描いた内容で、コミューン育ちの少女が一般の学校に通うことになり、白人と黒人の混血である自分のアイデンティティに悩むというもの。80年代には混血の子が少なかったことが強調されるのだが、そうだったっけ?ママさんのナレーションも入りまくりで、なんか説教くさい「それいけ!ゴールドバーグ家」のような出来。

・THE UNICORN (CBS)

妻を亡くして娘ふたりを単身で育てている男性が、周囲に勧められてデートアプリに登録してみたところ、家事ができることなどが評価されて大モテに…という話。問題は主演がウォルトン・ゴギンズということでして、あのひと絶対に悪人顔だと思うのですが、そんなにモテるのでしょうか?ロブ・コドリーも共演してるよ。

「STUMPTOWN」鑑賞

ABCの新作シリーズ。おれ原作のことを知らなかったのだが、「バットマン」などで知られるグレッグ・ルッカによるオニ・プレス刊のコミックの映像化なのですね。

題名の「スタンプタウン」とはオレゴン州ポートランドの愛称らしくて、舞台も当然ながらそこ。主人公のデックス・パリオスはアフガン帰りの元兵士で、PTSDに悩まされつつも、ダウン症の弟の面倒を見ながら暮らしていた。しかし彼女はギャンブル狂でもあり、アメリカ原住民が経営するカジノでの借金を帳消しにする代わりに、行方不明になったカジノのオーナーの娘を探すように依頼される。持ち前の推理力を活かして、オーナーの娘が恋人とモーテルに潜んでいることを突き止めたデックスだが、目の前で娘を別の男たちに誘拐されてしまい…というあらすじ。

まあ典型的な地上波ネットワークの刑事番組、という出来ではあるのだが、デックスが車のトランクに閉じ込められて拉致される冒頭から、テンポが良くて観ていて飽きない内容にはなっている。デックスのオンボロ車からクラシック・ロックが流れまくってるのも往年のコップショーっぽいというか。ただ第1話のせいか登場人物を少し多めに出しすぎて、せわしない展開になっているような?途中の高級車を盗むシーンの必要性が分からなかった。

またデックスはあくまでも普通の市民という立場なので、悪人と対峙しても銃を撃ったり逮捕できるわけではないのが、観ていてちょっとまどろっこしく感じるかも。いちおう警察には大目に見られているようなので、今後は私立探偵ものっぽい内容になっていくのかな。あとウィキペディア情報では原作のデックスはバイセクシュアルらしいですが、こちらではその要素は完全に無くなってました。

デックスを演じるのはマリア・ヒル長官ことコビー・スマルダーズ。テレビだと最近までシットコムに出てましたが、アクション映画の人というイメージも強いのでタフなデックスに似合ってるのではないでしょうか。彼女の親友のバーテンダー役に「New Girl」のジェイク・ジョンソン、ポートランド市警の刑事役にマイケル・イーリー、その上司役にカムリン・マンハイムなどなど、役者はいいところが揃ってます。

原作もそんなに話数が多くないようだし、テレビ番組として独自の展開を遂げていくのだろうけど、第1話を見た限りではどういう方向性になるのかはよく分からんな。でも悪い作品ではなかったので面白くなることに期待。