「GARDEN STATE」鑑賞

昨年公開され評判の良かった映画「GARDEN STATE」をDVDで観る。監督・脚本・主演を兼ねるのは、NBCの人気シットコム「SCRUBS」の主人公役で知られるザック・ブラフ。「SCRUBS」は未見なので彼の出てる作品を観るのはこれが初めてになる。どうも自伝的な要素が少し入ってるんだとか。 カリフォルニアで売れない役者をやっている主人公が、母親が死んだという知らせをうけ、故郷のニュージャージーに久しぶりに帰ってくることから物語は始まる。旧友たちと再会したのち、サムという名の少女(ナタリー・ポートマン)に出会った彼はサムの自由奔放さに惹かれていき、閉じきっていた心を徐々に開いていくようになる。そして彼は、長年のあいだ口をきかなかった父親ともよりを戻そうとするのだった…というのが大まかな内容。あまりにも簡素すぎる概説だけど、あまり話の展開があるような映画ではないから御勘弁を。旧友たちやサムの家族のエキセントリックな会話を楽しむような作品になっている。

良くも悪くも「自伝的に作った初監督作品」といった感じで、周囲の陽気さに主人公が1人だけついていけない描写とか、彼が精神安定剤を服用していたなんて設定は定番的すぎるきらいもあるが、決して鼻につくようなものではない。

主演のザック・ブラフは無表情で突っ立てることが多い役柄なのであまり印象に残らないけど、ナタリー・ポートマンがサムを生き生きと演じてるのはよかった。この人はお固いお姫様なんかよりも、活発な少女の役のほうがずっと似合ってると思う。そしてそれ以上によかったのが、主人公の悪友を演じるピーター・サースガード。マリファナばかり吸ってる墓堀り人夫なんだけど、無愛想ながら友人のことを気にかける奴という役を好演。あと主人公の父親をイアン・ホルムが怪演してます。

imdbの書き込みなんかを読むと「主人公たちにとても共感できた!」なんてのが多いけど、個人的にはそうでもなかったかな。話がアメリカンすぎるのか、俺が年とりすぎたのか、それとも単に感受性がないだけなのか。ブラフが自ら選曲したというサントラも好評らしいが、あまり俺の趣味には合いませんでした。でも話のツボをきちんと押さえたつくりになっているし、ラストもしんみりした感じで終わるし、デートムービーなんかにはいいんじゃないでしょうか。

主人公が乗り回す、サイドカーつきのバイクがカッコいい。

MOORE SLAMS V FOR VENDETTA MOVIE

主演のナタリー・ポートマンがスキンヘッド姿でカンヌに現れたことで、知名度がグンと上がった感のある「V FOR VENDETTA」だが、原作者のアラン・ムーアが映画の脚本を批判してるらしい。全体主義下のイギリスが舞台の作品なのに、例によってイギリスのことなんか何も知らないハリウッドの連中がトンチンカンな設定を創作しているんだとか。あと製作のジョエル・シルバーが勝手に自分の名前を挙げて宣伝に使ったのにもムカついてるらしい。
ムーアが人の悪口を言うのは決して珍しいことではないが、今までは自分の作品が映画化されても「俺には関係ねーや」的な態度で通してきた彼が、脚本を批判するのは異例のことだ。映画化は大丈夫なんだろうか…? ムーアの作品でも「リーグ・オブ・レジェンド」こと「LEAGUE OF EXTRAORDINARY GENTLEMEN」なんかは原作通りに映画化することは出来っこないと最初から腹をくくっていたので、ジェームズ・ロビンソンがどんなアレンジを加えるかな、という見方ができて結構楽しめた(たぶん、「ウォッチメン」もこんな感じになるだろう)けど、「V」は努力すれば原作通りに映画化できる作品だと思うので、ぜひウォシャウスキー兄弟たちには頑張ってほしい。本当はBBCあたりがミニ・シリーズ化するのが一番いいとは思うけど。
前にも何度か書いたが、どうも過大評価されてる感のある「ウォッチメン」よりも「V」の方が個人的には優れていると思う。初めて読んだ時には、アナーキズムを扱った作品の内容に大きな衝撃をうけたものだ(ムーアのアナーキズム観については、オニオンのインタビューが非常に面白い)。

ちなみにこれに関連して、DCの指図に嫌気がさしたムーアは「EXTRAORDINARY GENTLEMEN」の第3シリーズをDC傘下のワイルドストームではなく、別の出版社から出すことにしたとか。ムーアがDCを徹底的に嫌ってることは周知の事実だったので、こういうことが起きるのは時間の問題だったのかもしれない。しかし「EXTRAORDINARY GENTLEMEN」って第2シリーズの最後でチームが解散(うち2人は死亡)してるんだけど、第3シリーズはどんな展開になるんだろう???

更新停止の予告

カナダで映画ばっかり観てのんびり暮らしてるのはいいんだけれども、いずれは日本に帰ってサラリーマン暮らしを再開せねばなるまい、ということで来月の23日に帰国のフライトを予約しました。 帰国したら職探しやら部屋探しなどで相当ゴタゴタすると思うので、当ブログは不特定期間停止することになるでしょう。実家暮らしではロクにネットに接続できない環境になると思うので、当ブログに対するコメント等ありましたら、今のうちに書いておいてくださいませ。

トロントにいられるのもあと1ヵ月か…。

フライシャー版「スーパーマン」鑑賞

アメコミ・アニメの金字塔として名高い、フライシャー・スタジオ製作のカートゥーン「スーパーマン」全17エピソードをDVDで観る。 これは1941年に製作された古典的シリーズであり、当時としては破格の1話あたり10万ドルという製作費をもって作られたエピソードの数々は、21世紀になってから観ても十分に面白い。公開時はテレビじゃなく劇場で放映したんじゃないかな?
1エピソード10分という短い時間ながら、「あれは鳥か?飛行機か?」というおなじみのフレーズから始まり、最後に「スーパーマン、悪人を逮捕する」といった新聞記事の見出しで終わるまでがスリルとアクションに満ちていて楽しい。マッド・サイエンティストやハイテク強盗団、あるいは自然災害といった様々な脅威にさらされる人々を見て、「これはスーパーマンの出番だな」という決めゼリフとともにスーパーマンに着替えるクラーク・ケントや、特ダネを追うためにいつも危険にさらされるロイス・レーンなどの描写も非常にいい感じ。戦時中に作られた作品ということで、丸メガネに出っ歯の日本人が悪役として登場するのはご愛嬌。

アニメーションの出来も60年以上も前に作られたとは思えないほど滑らかで、口しか動かないような日本の紙芝居アニメとは大違いだ。最近では3次元アニメが主流になってしまって、天下のディズニーも2次元アニメ映画の製作をとりやめたようだけど、人間の微妙な表情なんかは2次元アニメのほうがまだまだ優れてると思うんだよなあ。人物の影を効果的に使ったショットとか、黒煙を吐く船の煙突が火山にオーバーラップする場面転換のシーンなんかはとても斬新に感じられる。あと宮崎駿が「ラピュタ」とかに転用した飛行ロボットをはじめ、メカのデザインがずいぶんカッコいいのもこの作品の特徴か。

せっかくのDVDとはいえ何の特典も付いておらず、映像や音声のクオリティもあまりよくないのは残念だが、歴史的にとても貴重な作品だろう。