フライシャー版「スーパーマン」鑑賞

アメコミ・アニメの金字塔として名高い、フライシャー・スタジオ製作のカートゥーン「スーパーマン」全17エピソードをDVDで観る。 これは1941年に製作された古典的シリーズであり、当時としては破格の1話あたり10万ドルという製作費をもって作られたエピソードの数々は、21世紀になってから観ても十分に面白い。公開時はテレビじゃなく劇場で放映したんじゃないかな?
1エピソード10分という短い時間ながら、「あれは鳥か?飛行機か?」というおなじみのフレーズから始まり、最後に「スーパーマン、悪人を逮捕する」といった新聞記事の見出しで終わるまでがスリルとアクションに満ちていて楽しい。マッド・サイエンティストやハイテク強盗団、あるいは自然災害といった様々な脅威にさらされる人々を見て、「これはスーパーマンの出番だな」という決めゼリフとともにスーパーマンに着替えるクラーク・ケントや、特ダネを追うためにいつも危険にさらされるロイス・レーンなどの描写も非常にいい感じ。戦時中に作られた作品ということで、丸メガネに出っ歯の日本人が悪役として登場するのはご愛嬌。

アニメーションの出来も60年以上も前に作られたとは思えないほど滑らかで、口しか動かないような日本の紙芝居アニメとは大違いだ。最近では3次元アニメが主流になってしまって、天下のディズニーも2次元アニメ映画の製作をとりやめたようだけど、人間の微妙な表情なんかは2次元アニメのほうがまだまだ優れてると思うんだよなあ。人物の影を効果的に使ったショットとか、黒煙を吐く船の煙突が火山にオーバーラップする場面転換のシーンなんかはとても斬新に感じられる。あと宮崎駿が「ラピュタ」とかに転用した飛行ロボットをはじめ、メカのデザインがずいぶんカッコいいのもこの作品の特徴か。

せっかくのDVDとはいえ何の特典も付いておらず、映像や音声のクオリティもあまりよくないのは残念だが、歴史的にとても貴重な作品だろう。

「MARIA FULL OF GRACE」鑑賞

昨年いろいろ話題を呼んだ「MARIA FULL OF GRACE」こと「そして、ひと粒のひかり」をDVDで観る。何すか、この邦題は? 麻薬を詰めた袋を胃の中に何十個も入れ、コロンビアからアメリカへ密輸する「ドラッグ・ミュール」つまり「麻薬ラバ」となるティーンの女の子の物語で、内容は決して明るくない。というかひたすら暗い。

主人公のマリアはコロンビアの町工場で働く少女だが、ろくでもない彼氏のおかげで妊娠してしまう。貧しい家の出身である彼女は妊娠したことを家族に告げることもできず、お金を得るためにドラッグ・ミュールとなってアメリカへ麻薬を運ぶ仕事を引き受けるのだが…。というのが主なストーリー。当然ながら怖そうなお兄さんたちもいろいろ出てきて、麻薬が税関で見つかれば逮捕・麻薬の運送に失敗すれば家族が殺される・麻薬の袋が胃の中で破裂すれば即死、という極限の状態に置かれた少女の姿が淡々と映し出されていく。誤って体外に出た袋をまた飲み込む、なんてシーンもあります。

主演のカタリーナ・サンディノ・モレノはこれが映画デビュー作にしてアカデミー主演女優賞にノミネートされるほどの評価を得たわけだが、ニューヨークに1人でやってきて、右も左も分からない状態で不安感に苛まれながらも、どうにか道を切り開いていこうとする女性を好演している。監督/脚本のジョシュア・マーストンもこれが実質的なデビュー作であり、今後もこの2人の活躍が期待される。

こないだニューヨークに行ったとき「相変わらず皆がスペイン語しゃべってんなあ…」と思ったけど、そうした人々はこの映画の登場人物のような、貧しいがために故郷を捨ててアメリカにやってきた、という人が大半なんだろう。少しショッキングなラストも含めて、いろいろ考えさせられる映画だった。

2005年度シーズン 番組表

アメリカの今秋のプライムタイムのスケジュールが発表されていた。 前にも書いたが、人気のある番組は惰性で続いてるようなものが多く、それに新参の番組が戦いを挑む、といったところか。「YES, DEAR」とか「CHARMED」とか、まだやってんのって感じ。個人的には「ARRESTED DEVELOPMENT」が打ち切られなかったのが嬉しい。

新参の番組は内容の出来にかかわらず、半数以上が視聴率争いに負けて脱落していくだろうからあまり詳しく述べないが、ジェイソン・リー主演のコメディ「MY NAME IS EARL」はちょっと興味あるかな。

かつてはゴキブリのごとく数を増やしていたリアリティー番組も、今年はちょっと数が減ったみたいなのは歓迎すべきことだろう。素人参加型番組なんてのはプライムタイムでなくケーブル局でやってればいいもんだと思うので。しかし「THE APPRENTICE: MARTHA STEWART」って何なんだよ。

昔は新しいスケジュールが発表されるたびに興奮してたものだけど、TVドラマなんてシーズン1の半ばあたり、つまり放送開始時にそこそこの視聴率を獲得して、一番最初の「首切り」を逃れ、脚本家やキャストが番組に慣れてくるころから面白くなるわけで、5月の段階でいろいろ杞憂するのはやめました。

もっとも今秋にはカナダにいないだろうけど。

「エンタープライズ」最終回

NY旅行中に録画しておいた「スタートレック:エンタープライズ」の最終話を観る。「新スタートレック(TNG)」や「ディープ・スペース・ナイン」、「ヴォイジャー」がどれもシーズン7まで放送されたのに対し、第4シーズンで打ち切りという不運な結末を迎えたわけだが、スラッシュドットなんかの書き込みを見る限りでは今シーズンの出来はずいぶん向上したらしいし、個人的にも「ヴォイジャー」なんぞよりはずっと優れたシリーズだったと思う。「BATTLESTAR GALACTICA」が大ヒットしていることを考えれば、SF番組の人気が衰えたというよりも、単に「スタートレック」というブランドが視聴者に飽きられたということになるのだろうか。

そしてその最終回だが、これがまたお粗末な出来で、エンタープライズ号が退役するまでの数日間の様子を「TNG」のライカーとトロイがホロデッキで鑑賞する、という変な仕掛けになっていた。ラストに豪華ゲストを持ってきて華を飾りたかったのだろうけど、逆に話の主役が「エンタープライズ」のキャストなのかライカーたちなのか中途半端で分かりにくく、アーチャーたちが「ただのホログラム」として軽んじられてるようなところがあったのが気にくわなかった。それに今までのシリーズはどれも最終話が2時間だったのに今回は1時間だけだったため、ずいぶん話の展開が急ぎ足になり、途中で重要なクルーが死ぬってのに何の余韻もなしに話は進み、しまいには最後に主人公がスピーチをする直前で終わるという、実にあっけないというか、後味の悪い終わり方を迎えたと思う。 おまけにこの話に出てくるライカーとトロイは「TNG」第7シーズンのエピソード「THE PEGASUS」の頃の2人、という設定になっているものの、当然演じている役者は当時より10年近く老けてるわけだから違和感がありありで、いい年したオバサンがセーラー服を着て女子高生と偽ってアダルトビデオに出てるような、すごい場違いな雰囲気が漂っているのが非常に無様であった。

この話の脚本を書いたのは、このシリーズの原案者でもあるリック・バーマンとブラノン・ブラガだが、この2人って「スタートレック」をつまらないものにした、ということで多くのファンから糾弾されているわけで、確かにこの話を見る限りではクレバーなものを書こうとして見事に失敗して墜落炎上したという、ここ最近の彼らのパターンからまるで抜け出せてないと思う。

しかしここまで書いといて何だが、個人的にはこの話を観てもあまり怒りはしなかった。話の舞台が今までのエピソードの10年後という、一種の「外伝」もしくは「パラレルワールド」的な扱いになっていることや、この1つ前のエピソード(前後編)の方がむしろ最終話によく似合う、しんみりした終わり方をしていたためかもしれない。あるいはシリーズ打ち切りがあまりにもファンの間で話題になってしまったため、打ち切り発表後のエピソードがどれも「プチ最終話」のように感じられたからだろうか。

「ギャラクティカ」が不死鳥のごとく甦ったように、「スタートレック」がまたテレビや劇場において復活する日はそんなに遠くはないだろう。パラマウントのドル箱ですからね。ただその際は、バーマン&ブラガではない人々が舞台裏にいることを祈るばかりである。

「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」鑑賞

観てきました。平日の昼間だってのに会場は満席状態で、やはり若者が圧倒的に多かったです。ネタバレは極力避けるつもりですが、以下の文章にはそれなりにネタバレが含まれてますのでご注意ください。 今回の作品で「スター・ウォーズ」 の壮大なサーガがついに幕を閉じることになったわけだが、既に公開されたストーリーの「過去」を描くことって、「あのキャラクターの出生の秘密はこうだった!」などといった新鮮な驚きをファンに与えてくれる一方、既存のストーリーにつながるような内容にしていかなければならないわけで、それが逆に物語の展開を制限してしまうデメリットが生じていたと思う。
特に「エピソード3」ともなると前に2作、後ろに3作を抱え、新旧3部作の橋渡しの役割を務めざるを得ないために、どことなくせっつかれたような、少しこじつけに近いような感じのする部分があったものの、全体的な出来としては「エピソード1」&「エピソード2」をはるかに凌ぐ良作となっている。
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