マクドナルドのメニューを30日間、朝昼晩食べ続けたらどうなるかという実験に、果敢にも(?)挑戦した主人公のドキュメンタリー。どうしてもその発想の奇抜さだけが注目されてしまうが、いわゆるリアリティー番組のような興味本位の内容でなく、ファーストフードがアメリカおよび世界に与える大きな影響をまっとうに追求した良作になっている。
正直なところ、実験そのものはあまり面白くなかった。確かに必要摂取量の何倍ものカロリーや砂糖をとり続けた主人公の体調はどんどん悪くなっていくのだけど、いくらマクドナルドが体に悪いからって毒を食べてるわけではないから、そんなに極端に悪化したようには見えないのだ。実験の前では完全な健康体だったので血液検査の数値などは実験前に比べて何倍にもなったものの、数値そのものは酒で体を壊した場合と大差ないらしい。それにスーパーサイズのメニューを食べ続けたわけではない(カウンターで勧められたら食べる)ことや、部屋でゴロゴロしてたのではなく取材のためにアメリカ各地を旅していたことなどは、期待していた内容とちょっと違った。
むしろこの作品が優れている点は、さまざまな取材やデータを通じて、ファーストフードがいかにアメリカ人を肥満にし、健康管理や医療システムに深刻な影響を与えているかを的確に突いているところにあるだろう。コスト削減のために学校でジャンクフードを食べさせる給食機関や、体育のクラスを減らす(無くす)ことによって子供たちに運動をさせない教育システムなどを追求しているのは興味深い。別にマクドナルドだけを糾弾しなくてもいいんじゃないかという意見もあるようだけど、数あるファーストフード・チェーンの中でもマクドナルドは遊技場の設置やバースデーパーティーを行うことによって、子供たちを幼い段階から「中毒」にしようとしているという鋭い指摘には納得できるものがあった。冗談のようで硬派なドキュメンタリーですね。低予算なのに視覚効果やアニメーションが凝っていたりもする。
ちなみにDVDの特典には「ファストフードが世界を食いつくす」の著者へのインタビューなどがあり、これらもまた非常に啓蒙的で面白い。あと簡単な実験が1つ紹介されているのだが、これもまた衝撃的だった。マクドナルドの各種バーガーとフレンチフライ、そして手作りの店のバーガーとフライをガラスのビンに入れて放置し、腐り具合を調べるという単純な実験だけど、その結果は…? 答: マックのフレンチフライは10週間たっても腐らない。