「REINVENTING COMICS」書評

コミックの持つ豊かな歴史や独特のスタイル、情報の伝え方などを実に分かりやすく分析してコミック業界外でも大絶賛を得た「UNDERSTANDING COMICS」(邦訳があるんだって?)の著者スコット・マクラウドによる続編「REINVENTING COMICS」を読む。前作ではエジプトの壁画から現在のグラフィック・ノベルに至るまでのコミックの歴史やスタイルの変化などを斬新な観点から地道に語っていったのに対し、本著では現在のコミック業界が抱える問題点や、デジタル時代を迎えたコミックの今後のありかたなどについて語っている。前作が「事実の検証」だったとしたら、今作は「理想の表明」といった感じが近いかもしれない。刊行は2000年。

本の内容は2部に分かれており、第1部はいかに現代社会でコミックが軽視されているかを簡単に述べたあと、現在のコミック・ビジネスがいかに利益をもたらさない構造になっているかを著者自身の経験を例に挙げながら説明している。そして著者は「作家の権利」や「ジャンルの多様性」「コミックのイメージ向上」といったさまざまな要素を挙げながら、作家や出版社がまんべんなく利益を得るにはどのような革新が望まれているのかということを解説していく。

第2部はデジタルの時代におけるコミックの立場、特にパソコンの普及およびインターネットの拡大とコミックとの関連性について解説している。パソコンの黎明期からインターネットの生い立ちまでを詳しく説明している前半部分はそれなりに有益な情報が含まれているものの、コミックとはあまり関係ない。しかもコンピューターの進歩はコミック業界を遥かにしのぐ速度で進んでいるため、2000年に出た本を現在読むとかなり古くさく感じてしまう。そして後半、作品を作家から読者へ直接届けることのできるインターネットの利点を活かした、低額(25セントとか)のオンライン購読システムにコミックの将来があると著者は提案する。ここは後のiTunesミュージックストアの出現と成功を予言してるようで興味深い。ただ音楽と違ってコミックはやはり「紙」という媒体があってこその芸術表現であり、スクリーン上で読むとコミックの魅力が半減してしまうと思うのだが。オンライン・コミックスについてはマクラウドのホームページでいろいろ例が載っているので見てみてください。

「UNDERSTANDING COMICS」ほどの傑作ではないが、コミックに関するビジネス本としてはいろいろ参考になる一冊。

COUNTDOWN TO INFINITE CRISIS

DCコミックスの今年(来年?)の大イベントである「INFINITE CRISIS」の予告編的作品「COUNTDOWN TO INFINITE CRISIS」が発売されていたので早速購入。80ページで1ドルという、赤字覚悟の大安値だった。この話から4つのミニシリーズが同時期に始まり、それぞれが6号まで出版され、そこからやっと「INFINITE CRISIS」が始まるという、なんとも壮大というか気の長いコンセプトになってるらしい。

それで肝心の内容はというと、これはちょっと…といった感じだった。比較的マイナーなヒーローである「ブルー・ビートル」がストーリーの語り手だというのは個人的には嬉しいのだけど、最後に明らかにされる黒幕は何かショボいし、とても気の滅入る終わり方もどうかと。あくまでも予告編ということで、数多くの謎をばらまき読者を欲求不満にさせるのが目的なのは分かるけど、個人的にはこれから先の話の展開への興味がそがれるような内容であったのが残念。

それでもDCコミックス史上で最大のイベントであった「CRISIS ON INFINITE EARTHS」の続編と宣伝されてる「COUNTDOWN TO INFINITE CRISIS」がどんな話になるのかは興味津々なんだけどね。

DAVID BORING

今さらながらダニエル・クロウズの「DAVID BORING」を読む。オルタネイティヴ系のコミックによくあるアンニュイの物語かと思ってたら全然違った。むしろミステリー仕立ての内容になっており、主人公がいつのまにか不可解な出来事に巻き込まれていくさまや、父親の描いたコミックを通じて彼の考えていたことを探ろうとする描写などはポール・オースターの小説に非常に似ているものを感じた。映画的な作品だという批評もあるようだけど、必ずしも多くないページ数でシンプルなスタイルをとりつつ、何層ものストーリーを重ね合わせていく技法はコミックならでのものだろう。2000年に出版されたものだが、細菌テロに怯える人々の姿が描かれているのも興味深い。

文句があるとすれば、主人公がサエない若者なのに次々と仕事やガールフレンドを見つけてくことかな。あくまでも個人的な経験に照らし合わせた不満ですが。

100 BULLETS #58

単行本化されるたびに購入している大傑作コミック「100 Bullets」の#58をマンガ屋で立ち読みして驚いた。最重要キャラクターの1人であるXXXXXがXXXXにXXされてXXXXXX!!!

50号をこえて、少し中だるみしたかと思ってた矢先にこれである。ブライアン・アザレロあなどり難し。単行本化が待ち遠しい。

ゴースト・ライダー

マーヴェルのコミックが原作で、ニコラス・ケイジが主演するアクション映画「ゴースト・ライダー」の悪役としてピーター・フォンダが出演することが決まったとか。そのため「ゴースト・ライダーにキャプテン・アメリカが出ることになったぜ!」と、Ain’t it coolでは取り上げられてます。ピーター・フォンダと聞いて「キャプテン・アメリカ」と連想する人はどのくらいいるんだ? 筋金入りのコミックマニアであるニコラス・ケイジ(芸名もコミックのキャラクターから取っている)がアメコミ原作の映画に出演するという噂は、オクラ入りになったティム・バートンの「スーパーマン」をはじめ多々あったのだが、問題は彼の容姿がどう考えてもスーパーヒーローに向いてないことであろう。この作品でケイジが演じるジョニー・ブレイズってキャラクター、原作では長髪のアニキなんだが…。まあキアヌ・リーブスがジョン・コンスタンティンを演じられるハリウッドは、何でもありの世界なんだろう。