「ザ・プレデター」鑑賞


公開中なので感想をざっと。ネタバレ注意:

・まー気楽に観る分にはいい映画なんじゃないでしょうか?劇場にいながらも日曜洋画劇場を吹替で観ているような感覚に陥ってしまたよ。プレデターが出てきて、アクション満載で、ツッコミどころは多いのだけど楽しめる作品というか。観客が何を期待しているかは理解している作り方ですかね。

・その一方で、観客が本当に「プレデター」という作品に何を期待すべきなのか、ちょっと考えさせるものでもあった。「エイリアン」はリドリー・スコットが復帰したし、「ターミネーター」はシュワルツネッガーが復帰したことでフランチャイズとしての筋がそれなりに通っているかもしれないが、「プレデター」はそれがないので焦点がブレている気がするのよな(シュワはカメオ出演の依頼を断ったらしい)。

・でまあ今回は地球人にそこそこ友好的なプレデターが登場したり、プレデターと意思疎通ができたりという新展開が起きるわけだが、ジャングルで人を狩る謎の宇宙人、という第1作のコンセプトから遠く離れたものになったのは仕方ないことか。ただラストのあれはなー。「インデペンデンス・デイ」みたいにはなって欲しくないのです。

・初週の興行成績がさほど大きくなかったことと、シェーン・ブラックのキャスティングが物議を醸したことなどから、このままの監督とキャストでの直接の続編が作られる可能性は低いんじゃないだろうか?新作が企画されるころにはFOXとディズニーの合併も行われているだろうし、いちどフランチャイズを完全リブーとしても眉をひそめる人はそんなにいないんじゃないかと思います。

機内で観た映画2018 その1

ちょっと長いフライトに乗ったので、機内で観た映画の感想をざっと。R指定の作品が多かったので、劇場版にくらべて内容がどの程度カット・編集されてるかはよくわかりません:

・「UPGRADE」:ジャンル映画界隈で話題のSFアクション。暴漢に妻を殺されて自分は四肢麻痺になった男が、首に実験的なコンピューターチップを埋め込まれて運動機能を取り戻し、自分を襲った者たちに復讐していくというもの。チップに身を任せることでケンカのプロとなるあたりがちょっとコメディっぽいけど、意外と真面目にSFしている作品ではありました。変に自動運転車のようなSFガジェットを出さず、もっと現代的な描写にしても良かったと思うけど。「ハードコア(・ヘンリー)」が好きな人なら楽しめるのでは。

・「クワイエット・プレイス」:アメリカでは大ヒットしましたけどね。被災地で音を立てずに歩くのなら裸足でなく分厚いスリッパ履けよ、とか電気はどこから持ってきてるの?といった設定の細かい点がなんか気になってしまった。ストーリーも捻りがあるかと思いきやそうでもなかったし。お金のかかった「トワイライト・ゾーン」の1エピソード、といった感じ。

・「LEAN ON PETE」:父親を失った少年が、殺処分されそうな競走馬を連れて遠くの親戚の家に行こうとする青春ロードムービー。批評家の評判が良いので観てみたけど、まあ普通のドラマといったところかな。スティーヴ・ブシェミにクロエ・セヴィニー、スティーブ・ザーン、エイミー・サイメッツといったインディペンデント映画の名役者がちょっとだけながらも顔を揃えているのは凄いんだけどな。

・「タリーと私の秘密の時間」:マニック・ピクシー・ドリーム・ガール(死語)の新たな発展系か?と思ってたらまさかの結末。うーん。この監督・脚本・主演なら「ヤング・アダルト」の方が良かったな。ロン・リビングストンはいつだって好きですが。

「アントマン&ワスプ」鑑賞


夏休みの終わりに公開するあたり、日本では期待されてないんだろうなあ。公開中なので感想をざっと:

・まあこんなものかな?マイケル・ダグラスがフル活動している分、前作よりも良かったかも。ただ登場するキャラクターが増えたことによって話が散漫になったような感も否めない。ウォルトン・ゴギンズとか好きだけど、悪役を2グループにしてアントマン側と三つ巴にする必要なあったのか。

・話の展開も場面の切り替えが多くて、それによって話の勢いが削がれていたような?それぞれの場面のオチがきちんとついてればまだメリハリがあったのだろうけどね。例えば学校のシーンとか、もうひとヒネリあってもよかったんじゃないかと。

・悪役は前作の弱い部分だったので、今回はゴーストという強力な敵を持ってきたのは正解かと。その一方で、彼女の悩みを最初から明かしたことで、あまり強そうにも思えなくなったけど。もうちょと原作のような不気味キャラで引っ張っても良かったのでは。

・役者はみんないいですね。北の将軍様ことランダル・パークが出てたのが個人的にはツボだった。ブライアン・ラスキーはまだしもティム・ハイデッカーがチョイ役で出てたのには驚いたな。

・「インフィニティ・ウォー」にあわせどんどん話が大きくなっていくマーベル・ユニバースにおける一種の清涼剤、という見方はあまり同意してなくて、あくまでもマーベルが繰り出す作品の1つではありますが、ラブコメの要素もあるし、気軽に楽しめる映画かと。ただ次の作品はちょっと登場人物減らしたほうがいいと思う。

「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」鑑賞


公開されたばかりなので感想をざっと。以降はネタバレ注意。

・どんどん年をとってる主役が体を張ったアクションを披露するのが売りになってきたあたり、ジャッキー・チェンの一連の作品と同じようなノリになってきた感がある。スタントなしでアクションに挑むトム君はすごいものの、ジャッキーの時代と違って「これグリーンスクリーン使って撮影してるんじゃね?」とふと思ってしまうのが損なところである。

・んで観客はそのトム君のアクションを期待して観に来ているわけで、複雑なプロットとかいらないと思うのだがなあ。俺が年取っただけなのかもしれませんが、誰がラークで、ソロモン・レーンとどう関わってて、ホワイト・ウィドウはどういう役割なんだっけ、と30分くらいしたら分からなくなってました。

・誰が裏切り者かはっきり分かるシーンを前に出しておきながら、トム君に容疑がかけられるシーンに時間をかけるのも蛇足だろう。クリストファー・マッカリーって脚本家出身のせいかなんか話が回りくどいのよな。実際に起きないシーンを夢オチで描くのも邪道では。

・今回は珍しく違っていたものの、このシリーズって悪役の印象が弱いので、ソロモン・レーンが前作に出ていたことをすっかり忘れておりました。あなた誰だっけ?という感じで。長らく主人公のロマンス要素を阻害していたヒロインの問題も、いちおう今回で解決したことになるのかな?あれ見ると前作の設定を引きずらずに、新作ごとにヒロインを替えている007シリーズの割り切り方のメリットがよく分かりますね。

・キャストはまあ前作と大半が一緒だが、いまいち活躍してなかったジェレミ・レナーが去り、ヘンリー・カヴィルが強い相手役として加わったのが良いアクセントになっているかと。「ジャスティス・リーグ」では大金かけてCG処理してヒゲを取り除いてましたが、同じシーンでヒゲの長さが変わっているのを観ると、こっちをCG処理すれば良かったんじゃね?と思うのです。

・観ていていちばん気になったのが、映像にレンズフレアがやたら多用されてることで、映画館のスクリーンに不備があるのかと一瞬思いましたよ。セリフを話している人の顔にも平気で光のモヤモヤがかかってるのが目障りでして。これプロデューサーのJJエイブラムスが自分の撮影監督を送り込んできたのかと思ったが、撮影したロブ・ハーディって「エクスマキナ」の人だったのか。あちらではすごく美しいショットを撮っていたのに、なんでこっちではモヤモヤとした映像になったのだろう。

体を張ったアクション・シーンは見応えがあるし、手に汗握る展開も多いのでチケット代ぶんの価値は十分にある作品であるのですよ。ただもうちょっと簡潔な内容にしても良かったんじゃないかと。特に「インクレディブル・ファミリー」のスパっとしたアクション展開とプロットを観たあとでは、ブラッド・バードが監督した「ゴースト・プロトコル」の域には達していないな、と思わざるを得ないのです。

「I KILL GIANTS」鑑賞


ジョー・ケリー(ストーリー)とケン・ニイムラ(アート)によるイメージ・コミックスの同名作品(邦訳あり)を映画化したもの。ジョー・ケリーって90年台半ばにマーベルが破産申請でゴタゴタしてるときに作品をあれこれ執筆してた人で、なんかマーベルのイエスマンという印象があってそんなに好きではないのですが(これ偏見だろうし、デッドプールのキャラ設定に大きな貢献をしたんだろうけど)、この作品は彼のクリエイターオウンド作品で、彼の代表作といっていいんじゃないでしょうか。

小さな海辺の町に住むバーバラは、いつか町を巨人が襲ってくると信じ、彼らを撃退する罠の準備に専念している不思議な女の子。その町に引っ越してきた少女ソフィアや、学校のモレー先生などは彼女と仲良くしようとするものの、バーバラはなかなかうち解けようとしない。学校でも家庭でも孤立していくバーバラだったが、その一方で彼女のみなす「巨人の前兆」は増えていき…というあらすじ。

脚本をケリー自身が手がけているので、原作に忠実な映画化ということになるのかな。ただし眼鏡っ娘でウサギ耳をつけたバーバラは原作だともっと芯の強いタイプに描かれていたし、
ソフィアもミッドティーンくらいの少女だったけど、映画版ではバーバラはもっとファンタジー少女っぽくて、ソフィアはもっと幼い感じになっている。これ製作をクリス・コロンバスがやっていて、「ハリー・ポッター」みたいなお子様ファンタジーにしたかったのかなあ。

ただね、全体的に話がまどろっこしいのよ。周囲の善意にもかかわらずバーバラがウジウジしている描写がずっと続いて、肝心の巨人との対決についても何か拍子抜けでスッキリせず。原作の勢いがないというか、話のメリハリに欠けるのよ。最後で明らかにされるバーバラが心の葛藤を抱えている理由についても、もっと伏線を貼っといてよかったんじゃないかとか、彼女にとって巨人を倒すということは何なのかとか、もうちょっと深く描いていれば面白い作品になったと思うのだがなあ。監督のアンダース・ウォルターってこれが長編デビュー作らしく、なんか力量不足だなという感は否めない。

バーバラを演じるのはマディソン・ウルフ。ほかにイモジェン・プーツとか、ゾーイ・サルダナなど。撮影時15歳だったウルフをはじめ、役者の演技はそんなに悪くない。なんか疲れてる学校の先生役にソーイ・サルダナは似合うなあと。あと一瞬だけノエル・クラークが出ています。

もっと主人公の内面に迫った話にしていれば、いろいろ改善されたはずなのがちょっと残念な作品。