「Last Week Tonight With John Oliver」鑑賞


「デイリーショー」を円満に降板したジョン・オリバーが、HBOに引き抜かれるような形で司会を務めることになった風刺ニュース番組。例によって初回がYouTubeで公開されているのでIPアドレスをゴニョゴニョしてみよう。

その週の出来事を日曜日に面白おかしく報じるという内容のもので、「デイリーショー」と違ってゲストとのトークなどはなし(ただし初回にリサ・ローブがちょこっと出ていた)。ニュースクリップに絶妙なツッコミを入れるスタイルは「デイリーショー」(特にオリバーが司会をしてたエピソード)そのまんまで、あれや彼のポッドキャスト「THE BUGLE」に比べてそんなに新鮮味はないかな?

ただしHBOということで「デイリーショー」よりも実質10分くらい長く(あと四文字言葉の規制もない)、週一回の番組ということでニュースを少し深く掘り下げる内容になっているみたい。初回ではインドの選挙について詳しく説明してました。あと司会がイギリス人ということもあり、彼の国の風刺番組「Have I Got News For You」にどことなく似てるような…似てないかな?

ジョン・オリバーの司会の腕前は「デイリーショー」で証明済みだし、世の中の正しくない事にツッコミを入れる番組はいくらあっても足りないくらいなのですが、初回を観た限りでは「デイリーショー」とそんなに大差ないような?本国でもここらへん意見が分かれているようだけど、回を重ねるうちに独自のスタイルを確立していくことになるのでしょう。

「BAD TEACHER」鑑賞


CBSの新シットコムで、キャメロン・ディアスが主演した同名の映画のテレビ版。

メレディスは裕福な夫と離婚したが、結婚前の契約をきちんと読んでいなかったために慰謝料などは何も受け取れず、文無しで友人宅に転がり込むことに。そしてその家の娘から高校で教師を募集していることを教えられ、経歴を偽証して職を得ることに成功する。彼女の狙いは、生徒たちの裕福なシングルファーザーをつかまえて玉の輿結婚をすることだった。しかし彼女のことを快く思わない同僚の女教師から妨害の手が入り…というようなプロット。

個人的には劇場版を観てないのであっちとの比較はできないのだが、教職員同士の関係だけでなく、生徒たちとの関係がもっと強調された内容になってるのかな?学校で虐げられているオタクな少女たちをメレディスが型破りな手法で助ける展開とかはすごくベタなんだけど、まあ悪くはないかな。

主役を演じるアリ・グレイナーって、キャメロン・ディアスをさらに緩くしたような体型の人。ホットなティーチャーというよりもアンナ・ニコル・スミスみたいな感じなのですが、まあそういうのに惹かれるダディもいるということにしときましょう。彼女のライバル教師を演じるのが「SATC」のクリスティン・デイビスで、校長先生をデビッド・アラン・グリアーが演じている。

まあこの時期に始まるシットコムの常として、おそらく長続きはしないであろうと。おれクリスティン・デイビスは好きなんだけどなんか勿体ないよね。今年の女性が主役のシットコムは「Trophy Wife」がピカイチで、あとはこの番組も含めて、どれも似たり寄ったりといった感じですな。

「SALEM」鑑賞


俺もよく知らなかったんだけど、シカゴを中心としたWGNというケーブル局があるらしくて、これはそこで初となるオリジナルシリーズ。AMCやネットフリックスの成功にならって、オリジナルシリーズを製作しようとする局は今後も増えてくるのかな。なぜシカゴの局がマサチューセッツを舞台にしたドラマを作るのかはよく分かりませんが。

タイトル通りセイラムの魔女裁判を扱ったもので、舞台は1685年のセイラム。清教徒が支配する町で、道徳的に不埒だと見なされた者が厳しく罰せられるなか、ジョン・アルデンは彼の子を妊娠した恋人のメアリーを残してウィリアム王戦争へと出陣する。そして7年が経ち、町へと戻ったアルデンは、メアリーが町の有力者の後妻となったことを知る。さらにアルデンの幼なじみであった牧師によって、町では魔女狩りの嵐が吹き荒れようとしていた。町の民のヒステリアに対抗しようとするアルデンだったが、実はメアリー自身が魔女であり、婚外子であった彼との子供を中絶しようとしたことで黒魔術に目覚めたのであった…というような話。

クリエイターはブラノン・ブラガで、おれブラガの作品って全く評価してないんだが、この作品もなんか方向性が定まらず何だかなといった出来。アルデンは怪訝そうに出来事を傍観してるだけであまり積極的に行動しないし、メアリーは悪に染まってるのかと思いきや黒魔術を使うことに不安を示したりして、今後何をやりたいのかがいまいちよく分からんのだよな。時代劇ということで形式ばった言葉遣いもなんか似合ってないし。

なおアルデンをはじめとする登場人物の何人かは実在した人物であるらしい。実際の出来事を基にしているとはいえフィクションなのでモラルを求めるのは無意味だと思うものの、集団のヒステリアによって起こされた魔女狩りという惨劇を、「いや実は悪い魔女がいたんだよ」としてしまうのはどうも不快なのよな。劇中における女性の扱いもひどいもんだし。さらに言うとキャストが白人だらけのなか、メアリーに黒魔術を薦める女性だけ黒人(かなり色白だけど)というのも引っかかったな。

ジョン・アルデンを演じるのはシェーン・ウエスト…って再結成したザ・ジャームスでボーカルを務めた役者か!あれって何だったんだろう。あとはザンダー・バークリーとか、テレビ番組でちらほら見かける役者がそれなりに出演しています。シェーン・ウエストよりもメアリーを演じるジャネット・モンゴメリーが主役扱いになるのかな?

まあ、いかにもブラノン・ブラガ的な、あまり目新しさのないジャンル番組といった感じです。「テラノバ」を面白いと思った人なら楽しめるんじゃないでしょうか。

「Fargo」鑑賞


コーエン兄弟の「ファーゴ」をベースにしたFXのミニシリーズ。全10話。

冒頭に「この物語は実話を元に作られており…」という嘘っぱちのメッセージが出てくるところや、題名に反してファーゴが舞台でないあたりは劇場版と一緒なのだけど、キャラクターやストーリーは完全にオリジナル。ただし劇場版にそれなりに似せた設定になっており、コーエン兄弟の作品の雰囲気が意外とうまく伝わる出来になっている。

そして舞台はミネソタのベミジという町。レスターはしがない保険のサラリーマンで、仕事場でも家庭でもウダツが上がらず、40歳になっても高校の同級生に今でもイジめられている次第。その同級生と関わって鼻を骨折した彼は、病院でローンという謎の男に会う。自分の鼻を折るような男は殺してしまうべきだと語るローン。彼の不気味な迫力に圧倒されるレスターだったが、次の日にレスターの同級生は刺殺体となって発見される。じつはローンは町に迷い込んできた殺し屋だったのだ。事件を不審に感じた警官のモリーたちは調査を始めるが、レスターとローンのまわりではいろいろ人が死んでいって…というようなストーリー。

劇場版の狂言誘拐というプロットは(今のところ)登場せず、不気味な殺し屋のローンが町に与える影響をブラックに描いたコメディ気味のサスペンスンになっている。第1話から人がどんどん死んでいくさまは、「ノーカントリー」っぽいかな。あらゆる不運を引き寄せるレスターと、奇妙に落ち着いたローンの対比が面白いぞ。控え目ながらも絶妙なタイミングで使われる音楽もいい味を出している。

ローンを演じるのはビリー・ボブ・ソーントン。「ノーカントリー」のシガーのごとく冷徹に人を殺す一方で、不気味な愛嬌を振りまいて周囲を困惑させていくさまを巧みに演じている。これコーエン兄弟の「バーバー」や「バーン・アフター・リーディング」のときよりも似合ってる役じゃないだろうか。そしてレスターを演じるのがマーティン・フリーマンで、いつもと違うミネソタ訛り(?)での演技には違和感を感じるものの、「シャーロック」以上に周囲の出来事に翻弄される姿がね、なんというか可愛いのですよ。他にもコリン・ハンクスやボブ・オデンカーク、キース・キャラダイン、オリバー・プラット、コメディアンのキー&ピールといった強力な出演者たちが脇を固めている。

個人的には「ファーゴ」ってコーエン兄弟の作品の中ではそんなに好きではないのだけど、これは劇場版の設定をうまく換骨奪胎して面白い内容に仕上げていた。残りの9話もこのペースで進んでいくことに期待。

「Metal Hurlant Chronicles」鑑賞


Syfyチャンネルのオリジナルシリーズ…と銘打ってるけどフランスでは2012年に放送されてんのね。

日本でもちょっと前までは洋書屋で売ってた「Heavy Metal」というSFコミックのアンソロジー誌がありまして、その元は「メタル・ユルラン(叫ぶ鉄)」というフランスのバンドデシネ雑誌であるわけですね。「ユルラン」では故メビウスやリチャード・コーベンといったアーティストたちがイマジネーションの限りを尽くした荘厳なSFコミックを描いていたわけだが、それらのストーリーをアンソロジー形式で映像化したのがこのシリーズ。劇中では「メタル・ハーラント」と発音してるけど、アメリカ人の視聴者に分かるのかそんな言葉。しかし「Heavy Metal Chronicles」という名前ではやはり音楽ドキュメンタリーだと誤解されると懸念されたんだろうか。

第1話はリチャード・コーベンがアートを担当したコミックが原作で、死にかけている暴君の王の後任の座を狙って戦う剣闘士たちの物語。中世のようでロボットが飛び交うエキゾチックな世界設定になっているのだが、やはりコーベンの筋骨モリモリな男女が出てくるアートに比べると映像がショボすぎることは否めない。30分という尺なのでサクっと観られるけどバッドな終わりかたをしてまして、毎回こういう展開だと辛いものがあるのではないかと。

なおフランスとベルギーの合作番組ながら出演者のセリフはみんな英語で、ブラック・ダイナマイトことマイケル・ジェイ・ホワイトなんかが出演していた。剣闘のアクションなんかはスローモーションばかり使っててお世辞にも見事なものではないが、彼が素手で戦うところだけはやはり切れのいい動きをしていましたね。後の話ではミシェル・ライアンとかルトガー・ハウアーなんかも出演しているらしい。

フランスで2012年に6話だけ放送されただけらしく、まあ続きは作られないだろうな。「Heavy Metal」の映像化に興味がある人は、こっちよりもアニメ映画版を観ることをお勧めします。