「ORPHAN BLACK」鑑賞


BBCアメリカの新シリーズで、製作はカナダ。

不良少女で家出をしていたサラは久しぶりに故郷へと帰ってくるが、夜の駅において自分と瓜二つの女性が投身自殺をするのを目撃してしまう。現場にあった遺品から彼女の名前がベスであることを知ったサラは、ベスが多額の預金を持っていることに気づき、それを引き出すためベスに成り済ますことに。しかしベスの同僚たちに彼女だと思い込まれてベスの生活に深入りしていくサラ。さらにはもう1人の自分とそっくりな女性が目の前にあらわれて…というプロット。

もういろんなところで書かれてるからネタバレにはならないと思うが、実はサラたちはクローンであるという設定らしくて、自分たちを作ったのは(そして狙っているのは)誰か?というのが話の大きなテーマになってくるらしい。このSF的な要素が話のクオリティにどう影響してくるのかまだ分からないが、第1話は不受理サスペンスといった出来でかなり見応えがあったよ。他人と間違えられて見知らぬ人々が目の前に現われる一方、自分も悪巧みをしているので正体を明かせず、機転をきかせてどうにかその場をすりぬけるサラの行動はスリルがあるし、突然もう1人の自分がまた現れ、何者かによって狙撃されて死んでしまうという悪夢のような展開はデビッド・リンチ的でさえもあった。

カナダの俳優で固めた出演者たちは主人公も含めて比較的無名の人たちばかりだし、製作費も決して高くはないものの、「Continuum」などで最近また勢いがついてきているカナダ製のSFシリーズのなかでも出来が良い方ではないでしょうか。

「Da Vinci’s Demons」鑑賞


デビッド・S・ゴイヤー原案によるStarzの新シリーズ。日本のどこかの局でも近々やるみたい。「ダ・ヴィンチ・コード」や「Da Vinci’s Inquest」(というカナダのシリーズがあるのよ)みたいな現代ものかと思いきや、レオナルド・ダ・ヴィンチが主人公の時代劇ものであった。

舞台となるのは15世紀のイタリア。ダ・ヴィンチは野心に燃える若き発明家で、発明の資金をえるために上流階級に取り入ろうとしていた。しかしミラノ公が教会において暗殺され、法王も陰謀を画策するなどして政治情勢が不穏になり、武力衝突も避けられない方向へと世の中は進んでいた。そんななかでダ・ヴィンチは謎めいたトルコ人に出会い、古から伝わるミトラ教の存在を教えられ、その秘密を記した本を探すように命じられる。しかしミトラ教に対抗する勢力もダ・ヴィンチのことを知り、彼は危険な立場に置かれることになる…というようなプロット。

ゴイヤーといえばノーラン版「バットマン」の脚本を手がけ、今年の「マン・オブ・スティール」の脚本も書くなど絶好調の脚本家というイメージがある一方で、「ジャンパー」みたいにダメダメな脚本も書いているし、監督した作品はどれも評判がイマイチで、個人的にはあまり高く評価したい人ではないんだよな。この番組で気になったのは、主人公が「空を飛ぶことに憧れて大きな翼を発明する」「幼少時に洞窟でトラウマな経験をした」「頭脳明晰でケンカも強く、謎の教団に教えを乞うた」といったあたりでして、これって「バットマン・ビギンズ」じゃん!ゴイヤーがこれをどこまで意識して書いてるのかは知らないが、ネタがかぶってることは否めないな。

とはいえ第1話を観た限りではアクションシーンなどは少なく、ダ・ヴィンチが発明に苦労する一方で、貴族たちのドロドロとした政治劇がおっぱいとともに描かれるスタイルは「スパルタカス」や「ボルジア」をそのまんま踏襲しているのでは。でもそれに秘密結社にまつわる話が絡んでくると、どういう方向に進んでいきたいのかがよく分からなくなってしまうな。

BBCが共同製作してイギリスで撮影しているとのことで、出演者は殆どがイギリス人。ダ・ヴィンチを演じるトム・ライリーってよく知りません。あとは「シャーロック」のララ・パルヴァーとかアレキサンダー・シディグなどがちょっと出てます。ヒュー・ボネヴィルは全裸になって頑張ったりしてるものの冒頭3分で暗殺される損な役。当時のセットなども凝ってはいるものの、いくつかのシーンではグリーンバック合成がバレバレであったような。

ゴイヤーって別に悪い脚本家ではないとは思うのだけど、陰謀と策略が渦巻く時代劇というスタイルが似合ってる人ではないので、ここは無難に現代のアクションものを作っておけばよかったのに、と思わずにはいられないのです。

「HANNIBAL」鑑賞


「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士を扱ったNBCの新シリーズ。

時系列的には「レッド・ドラゴン」のちょっと前の頃が舞台になっていて、若い女性ばかりを狙った連続殺人犯を逮捕するためにFBIのクロフォード捜査官は現場を退いていたウィル・グレアム捜査官に助けを求め、さらに精神科医のハンニバル・レクター博士にも捜査への協力を依頼する。こうしてグレアムとレクターは殺人犯を追っていくものの、レクターには暗い秘密があって…という設定。俺は「レッド・ドラゴン」とか「ハンニバル・ライジング」を観てないので、映画の設定とどのくらい異なってるのかはよく分かりません。

題名は「ハンニバル」なんだけど主人公はむしろグレアムのほうで、アスペルガーの傾向があり人とうまく接することができない反面、殺人現場のプロファイリングを完璧に行うことができ、被害者に感情移入してしまう暗いキャラクターとして描かれている。ハンニバルはそんなグレアムを翻弄する謎の男という役回りで、当然裏では人を殺してパクパク食べちゃったりしているわけですが、第1話に出てくる殺人鬼と彼の関係がいまいち良く分からなかったような?

地上波ネットワークとはいえグロいシーンも必然的に出てくるのですが、ショッキングな映像に走ったりはせず、色調なども抑え気味で70年代のアートムービーを観てるかのよう。視聴者はハンニバルの正体を知っているのに劇中の登場人物はそれを知らない、という前日譚にありがちなまどろっこしい状況をどこまで引っ張れるかがシリーズ存続のカギになるだろうな(いまNBCを観ている人がどれだけいるのか、という問題もあるが)。ウィキペディアによるとショウランナーのブライアン・フラーは「シーズン5くらいでクラリス・スターリングとか登場させたいなー」みたいなこと言ってるようですが、あなたの手がけたシリーズでシーズン3まで続いたものってありませんから!

グレアムを演じるのはヒュー・ダンシー…ってクレア・デーンズの旦那か。そしてハンニバルを演じるのが「カジノ・ロワイヤル」のマッツ・ミケルセンで、主役2人をイギリス人とデンマーク人を演じてるあたりが、アメリカ人が主役はれない最近のアメリカのテレビ業界を象徴しているような。ただミケルセンは英語がちょっと拙いような気がするんだけど、どうなんだろうね。そんな2人をまとめるクロフォード捜査官を演じるのがローレンス・フィッシュバーン。TVシリーズ出るのが嫌で「CSI」を降板したような印象があったんだけど、そうでもなかったのかな。

殺人鬼ものとしては「フォロウィング」や「BATES MOTEL」などよりもサスペンスを丁寧に描いていてよく出来ていると思うのですが、今のところ視聴率もそこそこという感じらしいので、どのくらい長続きできるかは何ともいえない作品だな。

「IN THE FLESH」鑑賞


BBCによる全3話のゾンビドラマ。

舞台となるのは死人が行き返り、ゾンビと化して生者を襲うというパニックが起きたあとの世界。そのパニックは鎮圧され、ゾンビになった人のうち薬物療法で改善の余地が見られた人は「部分的死亡症候群(Partially Deceased Syndrome)」であると認定され、もといた社会へと戻るためのリハビリを受けていた。主人公の少年キエランもその1人で、ゾンビであったときに人を襲った罪悪感に苛まれているものの、十分にリハビリが済んだと見なされてヨークシャーの田舎町に住む両親のもとへ帰される。息子との再会を喜ぶ両親だったが、その田舎町にはまだ反ゾンビ感情が根強く残っており、ゾンビと戦った義勇軍の残党が幅を利かせていた。そしてキエランの身にも危険が迫ることになり…という設定。

テレビでも映画でもこれだけゾンビものが流行ってくると、このようなポストモダン(?)な設定の作品も出てくるわけで、最近ではゾンビの少年が少女に恋をする「Warm Bodies」なんて映画もありましたね。設定からするとコメディっぽい内容かと思ってたけど、どんよりと曇った空の下で繰り広げられる陰気なドラマでありました。こういうのはアメリカ人は作らないよね。

第1話ではあまり明らかにされないが、どうもキエランはゲイであるらしく、「ゾンビ差別=ゲイ差別」というかなり分かりやすいアナロジーが展開されるらしい。ゾンビ嫌いの義勇軍のリーダーの息子が実はゾンビになっているというツイストも、ゲイを扱った作品ではよく見られるような。「Xメン:ファイナル・ディシジョン」でも同様な展開がありましたね。

あとはゾンビたちによる新興宗教のようなものが存在することが示唆されるのですが、今後の展開にどう絡んでくるかは不明。しかしテレビドラマとかに出てくる宗教のサイトって、なぜ開いたとたんに大音量とともにチープなフラッシュアニメが流れるのだろう。普通だったら一発でスパムサイト認定されるよな。

ゾンビ退治のアクションがあるわけでもなく、内容が暗くて日本人受けはしない作品かもしれないが、それなりに興味深い設定の番組なので残りの話もこんど観てみます。

このトレーラーの曲、ダニエル・ジョンストンだ!

「BATES MOTEL」鑑賞


鳴り物入りで始まったA&Eの新シリーズ。

ヒッチコックの傑作「サイコ」のプリクエル(前日譚)という設定のもので、父親が変死したあと田舎町に引っ越してきたノーマン・ベイツと母親のノーマのサイコな日々を描くものになるらしい。「サイコ」のプリクエルって「サイコ4」でやってたはずだが、こちらはいわゆるリ・イマジネーション的なものになっており、舞台は現代(だよね?)に移されている。

個人的にはプリクエルってどうも好きではなくて、「ゴッドファーザー パートII」のデニーロのシーンも余分だと考えてるくらいなのですが、観客はそのキャラクターもしくはストーリーの結末(結果)を既に知っているうえ、観客の想像にまかせておけばいいところをベタベタと説明してしまう行為は不要だと思うのですね。「スター・ウォーズ」だってどんなにCGを駆使してクローン戦争を描こうとファンの空想には敵わないわけで。

そしてこの作品もノーマンとノーマの関係とかモーテルの歴史を説き明かしていくわけですが、第1話を観た限りではノーマンは内気だけど心の優しい少年で、ノーマは過保護だけど頑張るシングルマザーといったところ。その後2人にさっそく不幸が降り掛かってくるわけですが、「サイコ」から連想される陰湿な親子関係などはなく、2人で仲良く死体を処分するような、微笑ましい母と息子になっております。

観ていて気になったのが時代描写がチグハグなところで、モーテルのデザインや家具などは50年代のスタイルなのに、高校生とかはスマートフォンを使ってダンスパーティーに行ってる次第。オリジナルのスタイルを残しつつ設定を現代にした結果なのだろうが、とても違和感を感じたよ。またネクラなノーマンは転校してくるなり女の子に囲まれてモテモテだし、それを妬んだジョックたちにイジメられて「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」的な展開になるかと思ったら男子にもそこそこ人気だし、その一方でノーマはモーテルの元所有者に押し入られて暴行されるなど、話の展開がどうも突拍子がなくて感情移入ができなかったよ。「これって夢の中の展開だよね?」と何度思ったことか。

ノーマンを演じるフレディ・ハイモアは故アンソニー・パーキンスの雰囲気をよく醸し出しているし、ノーマ役のヴェラ・ファーミガも体を張って母親役を熱演している(空回りしてるが)ほか、ゴッサム市長ことネスター・カーボネルが出てたりとキャストも有名どころが揃ってるのに、脚本がそれに見合ってないのが惜しい。古い家を舞台にしたホラーなら、まだ「アメリカン・ホラー・ストーリー」のほうが第1話はつかみがあったような(あちらもそんなに面白くはないですが)。本国のレビューでは「第3話から面白くなる」というものが多いようだけど、「サイコ」の名に恥じない作品になってくれるのかねえ。