「FREAKONOMICS」と大相撲

「麻薬の売人は大金を得てるはずなのに、なぜ親と一緒の家に住んでいるのか?」とか「水泳プールと銃はどちらが危険か?」といった日常の素朴な(?)疑問を斬新な視点から解説し、その裏にひそむ社会性や経済力の意外な真実を解説して話題になっている本「FREAKONOMICS」を書店でパラパラ読む。 「犯罪率が減ったのは胎児中絶が認可されたからではないか?」という部分がアメリカで論争を呼び(ろくでもない環境で育つ子供が減った、という論旨らしい)、これを書いてる段階ではアマゾンで売上第3位のベストセラーになってる本だが、第1章の題が「学校教師と相撲力士の共通点は何か?」だったのには驚いた。

これはつまり「教師は自分のクラスが落ちこぼれの集まりだと思われたくないので、ズルしてテストの点数を水増しする。そして勝ち越しのかかった力士は、相手の力士とズルをして八百長勝負で勝たせてもらう。つまり教師も力士も、自分の利益に関わるところでズルをしてるのである」ということらしい。きちんと読んでないので賛成も反論もできないが、作者は千秋楽で7-7、つまりあと一勝で勝ち越しの力士が実際に勝つ確立が異様に高い(特に人気のある力士)というデータを挙げ、大相撲には八百長があるんじゃないかと書いている。

大相撲の八百長疑惑は今に始まったことじゃないが、アメリカでベストセラーになってる本にこんなことが書いてあるとは思わなんだ。個人的に相撲は大好きだが、ただでさえ人気が低迷してるってのにこんなことを書かれたんじゃ、外国人の観客も減ってしまうんじゃないか?

「STATE AND MAIN」鑑賞

玄人受けのする脚本家/監督であるデビッド・マメットの映画「STATE AND MAIN」をDVDで観る。 ヴァーモント州の小さな町に映画の撮影隊がやってきて巻き起こす騒動を描いた群像劇で、ティーンの女の子にすぐ手を出す主演男優(アレック・ボールドウィン)やヌードになるのを拒否するバカ女優(サラ・ジェシカ・パーカー)、時代劇なのにコンピューター会社の広告を入れようとする監督(ウィリアム・H・メイシー)、撮影が始まってるのに脚本を完成させてない脚本家(フィリップ・シーモア・ホフマン)など、なかなか豪華なキャストがそろってドタバタやってるのが楽しい。撮影スタッフを利用して利益を得ようとする地元の政治家や市長の妻なども絡んできて、映画製作の裏側をうまく風刺した作品になっている。予想もしなかったトラブルに直面して、どんどん映画の内容を変更していくスタッフの姿が見ていて笑える。

ややセリフが多くてペダンティックになる部分がある(特にホフマンのシーン)一方で、詳しい説明を避けて観客の想像力をかき立てるような演出が巧み。抱腹絶倒するような映画ではないが、よく出来た小品。

「キングダム・オブ・ヘブン」鑑賞

創価学会員のオーランド・ブルームがキリスト教徒を演じる映画「キングダム・オブ・ヘブン」を観る。監督はリドリー・スコット。十字軍遠征下のエルサレムを舞台にした作品だが、十字軍って異国に兵士を山ほど送って「聖地」を奪還しようとしたその意義が現在では疑問視されているわけで、この映画もイスラム教徒の描写などが公開前からずいぶん論議を醸していたらしいけど、それなりに公平な描写をしているというのが識者の意見らしい。しかし残念ながら、「政治的に正しい」作品にしようとしたばっかりに、肝心のストーリーがずいぶん盛り上がりに欠けるものになってしまったと思う。 物語はフランスで鍛冶屋をやっていた主人公バリアンが、十字軍に参加する騎士と出会い、彼が自分の父親だと知らされるところから始まる。そして彼は父親とともにエルサレムへ行こうとするが、途中で父親は死んでしまう。単身エルサレムに着いた彼はライ病持ちの王と会い、キリスト教徒とイスラム教徒は平和的に共存していくべきだと語る彼の思想に感銘を受ける。しかし王の義理の兄弟で好戦的なギーは、王の没後に軍の指揮権を手中にし、イスラム教徒に戦争をしかけようとする。そしてバリアンはイスラム教徒の思想を理解しながらも、エルサレムの民を守るため、迫り来る彼らと戦う決意をするのだった…というもの。

上記したように、イスラム教徒はかなり公平というか好意的に描写されている。イスラム教とキリスト教それぞれの思想や文化、狂信者などが紹介され、両軍がどのような理由で戦争に赴いたのかを描いていることによって話に歴史的な深みを加えていた。でも「どちらの軍にもいい人がいます」と説明されたうえで両軍が殺し合うのを見せられるのって、ものすごく気が滅入るものがあると思う。アクション大作のはずなのに、どうも不完全燃焼してるんだよなあ。せめてもうちょっと「戦争の悲惨さ」とか「人はなぜ戦うのか」といったテーマを盛り込んでくれれば面白かったかもしれないが、各場面の切り替えがやけに突然なので、物語にあまり余韻が感じられなかったような気がする。

またアクションの面では、「トロイ」を観た時にも感じたことだけど、城壁の戦闘シーンって「王の帰還」がほぼ完璧にやってしまったものだから、あれに比べるとどの映画もチンケに見えてしまう。「王の帰還」は攻める側が怪物集団であったことから善悪の区別がハッキリしていて、攻める側の脅威と守る側の不安感が非常に上手く描けてたのに対し、この作品はどちらの側にもいまいち感情移入しにくいようになってたのは問題かと。でも熟練した監督だけあって戦闘シーンは映像が美しく、見応えがあった。なぜ元・鍛冶屋の主人公が兵法にやたら詳しく、敵の攻撃をことごとく防げたのかは不明ですが。

その主人公を演じるオーランド・ブルームは決して悪い役者ではないものの、残念ながらこれだけの大作の主役を務められるほどの技量はなかったようだ。この作品で彼はずっと暗い顔をしてるばかりで、どうも感情表現に欠けているものがある。別にハデな演技をしろというわけではないが、ただの鍛冶屋が才能を認められて王の信頼を受け、やがて騎士だけでなく人民をも戦いに導けるほどのカリスマ性をもったリーダーに成長していく姿がうまく描けていないので、ラスト間際の演説もなんかショボく聞こえてしまう。
そしてヒロイン役のエヴァ・グリーンは何考えてるんだか分からないゴスのねーちゃんといった感じ。ジェレミー・アイアンズはそれなりに存在感があるものの、脇役なので抑え気味の演技をしてるのは残念。リーアム・ニーソンはカメオ出演(笑)。あっという間にいなくなります。あとはブレンダン・グリーソンとかエドワード・ノートンとか出てるものの、個人的には「スタートレック:DS9」のドクター・ベシアことアレキサンダー・シディグが結構重要な役で出てたのが良かったかな。

結局この映画を観た時に感じた「もどかしさ」って、映画で描かれているキリスト教徒とイスラム教徒の関係や、エルサレムの管轄権の問題が、1000年近く経った現在でも身近な問題として残っているからだと思う。「ナチス対連合軍」や「トロイ対ギリシャ」といった戦争の映画ならば「過去のこと」として楽しめるのに対し、この映画は誰も侮辱しないように細心の注意を払った結果、なんか味気ない作品になってしまったということなんだろうか。でも軍勢が押し寄せてくる場面なんかは非常に迫力があるし、当時のイスラム教徒の姿が分かるという意味では優れた映画かと。原作をボロボロに改変した「トロイ」なんぞよりかはずっといい作品です。

モントリオール旅行記 その4

ホステルを早めにチェックアウトした後は、近くのみやげ屋などを廻って小物の記念品などを購入。それから昼前にバスに乗ってトロントへ向かう。行きのバスは深夜バスだったのでよく眠れたけど、今回は昼間出発で満員だったこともあってえらく長い旅に感じられた。 トロントって歴史が比較的浅い土地なので、街全体が商店街のようになっているというか、歴史的名所がまるでないところで、これは逆に移民がしやすくなっている(歴史的なしがらみがない)という意味では良いことなんだろうけど、歴史のあるモントリオールは美しくっていいなあ、と今回の旅行で実感した限りです。

とりあえず観光目的でカナダに行く際は、トロントよりもモントリオールに行ってみることをお勧めします。

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モントリオール旅行記 その3

2日間にわたって街中を歩き回ってたので、さすがに足がかなり痛くなってくる。そのため今日は主に美術館巡りをした。最初に行ったのはMuseum of Fine Artsで、17世紀くらいのヨーロッパ絵画から現代美術、さらにはイヌイットやアフリカの美術品などがいろいろ展示されてるのは見応えがあった。しかも無料。ヨーロッパの伝統絵画ってあまり好きではなかったんだけど、色使いは見事だなあと今さらながら再認識する。 それからちょっと歩いて現代美術館に行くが、こちらは規模が小さくて期待してたほどのものではなかったかな。

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それでもってホステルに帰還。夕食は昼と同じく、ダウンタウンのデパ地下にてファーストフードまがいのものを少々。ホステルの周りにはレストランが並んでるってのに、みんな高級で値が張るものばかりなので、いちいち地下鉄に乗って安メシを食いに行くのがなんか悲しい。根がケチなだけなんですが。