「ハルク2」主役が決定

エドワード・ノートンだってさ

いいことなんじゃないの?「アイアンマン」にロバート・ダウニーJr.が選ばれたときにも思ったけど、コミックが原作のアクション映画であっても、きちんと演技のできる俳優を起用するのは褒めるべきことかと。まあハルク自身はどうせまたCGになるだろうから、演技も何も関係ないんだが。

SF映画の続編で一番ヒドいのは?

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Slashdotの投票コーナーで「SF映画の続編で一番ヒドいのは?」というのをやっていて、次の8つが挙げられている:

「ロボコップ3」
「スター・トレック5」
「スター・ウォーズ エピソード1」
「エイリアン4」
「マトリックス・レボリューションズ」
「ターミネーター3」
「エスケープ・フロム・LA」
「20 Million Miles to CowboyNeal」

8番目の「20 Million Miles to CowboyNeal」というのはネタ用の架空の映画だから除外ね。全部観たことのある作品ばかりなので個人的な感想を述べていくと:

「ロボコップ3」は「ロボコップ」シリーズの中では一番面白いぜ!「家族のことを考えろ」と言われて「俺は家族の誇りなんだ」と言って警察バッジを投げ捨てて市民たちの味方につく警察所長たちのシーンなんて、フランク・ミラーの男泣きのテイストがバリバリで最高じゃないの。あと「ロボコップ2」も一般的な評判は悪いけど、フィル・ティペットによるストップモーションでガシガシ暴れまくるロボコップ2のシーンは実に素晴らしいと思う。さらに言うと「ロボコップ3」のあとに出来たTVシリーズもなかなかの出来で、「ロボコップ」シリーズは後になるほど面白さが増してったと思うんだが、これって俺だけだろうか。

「スター・トレック5」は劇場まで観に行ったけど、まあ確かに突然現れるスポックの兄とか、ウフーラのダンスとかダメな点はいろいろある作品なんだけど、キャストが楽しそうに演じてるからいいんじゃないの?「スター・トレック:叛乱」のほうが駄作だったと思うけど。あと「ネメシス」は一般的に言われてるほどヒドい映画ではなかったと思うよ。

投票で一番人気(?)の「スター・ウォーズ エピソード1」は作品の出来が云々というよりも、個人的にちょっと仕事で関わったことがあって、いろいろ学ばせてもらった映画なので口が裂けても駄作とは言えんなあ。

「エイリアン4」は問題外。あれは傑作。「エイリアン3」だったら1票入れたかも知れんけど。

「マトリックス・レボリューションズ」が投票では2番人気か。決して悪い映画ではなかったけど、確かに第1作の人気にのっかって悪ノリしてるような内容だったことは否めない。俺が第1作を好きなのは、あれがグラント・モリソンのコミック「インビジブルス」をかなり明白にパクっているということなんだけど(これについては諸説あり)、2作目と3作目は「機械と人間の対決」を中心に持ってきてしまい、「インビジブルス」のように「現実とは何か」というテーマを扱わなくなってしまったのが非常に残念なところだった。

そして「ターミネーター3」。「ターミネーター2」もそんなに好きじゃなかったけど、こちらは明らかに肉体的衰えが見える主役、まるで怖く悪役、観客の期待を裏切るような結末と、「この映画はつくる意味があったのか?」と考えさせるような出来のものだったんで、とりあえず俺はこれに投票しときました。ニック・スタールはアレキサンダー・シディグにしか見えないし。

「エスケープ・フロム・LA」は濃いオヤジ俳優が総出演してた前作の足下にも及ばなかったけど、意味もなく表れるピーター・フォンダとか、相変わらずお美しいパム・グリアーとかが良かったので及第点。

あとスラッシュドッットのコメント欄では「ハイランダー2」こそ最悪の続編ではないか?という意見が多く出てるみたい。確かに前作と何のつながりもないストーリー、自分で島流しにした主人公をわざわざ追いかけてくる悪役、悪ふざけで演技してるとしか見えないショーン・コネリーなど、見てて腰が抜けるような展開が満載の映画だけど、単に駄作として片付けるにはあまりにも勿体ないというか何というか。ディレクターズ・カット版は面白いという話だけど、ホントかいな。

ちなみに「SF映画の続編で一番優れてる」のは何と言っても「グレムリン2」だよなっ。あれをSF映画と見なすかどうかは微妙なところだけど。

追悼 カート・ヴォネガット

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初めてヴォネガットの本を読んだのは中学生か高校生のころ、地元の図書館にあった「スラップスティック」を借りてきたときだった。あの頃は彼のことなんて何も知らなくて「カート・ヴォネガット」と「カート・ヴォネガット・ジュニア」という親子2人の作家がいるもんだと思ってたっけ。そして彼の簡潔で読みやすい、けれど奥が深く、軽快なユーモアに満ちているようでどことなく物悲しいところがあり、それでも最後には人間への望みを捨てていないような文章にすぐに魅せられて、高校時代は彼の本を読みあさってばかりだった。俺が長編をすべて読んだことがある作家って彼くらいのものじゃないかな。俺の人格形成に大きな影響を与えた作家の1人であることは間違いない。

一般的には「スローターハウス5」や「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」あたりが彼の傑作として知られているようだけど、個人的にはやはり「猫のゆりかご」が一番好きだったなあ。作家の取材旅行が南米の島での騒動にまきこまれていき、しまいには世界が破滅してしまうというバカバカしさ、そしてその背後にある真面目さが素晴らしかったのです。ほかには「母なる夜」や「青ひげ」も好きだったっけ。キルゴア・トラウトの息子が泣きじゃくって終わる「ガラパゴスの箱船」のラストにも感動したものです。

彼がかつてエッセイで、姉の夫が粘土入りの風船というおもちゃ(ピエロの顔が描いてあって自在に表情を変えられる)を売り出そうとして大失敗し、そのまま姉夫婦は不幸に見舞われて他界してしまったということを書いてたけど、彼の小説もこのおもちゃのようなものだった。一見すると普通に愉快そうなものに見えるんだけど、その裏には何かしら哀しい話があるというふうに。そして愉快そうな文章のあいだにそうした物悲しい話があっただけに、その話は何倍もの衝撃をもって読者に訴えかけることができたんだろう。

「タイムクエイク」で小説の断筆宣言こそしたものの、エッセイなどは書き続け、去年も「デイリーショー」に出演して政権批判などをしていたし、まだまだ長生きして我々を啓蒙してくれると思っていたのに、転倒による負傷が原因で亡くなってしまうとは、あまりにも残念なお別れとなってしまった。でも彼は決してこの世を離れたわけではなく、「スローターハウス5」のトラルファマドール星におけるビリー・ピルグリムのように、時間の流れを離れて幸せなひとときに身を委ねることになったんだろう。AintItCoolにも素晴らしい追悼記事があるので読んどくように。

合掌。

so it goes.

「ザ・スピリット」のポスター

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ここ最近は「シン・シティ」や「300」のヒットによりハリウッドでの株価がグンと増してきたフランク・ミラーが、ついに(なぜか)監督を務める「ザ・スピリット」のポスターが発表されてた。絵はもちろんミラーによるもの。

「ザ・スピリット」というのは何かというと、アメコミの神様のような故ウィル・アイズナーが1940年代に創作したコミックおよびその主人公の名前のこと。従来のスーパーヒーローものとは一線を画したその洗練されたスタイルにより、アメコミの金字塔と見なされている作品なのです。

生前のアイズナーと親交の深かったミラーが監督をやりたがるのは自然なことなんだろうけど、前にも書いたようにここ最近のミラーの作品はとっても大味なものになっているので、アイズナーの真面目なんだけれどどこかユーモラスなスタイルをちゃんと映像化して欲しいところです。

そもそもポスターの絵がスピリットに見えないんだけど…。

「LESSONS OF DARKNESS」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの1992年の作品「LESSONS OF DARKNESS」を観た。

これはこないだの「THE WILD BLUE YONDER」と似たコンセプトの作品で、地球にやってきた宇宙人が人間たちのことを観察するという内容のもの。ヘルツォーク自身はこれはSF作品だと言ってるようだけど宇宙人たちが登場するわけでもなく、ナレーションもごくわずかで実際にはドキュメンタリーに非常に近いものになっている。

そして話の舞台となるのは第一次湾岸戦争後のクウェートおよびイラク。一面が茶色い砂漠のなかで爆撃によって破壊された巨大アンテナ、流出した原油によってできた湖、イラク軍の拷問の器具などが、オペラ音楽にのせて淡々と映されていく。話の後半は油田での消火活動にあたる人々に焦点があてられ、原油が雨のように降り注ぎ巨大な火柱が吹き荒れるなか、黙々と作業を続けていく消防士たちが登場する。

これらの映像は、戦争という惨事によって生み出されたとはいえ、実のところ非常に美しい。単なるドキュメンタリーもしくはプロパガンダ映画とは明らかに異なった作品なんだが、ヘルツォークがこれを通じて何を訴えたかったのかを理解するのは難しいかも。最後に消防士たちが油田に火を放つシーンに(実際は消防活動の一環らしんだが)、「火のない生活に耐えられなかった彼らは、狂気に駆られて再び火をつけた」というようなコメントをつけることで、戦争に何度も駆られる人間の性を表したかったのかもしれない。

それにしても現在のイラクの惨状を知ってしまうと、第一湾岸戦争での惨劇がひどく他愛ないものに見えてしまうんだよな…。