フランク・フラゼッタ死去

巨星墜つ。アメコミ画家といよりもイラストレーターの人でしたが、彼のアートの影響がアメコミや映画に与えたものは多大なものがあるかと。ジョージ・ルーカスなどにも影響を与えているはずだし、彼が表紙を手がけたことで「コナン」シリーズの売上が大幅に伸びたなんて逸話も読んだことがあったっけ。彼のスタイルは上の「Death Dealer」のようなマッチョなものが有名ですが、まだ駆け出しの頃に描いてたコメディ漫画とかでも、そのレイアウトとか人物描写は卓越したものがあったんだよな。アメコミでペインテッド・アートを用いる人は多いけど、彼みたいなヒロイック・ファンタジー向けのアートを描く人はずいぶん少なくなったような気がする。リチャード・コーベンとかサイモン・ビズリーとかも最近は画風がずいぶん変わってしまったし。

リンク先の記事によると晩年は認知症になっていたり親族内での権利争いなどがあって苦労してたみたいだけど、その作品はこれからも長く人々をインスパイアし続けるであろう。合掌。

ブログのレイアウト変更

自分の誕生日にあわせ、なけなしのCSSの知識を駆使して当ブログのレイアウトを少し変更しました。記事欄のデフォルトの幅が広くなって、ブラウザの幅にあわせて記事の文章位置とかが変わるようになってる、はず。これでYouTubeの幅広の動画とかもそのまま埋め込める、はず。本当はツィッターの埋め込みなんかも考えたんだけど、面倒なのでやめました。今のところうちのマックの環境でしか確認してませんが、もしどなたかの環境で見づらくなってたりしたらご一報ください。

「THE CUBE」鑑賞


ヴィンチェンゾ・ナタリのやつではないよ。ジム・ヘンソンがマペットたちに専念する前の1969年に作ったTVムービーだそうな。

男性は気がつくと立方形の部屋の中にいた。そこは床も壁も天井も白いタイルで覆われた何もない部屋で、ドアさえも存在しなかった。男性がどうにか部屋から出ようと努力する一方で、外からは部屋のマネージャーと名乗る人物や用務員、ミュージシャン、警官などといった人々が入ってきて男性といろいろ会話をしていき、それにあわせて家具が現れたり消えたりしていく。部屋の外から来た人々は自由に出て行くことができるのだが、男性だけはどうしても外に出ることができない。そして外から来た人の一人がこう告げるのだった。「ここから出るには、あなただけのドアを見つけなさい」と…というのが大まかなプロット。

いわゆる不条理劇的な内容であって話はまったく前に進まず、54分という尺はちょっと長過ぎる気もしなくはないが、部屋を訪れるさまざまな人物とのやりとりとか、それなりに凝った特殊効果を観てるだけでも面白いかと。博士らしき人物がやってきて「あなたはいまTVムービーのなかにいるのです。ほら、このテレビにあなたが映ってるでしょう」なんて言ってテレビを見せるというメタな展開もあったりするぞ。ちょっとゾクっとさせる結末もいいな。

その名もずばり「NBC Experiment in Television」というTVシリーズの1エピソードとして作られた作品らしが、昔はこういう実験的な番組も地上波で流される余裕があったことが伺える。ご存知のようにこのあとジム・ヘンソンは「セサミ・ストリート」や「マペットショー」といった傑作を生み出していったし、こんど続編が製作されるという「ダーク・クリスタル」は俺のとても好きな映画なのですが、もし彼がマペットに関わらなかったらどんな映像作家になってたかな、と思わせてくれる小品であった。ここでぜんぶ観ることができるよ。

「LUTHER」鑑賞

日本では殆ど知られてないけどイドリス・エルバっていうイギリス出身の俳優がおりまして、「ザ・ワイヤー」で麻薬組織の知的でクールなナンバー2であるストリンガー・ベルというキャラクターを演じた事であのドラマのファンのあいだでは今でも高い人気を誇る俳優なんだが、「ザ・ワイヤー」以降は「オブセッション 歪んだ愛の果て」とか「THE LOSERS」みたいな演技力をあまり必要としないような映画にばかり出ていてファンを嘆かせている人でもあるのですよ。そんな彼がイギリスに戻って主演したのがこの「LUTHER」というミニ・シリーズ。

ロンドン警察の刑事であるジョン・ルーサーは敏腕だが、自分なりの捜査を勝手に進めることや、精神的に不安定な面があって上司の悩みのタネだった。彼は追っていた連続殺人犯を昏睡状態にさせたことで休職扱いにされ、妻とも別居してしまう。そんな彼が7ヶ月ぶりに職場に戻って手がけることになったのが、一軒家における夫婦の射殺事件だった。彼は第一発見者である夫婦の娘が犯人であることを見抜くものの、頭脳明晰なサイコさんである娘は殺人の手がかりをすべて抹消していた。さらにこれによって娘はルーサーを次の標的にすることに決め、娘とルーサーの頭脳戦が始まるのだった…というようなストーリー。

BBCの猟期殺人サスペンスという点では10年くらい前に観た「MESSIAH」というシリーズに雰囲気が似ているかな。刑事が犯人の恨みをかって、奥さんが狙われる展開なんかも同じ。そういう意味では既存の刑事ドラマに比べてあまり目新しいところはなし。イギリス訛りの英語を話して情緒が不安定なルーサーはストリンガー・ベルと正反対のキャラクターで、それなりにラフな魅力とかはあるんだけど、妻の不倫を知ってドアを突然破壊するようなキャラに感情移入はしづらいかも。むしろ殺人犯を演じるルース・ウィルソンのサイコっぷりが光っていて、そちらを2話以降も観てみたいと思わせる好演だった。

というわけでストリンガー・ベルの再来を期待してると肩すかしをくらうかもしれないが、イドリス・エルバは今後もいろいろ映画に出るみたいなので、いずれ彼の演技力をフルにいかした作品が作られることをねがいましょう。