「THE LOSERS」鑑賞


本国での評判がイマイチだったのでなるべく期待せずに観たんだが、それでもダメだった…。

以前にも書いたようにアンディ・ディグルとジョックによるDCコミックス/ヴァーティゴのコミックが原作のアクション映画で、クレイ率いる米軍の特殊部隊がボリビアで麻薬組織殲滅のミッションを行っていたところ、マックスと名乗る謎の男によってミッションは妨害され、幼い命が多数失われる結果となってしまう。おまけにアメリカ政府によって米軍との関わりを否定され、死亡した扱いになってしまったクレイたちはアイーシャという謎の女性の手を借りてアメリカ本土に戻り、マックスに復讐を試みるのだが…というような話。

まあ普通のB級アクション・ムービーといった出来か。メジャースタジオが関わってるだけあって爆発シーンとかは金がかかってるけどね。原作にあった政治的なトーンは鳴りをひそめ、意外な秘密を持った悪役だったマックスも普通のサラリーマンのような人物になってしまっているのが非常に残念なところ。あと続編を意識した作りにするのはいいけど、あそこまでラストをほのぼのとしたものにする必要は無かっただろうに。何でクレジットに「Don’t Stop Believin’」なんかが流れるんだよ!原作では華々しく散っていったルーザーズの面々に対して失礼でありますよ。

じゃあ原作を知らない人なら楽しめるのかといったらそうでもなくて、全体的に話の展開があわただしくて、派手なアクションシーンがあっても何の余韻もなしに次のシーンに移るものだから話の流れににメリハリがなく、役者の演技についても「とりあえずシーンごとに演技をしました」という感じがして感情移入できないんだよな。復讐に燃えているはずのクレイはホテルで休んでばっかだし、アイーシャの行動も不可解なところがあったかと。ピーター・バーグ(脚本)って人物描写はもっと上手い人かと思ってたんだけどな。監督のシルヴェイン・ホワイトが力不足なのか?あとアクション・ムービーにしてはやけに彩度が強いカラーコレクションがされてるのも気になった。ボリビアの町中なんて「スラムドッグ・ミリオネア」みたいだったぞ。

でもまあロケットランチャーをぶっ放すゾーイ・サルダナなどはやはりカッコ良いし、派手なドンパチもあるし、酒でも飲みながらDVDをレンタルしてみる分には楽しめる作品かと。今夏公開の「Aチーム」はこれに比べてどのくらいの出来なんでしょうかね。俺はとりあえず原作コミックスを読み直して、ガッカリした気分を直すことにします。

「COVERT AFFAIRS」鑑賞


スキッとさわやかUSAネットワークが送る新作ドラマ。

いわゆる女スパイもので、CIAの新人スタッフであるアニーは突然CIAのなかでも秘密の部署に異動になり、フィールド・エージェントとして諜報活動に加わることになる。最初はドジを踏むものの、ガジェット使いの盲目の同僚に助けられてどうにか任務をこなし、一人前のエージェントとして迎えられるアニーだったが、CIAの真の狙いは彼女の元ボーイフレンドにあったのだ…というような話。

主演は「コヨーテ・アグリー」のパイパー・ペラーボ…ってあの映画観てないからよく知らんがな。女スパイものということで「エイリアス」と比較されてるようだけど、あっちよりもっと軽めのアクション作品になっている。言うなれば典型的なUSAネットワークのシリーズということですかね。あまり深く考えずに楽しめる作品だし、いずれ日本でも放送されるんじゃないかな。主人公の恩師として「ザ・ワイヤー」のクラーク・ピーターズが出てたのが個人的にはプラスだった。

「THE GLADES」鑑賞


A&Eの新作刑事ドラマ。なんか呆れるくらいの凡作だった。

主人公のジムは敏腕だが型破りの刑事で、シカゴで上司とモメてフロリダにやってきたものの、そこでもマイペースを貫き周囲の同僚に迷惑をかけていた。そんなある日、沼地で女性の首なし死体が見つかり、ジムは捜査に乗り出すのだが…というのが第1話のプロット。

主人公のジムはいわゆる「ハウス」的な「優秀だが嫌な奴」という設定なんだけど、実のところ終始ニヤついて聞き込みの相手を侮辱してるだけで、どこらへんが優秀なのかはよく分からず。事件現場をウロついて、沼から証拠品を拾ってるくらいしか捜査らしいことはしていなかったような。彼を演じるマット・パスモアとかいう俳優もぜんぜん深みのある演技をしてないし。キャストのなかでは「シャッター・アイランド」のジョン・キャロル・リンチが相変わらず良かったんだけど、どうもレギュラーでなくゲスト出演の立場のようだった。

一番ムカついたのは死体の発見者たちに主人公が何度も聞き込みを行って、どんどん彼らのアリバイを崩していくのかと思いきや、最後にまったく予想もしてなかったところから真犯人が出てきて、それまで観ていた人の期待をガラガラと崩壊させるようなオチになったところ。ああいうのはドンデン返しと言うのではなくて、単なるこじつけだよ。

パイロット・エピソードである程度話が完結すること自体には何の不満もないが、普通は少し伏線を残しておくとか、主人公の過去を謎めいたものにしとくとか、登場人物同士の関係を波乱含みのものにしとくとか、何かそういうフックのようなものをつくって、次の話も観たいなと人に思わせるべきなんだけどね。これはそういう発展性をすべて自ら断ち切ってしまったという、ある意味では感心できるくらいに珍しい番組であった。よくこんな脚本にGOサインが出たよな。

というわけで、フロリダを舞台にしたシリーズが楽しみたいのなら「バーン・ノーティス」を観ましょう。

「GREENBERG」鑑賞


「イカとクジラ」のノア・バームバック監督最新作。

神経衰弱のため精神病院に入っていたロジャー・グリーンバーグは、LAに戻ってきて兄夫婦の家に泊まることになる。そこで兄のアシスタントであるフロレンスと出会い、2人は恋仲になるのだが、グリーンバーグの排他的な性格が災いして、なかなか2人の関係は進まず…というようなお話。

そもそも25歳の娘が40歳の男と出会ってすぐに恋仲になるか?という最大の疑問はまあ忘れよう。主人公のグリーンバーグは人付き合いが苦手で、企業や役所に苦情の手紙を送るのが趣味で、不快なことがあるとすぐ友人や恋人に怒鳴り散らすような最低の奴なんだが、それでもどこか繊細な部分があって、心に不安を抱えている姿をベン・スティラーが好演している。彼とは対照的に明るくて人に好かれるフロレンスを演じるグレタ・ガーウィグの演技も素晴らしい。

これで主人公が20代とかだったら典型的なサンダンス系映画になるんだろうが、40歳だというのが結構ポイントで、親友に再会しても昔に組んでいたバンドのことしか話せず、何もしてないことから同世代の人には「あなたその歳で度胸あるわね」とまで言われ、かといって若い世代とも話が合わず、人生が空回りしている姿には共感できるところがあった。

決して退屈な映画ではないけれど、話の起伏が少ないため万人向けの作品ではないかな。また「イカとクジラ」のほうがキャラが立っているという意味では面白かったかもしれない。あとサントラをLCDサウンドシステムのジェイムズ・マーフィーが担当してるけど、あまりLCDっぽい曲は使われてなかったような。

30〜40代の人に観てもらいたい、小ぢんまりとした良品ですよ。

「UNNATURAL HISTORY」鑑賞


なぜかカートゥーン・ネットワークで始まった実写ドラマ。世界の秘境を転々として様々な修行を積んできたヘンリー少年は、いわゆる「じっちゃん」的な恩師が亡くなったことでアメリカに久しぶりに帰ってくる。そこで高校に通うことになった彼は、ジャングル仕込みの言動で周囲を驚かせることに。そして恩師の死因を調べていたヘンリーは、彼が暗殺されたことを知り、アメリカの歴史にまつわる財宝の謎に巻き込まれて行く…というような話。

まあ明らかに子供向けのシリーズで、ジュブナイル版「ナショナル・トレジャー」というか、「ヤング・インディ・ジョーンズ」みたいな作品。都会にやってきた秘境育ちの少年、ということで「伊賀野カバ丸」とか「燃える!お兄さん」みたいな(例えが古くてすまん)ドタバタ劇になるかと思ってたんだけど、ヘンリー君は意外と常識人なのですんなりと高校生活にとけ込むことができたのでした。しかも海外育ちなのでアメリカの歴史は全く知らないという点がなんかショボいぞ。

いかにも夏休み中の子供向けというような安っぽい作品だけど、それでもカメラワークとかは十分凝ってたりするのがアメリカの底力だよな。役者もみんな無名の下手な連中ばかりだが、主人公の叔父をマーティン・ドノヴァンが演じてるのは意外だった。ハル・ハートリーと組んでた頃はいい役者だったのに。こんな子供向け番組に出てるのはなんかもったいない。