「OUTCASTS」鑑賞


なんかよく分からないBBCのSFミニ・シリーズ。

舞台は2040年の近未来。何らかの災害に見舞われた地球を人々は見捨て、他の惑星への移住を進めていた。そんな惑星の1つであるカルパチアでは少数の移住者たちがコロニーを建設して自給自足の暮らしをしていたが生活は楽ではなく、コロニーのリーダーとカリスマ探検家のミッチェルの仲も不穏なものだった。そんななか、数年ぶりに地球からの移民船がカルパチアへと接近してくる。はたしてこの船には誰が乗っているのか?そもそも船はカルパチアへ無事到着することができるのか…というのが第1話の大まかなストーリー。

ジェイミー・バンバーが出ているのでどうしても「ギャラクティカ」と比べてしまうが、当然ながらあれほどのクオリティはなく、特殊効果とかは「ドクター・フー」より少し凝ってる程度か。役者の演技とかカメラワークも凡庸だけど、とにかくストーリーがとても説明不足で、地球に何が起きて登場人物たちの過去に何があって、現在では何が問題なのかというのが殆ど説明されないまま話がズルズルと進んでいくんだよな。もちろんこの後の話でいろいろ説明はされていくんだろうけど、第1話を観た限りではあまりにも説明不足なので次の話も観たいという気になれなかったよ。

「ドクター・フー」が巧いのは、どんなに不思議な状況で話が始まろうともドクターという狂言廻し的な存在がいて、視聴者が抱く疑問についてきちんと解説する場を設けてるところなんだけど、この「OUTCASTS」ではそうした解説や謎を醸し出すような演出も無く、とにかく不親切さだけが感じられるような内容であった。「LIFE ON MARS」や「MI-5」といった名作を生んだキュードス・プロダクションの作品なのにこの出来は残念なところである。

「MONSTERS」鑑賞


こんどハリウッド版「ゴジラ」の監督に抜擢されたらしいギャレス・エドワーズの低予算映画。

NASAが宇宙に打ち上げた探査機がメキシコ北部に墜落し、それに付着していた地球外生物が繁殖してしまい、巨大なタコのような生物となって人を襲うようになってから6年。アメリカはメキシコとの間に巨大なフェンスを建設して国境を封鎖し、怪物たちの跋扈する地帯は立ち入り禁止区域となっていた。そしてメキシコでカメラマンをしているアメリカ人のアンドリューは、自分が勤める会社の上役の娘でメキシコを訪れていたサマンサという女性を、アメリカ行きのフェリーに乗せる仕事を命じられる。しかし手違いによってサマンサはフェリーに乗ることができず、仕方なく2人は立ち入り禁止区域を縦断してアメリカを目指すことにするのだが…というストーリー。

題名がそのものずばり「モンスターズ」だし、怪獣がストーリーに大きく関わってはいるんだけど、ガチな怪獣映画というよりもロードムービーのような作品であった。モンスターが姿をちらっと見せる描写とかは非常に巧いんだけど、ちゃんと姿を見せて暴れるようなシーンは殆どありません。むしろ主人公2人の旅の描写にずっと重きが置かれた内容になっていた。

かといって話が退屈になっているわけではなく、不安な暮らしをしているメキシコの人々や、戦闘機が墜落したジャングル、空爆で放棄された町などの光景が監督本人によってとても上手に撮られていて、低予算映画とは思えないくらいに独特の雰囲気を醸し出すことに成功していた。地球外生命体と暮らす人々というと「第9地区」を連想するが、あれよりもっと暗い雰囲気になっている。また実生活では夫婦だという主人公2人の掛け合いもいい感じ。ただしフェリーに乗り遅れた理由が「アンドリューがボンクラだったから」というのはどうかと思うし、もうちょっと全体に緊迫感があっても良かったような気はするけどね。

触手のCGとかは結構しょぼいもののモンスターをチラ見させることで低予算ぶりをうまく補っているし、人物や風景の演出とかもきちんとできる監督であることは理解できたんだが、果たしてこのスタイルが「ゴジラ」で通用するかどうかは疑問だなあ。暴れるゴジラの全体像をきちんと見せないとファンは納得しないだろうし。

あと俺も観賞後にIMDBの掲示板読んでやっと気付いたんだが、最後に重大なヒネリが隠されてるので見逃さない(聞き逃さない)ようにしましょう。

「THE CAPE」鑑賞


NBCの新シリーズ。

舞台となるのはカリフォルニアのパーム・シティという架空の都市で、そこでは警官の汚職がはびこり、チェスと名乗る謎の悪人によって警察署長の暗殺が続き、真っ当に機能しなくなった警察はアーク社という大企業によって民営化されようとしていた。そんな状況でも警部のヴィンス・ファラデイは強い正義感を持ってチェスを追っていたが、逆に彼こそがチェスだという濡れ衣を着せられ、警察に追われたあと爆発に巻き込まれてしまう。そんな彼を救ったのは、カーニバル・オブ・クライムというサーカス風の格好をした強盗団だった。そこで彼は黒いマント(ケープ)を自在に操る技を修行し、息子が読んでいたコミックにちなんで「ザ・ケープ」というヒーローになり、チェスとその仲間たちに戦いを挑むのだった…というような話。

これってSyfyチャンネルのシリーズじゃないの?と思ってしまうくらいにストレートなアクション作品。こういうのが好きな俺でも赤面してしまうくらいにベタな展開が続く作品であったよ。80年代なら「エアウルフ」とか「ナイトライダー」みたいなアクション・ドラマが普通に地上波ネットワークで放送されてたけど、現在ではどれだけ需要があるんだろ。実際に視聴率は低いみたい。

主人公を演じるデビッド・ライオンズって良く知らない役者だけど、脇役はやけに豪華で、キース・デイヴィッドにヴィニー・ジョーンズ、サマー・グローなんかが出ていたりする。でもサマー・グローの出てるシリーズが長続きしたことないんだよな。

第1話は主人公のオリジン・ストーリーを無理して詰め込んだような展開になっていて、なんか全体的に薄っぺらい感じ。おまけに主人公がなぜかやたら弱く、ヒーローデビューして悪人の銃をケープで奪おうとしたら、逆にケープをとられて物陰から引きずりだされ、スマキにされて海に投げ込まれるというトホホっぷり。いろいろ修行したのは何だったんだよ!おまけに宿敵のチェスの正体はアーク社の社長という、すでに富も名声も手に入れた人物であるため、なぜ今さら覆面をかぶって悪事を働いてるのかよく分からなかったりする。

日本ではAXNやユニバーサル・チャンネルあたりが好みそうな内容の作品ではあるんだけどね、まあ長続きはしないでしょう。

「ソーシャル・ネットワーク」鑑賞


2003年は遠くになりけり。これ観てて連想したのが、アップルとマイクロソフトの黎明期を描いたTVムービー「バトル・オブ・シリコンバレー」だった。だからという訳ではないが、意地の悪い言い方をすれば「ものすごく良く作られたTVムービー」という感じか。世間でちらほら言われている、2時間ドラマのような映画という表現はあながち間違ってないと思う。

いやね、技術的には大変良くできた映画だと思うのですよ。役者の演技から脚本から撮影技術に至るまで(ただしセピア色のカレコレは最近みんなやってて食傷気味だが)。トレント・レズナーによる音楽も効果的に使われていたし。最後にビートルズ持ってくるとは思わなかったけどね。ストーリーテリングも非常に重厚だし見応えがあり、ハーバードという一種特殊な環境における当時の雰囲気をきちんと描写しているんだが、最初から最後までそんな感じであるため、コース料理でメインディッシュをずっと出されてるような感触だった。話にメリハリがないわけではないけど、1本の映画としては大きなうねりに欠けているというか。

まあ俺自身がフェイスブックやってなくて、マーク・ザッカーバーグのことも殆ど知らなかったというのが原因なのかもしれないな。観てる間はとても楽しめたんだけど、そのあとに自分がこの映画から得たものは何なのかと考えたら、きちんとした答えが見つからなかったという、そんな作品でした。

「FAIRLY LEGAL」鑑賞


USAネットワークの新作シリーズ。主演のサラ・シャヒって「Life 真実へのパズル」の人か。彼女の元夫の検事を「ギャラクティカ」のアンダース君ことマイケル・トルッコが演じてるぞ。

サンフランシスコを舞台にした法廷ドラマで、最近亡くなった父親の法律事務所で働くケイトは正義感はあるが型破りなところがある女性で、もとは弁護士だったが調停人になってさまざまな事件を扱うのだった…というような内容。

朝寝坊して起きたら横に男が寝ていたというガチな展開から始まり、法廷で羽目をはずして裁判官に呆れられる場面とか、不当に逮捕された黒人少年を救おうとする姿などは今までの法廷ドラマで嫌になるほど観てきた描写であり、目新しさはまったくなし。ケイトの口うるさい義母が彼女くらいの年齢であり、法律事務所のボスだという設定が珍しいくらいか。ストーリー展開もごく平凡であり、それだけでは1時間半のパイロット尺が埋められないのでどうでもいいBストーリーを持ってきているようでは先が思いやられるな。サンフランシスコの風景は美しく撮られてるけどね。

こういう軽妙な法廷ドラマって、主人公が難解な状況を克服して勝利(正義)を勝ち取るというカタルシスをどれだけ視聴者に与えられるかというのが重要なポイントだと思うんだけど、あまりにもストーリーが平凡すぎてろくに主人公に感情移入できなかったよ。今後は相当頑張らないと1シーズンで打ち切られるんじゃないだろうか。