「Force Majeure」鑑賞

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昨年高い評価を受けたスウェーデンの映画。東京国際映画祭でも「ツーリスト」という題で公開されてたのか。

山奥のスキーリゾートへ一家でやって来た父親と母親、そして二人の子供たち。スキーを楽しんだ彼らがホテルのテラスで昼食をとっていると、山の向こうで計画的な雪崩が起こされる。しかし雪崩は想定以上にホテルへ近づいてきて、客たちはパニックに。結局はすこし雪をかぶっただけで済んだものの、そのとき父親は一人で逃げ出してしまっていた。自分と子供たちを置いて逃げた彼を軽蔑する母親と、逃げたわけではないと弁明する父親。二人のいさかいは翌日も続き、周囲の人たちも巻き込むことに…という内容。

プロットは「ロンリエスト・プラネット」(未見)っぽいのかもしれないけど、リゾート地におけるパパさんの不遇を描いたブラックコメディ、という点では「エスケイプ・フロム・トゥモロー」を連想したよ。男性の威厳がショボンと萎えさせられるような展開が巧みに出てきます。個人的にはダメ男には共感せざるを得ないので父親の行為は十分理解できるのだけど、女性が観るとそこらへんは結構違うのかも。ラストの展開もちょっと考えさせられたな。

ヨーロッパ映画ゆえか会話シーンが多くてちょっと長ったらしい気もするが、悪い映画ではないですよ。ジュリア・ルイ=ドレイファス主演・製作でハリウッドでのリメークも決定したようなので、気まずい系のコメディとして彼女がうまくアレンジしてくれるんじゃないだろうか。

「BLOODLINE」鑑賞

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「ダメージ」のクリエーターによる、Netflixのオリジナルシリーズ。

舞台となるのはフロリダキーズの湿地帯。そこではレイバーン家がホテルを経営しており、一家は地元の名家として扱われていた。そして親族の集いが開かれるのだが、借金や麻薬中毒を繰り返していた長男のダニーも久々に地元へと帰ってくる。保安官をしている次男のジョンは、パーティーが終わったあとにダニーがまたどこかへ去ることを臨んでいたが、ダニーは地元に残ってホテル業を手伝うことを希望し、一家の暗い過去が彼によってぶり返されることになる…というプロット。

第1話の話の展開がなかなか遅くて、ストーリーの方向性が見えないのだが、沖で死体となって発見された16歳の少女も関係し、別の殺人が起きることも示唆され、いろいろ暗い話が待ち構えているみたい。陽光の降り注ぐフロリダにおける南部ゴシックということになるのかな。例によって13話がいっぺんに公開されてるのですが、観てる時間がありません。

出演者はかなり豪華で、カイル・チャンドラーにリンダ・カーデリーニ、サム・シェパードにシシー・スペイセクなど。今やネット番組でもこれだけのキャストを集められるようになってしまったんだなあ。チャンドラー演じる次男のジョンがいちおう主人公だけど、ベン・メンデルソーン演じる長男のダニーが完全に主役を食ってしまっている。この番組の効果かどうかは知らないけど、彼は「スター・ウォーズ」のスピンオフ作品への出演も決まったそうで。

手堅いキャストによる重厚なドラマということで見応えはあるけど、日本人向けというわけではないかな。こんどNetflixが日本にやってくるとき、どこまでオリジナルシリーズを日本でも公開していくんだろ?

「インヒアレント・ヴァイス」鑑賞

Inherent Vice
トマス・ピンチョンの同名小説(邦題は「LAヴァイス」)を原作にした、ポール・トーマス・アンダーソンの新作。

おれピンチョンの小説って高校の時から好きで読んでるのですが、「メイスン&ディクソン」の冗長さに冒頭で挫折し、あれよりも長い「逆光」も当然ながら読んでおらず、長年彼の著作からは遠ざかっていたものの、今回の映画化にあたって原作を読んでみたのですよ。ピンチョンの小説にしては結構分かりやすい内容のものだったと思う。とはいえ話がちょっと進むたびに登場人物がどんどん増えてくるし、探偵小説のようで話があらぬ方向に進むなど、決して映像化しやすいような作品ではないけどね。

映画のプロットは原作に忠実で、舞台は1970年のカリフォルニア。ヒッピーまがいの私立探偵であるドック・スポーテッロのもとに昔の彼女が現れ、彼女のいまの愛人である不動産業の大物の失踪について調べて欲しいと依頼する。さらに別の案件も抱えたドックは調査にあたった店で何者かに殴られて昏倒。目覚めたら警察に囲まれており、しかも横に何者かの死体があって…というプロット。

でも普通の探偵ものではないからね、事件のまっとうな解決などを求めてはいけないよ。原作のマイナーなキャラクターにナレーションを行なわせてプロットの説明をしてるものの、原作をかなり端折っている部分もあるため、ストーリーを理解するのは結構厳しいと思う。小説だと登場人物について「あれこいつ誰だったっけ?」とページを戻して再確認することができるものの、映画だとどんどん話が進んでいってしまうのがデメリットだよな。

あとピンチョンの小説ってドタバタしてるようで、人知を超えた集団や組織(今回は麻薬カルテルの『黄金の牙』)が世界を乗っ取っていくことに対するペーソスと、過去の戻らぬ幸せに対する諦めのようなノスタルジア(警察に駆逐されるヒッピー文化、になるのかな)が根底にあると思っているんだが、映画版では『黄金の牙』の存在が控え目になっていることもあり、登場人物のもっとパーソナルな部分に話が終始していたような。夢が醒めたような原作ラストの文章は本当に素晴らしかったんだけど、映画の終わりはちょっと異なってましたね。

また原作は小説ながらも例によって当時の音楽やテレビ番組や映画が羅列され、音楽に至っては100曲くらい言及がされているけど、映画では版権の関係か意外と使用曲は少なめ。ニール・ヤングやカン、あとは「上を向いて歩こう」など。音楽自体はアンダーソン作品の常連であるジョニー・グリーンウッドが担当してるが、クラシックっぽくってあまり映像に合ってないような気もするのよな。

主演はホアキン・フェニックスで、ほかにジョシュ・ブローリン、リース・ウェザースプーン、ベネチオ・デル・トロなどなど。原作だと主役のドックは30手前だし、いろいろイメージが異なる役者もいたものの、みんな良い演技をしてるのではないでしょうか。マーティン・ショートが意外なくらいの怪演をしてたな。なお出てくる女性がみんなブスというか田舎臭いメークをしてるのは70年代を意識して?それとも監督の趣味?

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ほどの傑作ではないものの、画面の構成とか斬新だし、悪い作品ではないですよ。でもやはり個人的には原作の方が良かったな。

「iZombie」鑑賞

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The CWの新シリーズで、原作はクリス・ロバートソンとマイケル・オールレッドによるヴァーティゴの同名コミック。

若き医学生のリヴ・ムーアは頭脳明晰で婚約者もいて幸せな日々を送っていたが、たまたま同僚に誘われて参加したパーティーでゾンビの集団に襲撃され、傷を負った彼女もゾンビ化してしまう。定期的に人間の脳を食べないとまっとうに暮らせなくなった彼女は、検死医として働くことで脳ミソにありつけるようになるが、遺体の脳を食べるとその人物の生前の記憶や癖が彼女の身につくようになってしまった。そこで彼女はその能力を活かし、同僚や刑事の手を借りて、遺体ができる原因となった殺人事件を解決していく…というストーリー。

原作だと主人公の名前がグウェンだったし、職業も墓掘り人で、もっとモンスターものっぽい内容だったような?よってコミックとは殆ど別物で、プロデューサーがロブ・トーマスであることから彼の「ヴェロニカ・マーズ」にスタイルが似通っているかと。あと死体安置所で働く女の子が事件を解決する、というのは「トゥルー・コーリング」にも似てるな。あと主役のローズ・マクアイヴァーをはじめ、あまり有名な役者は出演してないみたい。

主役がゾンビゆえに無表情でゴスっぽく、脳ミソにタバスコかけて食べているというのは万人受けしないかもしれないが、基本的には女の子が逆境にめげずに奮闘する物語なので、「ヴェロニカ・マーズ」好きだった人はチェックしても良いんじゃないでしょうか。

「Wrestling Isn’t Wrestling」鑑賞

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最近は映画製作者というよりもメディア・パーソナリティみたいになってきたマックス・ランディスによる新たな短編。彼のWWE愛を延々と綴ったもので、特に長年にわたって第一線で活躍し、WWEの幹部にまで登り詰めたトリプルHの立身伝のような内容になっている。

最初は貴族ギミックで登場したものの大成せず、ショーン・マイケルズなんかと組んだりD-ジェネレーションXを結成して名を成していくものの、やがて若手に立場を脅かされるようになって…といったストーリーはいちおうあるが、まあ全部ブック(シナリオ)で仕組まれてるわけだし…WWEの常としてまっとうな結末は存在せず、24分もあるうちの後半はかなりグデグデなのだが、「プロレスは本物じゃないって?プロレスはレスリング以外の全てのものさ!」と言い切るラストがファンボーイっぽいな。

男性レスラーをみんな女優が演じて、逆にチャイナみたいな女性レスラーを男性が演じてるのだが、当然ながら似てないのでナレーションなしでは誰が誰か分からず。また前の「The Death and Return of Superman」ほどではないのものの有名人がチョイ役で出ていて、マコーレー・カルキンやセス・グリーン、デビッド・アーケットなど、たぶんヒマそうな人たちが登場してます。

おれがWWE観てたのって2000年代初頭くらいまでなので、ランディ・オートンあたりが出てくる頃から話についてけなくなるのですが、ファンの方は余興で観てみるのもよりかと。