「SUPERGIRL」鑑賞

Supergirl, Season 1
CBSの新シリーズ。「マン・オブ・スティール」とは別のユニバースの話だと思うが、スーパーマン(顔は出さずに背後しか見えない)以外はあちらと同じキャラクターが登場するようではないので、それなりに棲みわけはするつもりなのかな?あと放送局が違うので「アロー」や「ザ・フラッシュ」とも別のユニバースになってるみたい。

スーパーマンことカル・エルのいとこであるカラ・エルは13歳のとき、故郷のクリプトンが崩壊するにあたって、地球に送られた幼児のカルを見守るためにカルの後からロケットで飛び立つものの、事故によって時の流れないファントムゾーンに幽閉されてしまい、24年間にやっと地球に到着する。そしてすでに成人してスーパーマンとなっていたカルに見つけられ、デンバース夫妻の養子となって普通の女の子として育てられる。やがて姉のアレックスとともにナショナル・シティーで働くことになるものの、困った人たちを助けて街を守るために、いとこと同様にスーパーヒーローとなって活躍するのでした…というようなあらすじ。

スーパーガールはスーパーマンよりも年長だった!という意外な事実が明らかにされるわけだが、カラ・エルことカラ・デンバースは舌足らずでドジなメガネっ娘という設定で非常にカワイイでやんすよ。新米のスーパーヒーローという雰囲気がよく出ていると思う。危機に陥った人々を救うために走りながらシャツを開いて胸の「S」のマークを出すシーンにはね、やはり「マン・オブ・スティール」には欠けていた爽快感があるよな。

コミックからのキャラクターも数多く登場していて、ジミー・オルセン(黒人)がメトロポリスから引っ越してきているほか、カラが働く新聞社のボスはキャット・グラントだし、あとはマックスウェル・ロードとかレッド・トルネードなんかも出てくるみたい。エイリアンの監視組織であるDEOの司令官がハンク・ヘンショウだというのが気になるが、やはり原作どおりいずれ悪に転じてサイボーグ・スーパーマンになるのか?つうかDEOが出てくるということはボーンズ長官やキャメロン・チェイスが登場する可能性もあるのか?

気になるのは「ザ・フラッシュ」もそうだけど、主人公の正体を知っている人がやたら多いこと。ジミー・オルセンや職場の同僚のテック野郎(トイマンの息子という設定らしい)はまだしも、DEOのスタッフもみんな知ってるような感じで、正体がヴィランにばれたら一大事だろうに。なおカラがファントムゾーンを抜けたときに、クリプトンの罪人を載せた監獄船も一緒に地球に到着していたという設定になっており、ヴィランは「マン・オブ・スティール」同様に悪のクリプトン人が多くなるみたい。

スーパーガールを演じるのはメリッサ・ベノイスト(発音は「ブノワ」ではないよ)。「セッション」とかにも出てたけど今回はコケティッシュな魅力があって非常に良いです。あとはキャット・グラントをキャリスタ・フロックハートが演じていて、ちょっとコメディっぽい演技がやはり彼女には似合いますね。主人公の養父母はディーン・ケインにヘレン・スレイターと、過去にスーパーマンやスーパーガールを演じた役者が起用されてるのがニヤリとさせられるところだが、カメオ出演的な扱いなのかな?

アクションシーンもよく出来てるし、主人公の姿が日本の男女にも受けると思うので、これはぜひ日本でも放送してほしい作品。

「Fargo」シーズン2鑑賞

fargo-season-2-cast
「コーエン兄弟の作品、しかも『ファーゴ』なんてTVシリーズ化できんだろ」という大方の予想を見事にくつがえし、展開の読めない大傑作となったシリーズの第2シーズン。今回の舞台は1979年のミネソタとサウスダコタが舞台になっていて、前シーズンのプリクエルという扱いになっている。

1979年のサウスダコタはスーフォールズではゲルハルト一家が町の裏ビジネスを仕切っていたが、家長のオットーが心臓発作を起こしたことから外部のギャングたちが町を狙おうとしていた。そんななかゲルハルト家の末子のライは自分のビジネスの邪魔になりそうな判事を町から離れたダイナーで脅迫しようとするが、予定が狂って判事および二人の店員を射殺してしまい、自分は夜道をやってきた車に轢かれてしまう。ダイナーの事件を聞いて調査にあたる保安官のルーとハンク。一方で肉屋のエドはいつもどおり家に戻るが、そこでは妻のペギーが轢いたライが半死の状態でガレージに転がっていた…という設定。

シーズン1は雪の町での殺人という「ファーゴ」っぽさがまだ残ってたけど、今回は舞台が70年代ということもあり、かなり雰囲気の異なった内容になっている。スプリットスクリーンを多用した演出はずっと続くのかな?ライによる要領の悪い殺人とか、死体の片付けに四苦八苦するさまなどはむしろ「ブラッド・シンプル」に似ていると思う。しかし突然UFOが出てきたりして(いやホントに)、「ツイン・ピークス」っぽい展開もあるのだが、今後はたしてどうなっていくんでしょ。

前シーズンからキャストは一新されていて、パトリック・ウィルソン演じる保安官のルーが、シーズン1でキース・キャラダインが演じたダイナーの主人の若き頃、という設定。人を轢いても動じないサイコな人妻を演じるキルスティン・ダンストがクレジット上ではトップの扱いなので、彼女が主人公的な存在になるのかな。他にもジェフリー・ドノヴァンやテッド・ダンソン、ニック・オファーマン、ジェシー・プレモンズ、ブラッド・ギャレットといった他の番組なら主役を務めてるレベルの役者が勢ぞろいしてて結構すごい。さらにロナルド・レーガン役としてブルース・キャンベルも登場するらしいぞ。

話の展開がまったく分からないし、キャストも誰がどこまで生きてるのかも謎だが、前シーズンよりもさらにブラックなユーモアが増えているし、本国の批評家には絶賛されているようなので、今回もまた見逃せないシリーズになることは間違いないでしょう。

「Crazy Ex-Girlfriend 」鑑賞

Crazy Ex-Girlfriend, Season 1
Fuck Me, Ray Bradbury」でヒューゴー賞にもノミネートされたレイチェル・ブルーム主演&脚本によるThe CWのコメディドラマ。

口うるさい母親のもとで育ったレベッカは強迫観念にとらわれたかのように真面目に生きてきた独身女性で、ニューヨークの大手法律事務所で働くキャリアウーマンだったが、10代のときにサマーキャンプで片思いをしたジョッシュに10年ぶりに偶然遭遇したことで彼女の中の何かがふっきれ、職場での昇格の誘いも断ってジョッシュが住むカリフォルニアの田舎町ウェスト・コヴィーナ(「ビーチまで2時間、渋滞があれば4時間」)へと移り住み、小さな弁護士事務所での職を見つける。そこでジョッシュにうまく遭遇しようとする彼女だったがなかなかうまくいかず、逆にジョッシュの友人であるグレッグと仲良くなってしまい…というストーリー。

つまり正確にいうと主人公は題名にあるような「イカれた元ガールフレンド」ではなく「キ印のストーカー」なのですが、そこらへんはご愛嬌。神経質で恋愛に慣れてない女性が好きになった男性を苦労して追いかけるさまがね、結構面白いのですよ。第1話の監督はマーク・ウェブだが、やはり彼って「スパイダーマン」なんかよりもこういうラブコメのほうが合ってるよね。

また「Bradbury」みたいなミュージカルのシーンもいくつか挿入されていて、歌う弁護士ものということでは「アリー・myラブ」とか「私はラブ・リーガル」に近いものがあるかな。

第1話の時点では弁護士ものと恋愛もののどちらに比重が置かれてくのかまだ分からないし、この設定で話をどこまで引っ張れるのか不明ではありますが、結構面白い内容なので健闘を期待したいところです。

「ファイナルガールズ 惨劇のシナリオ」鑑賞

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先週末にアメリカで公開された、スラッシャー映画のパロディ。日本では12月にDVDスルー予定だとか。原題は「Final Girls」だが今年は「Final Girl」という良く似た題名の映画もあるので間違えないように。

少女マックスの母親はカルト人気を誇るホラー映画「血まみれのキャンプ場」に20年前に出演したものの、それによってタイプキャストされて、その後はろくな役につけないでいた。そんな母親を励ますマックスだったが、彼女のミスから交通事故で母親を死なせてしまう。それから3年、母の死から立ち直れないマックスは親友のガーティーたちに誘われて、ボーイフレンド未満の友人クリスと、「血まみれのキャンプ場」およびその続編のリバイバル上映に足を運ぶ。スクリーンに映った母の姿を観て気分が優れなくなるマックスだったが、誰かがこぼした酒に引火して映画館は炎に包まれてしまう。逃げ場を探したマックスたちはスクリーンを裂いてステージ奥に向かおうとするものの、彼らが到着したのは何と映画の中だった。呆気にとられるなか、母親(が演じる役)に再開するマックス。しかし彼女たちの滞在するキャンプ場にはマスクをかぶった連続殺人鬼「ビリー」が徘徊しており、マックスの周囲の人たちが次々と殺されていくのだった…というプロット。

まあ要するに「13日の金曜日」シリーズのメタなパロディになっていて、いちゃついたり、裸になったりした男女はビリーに殺される!とか作る側もよく分かっていらっしゃる。劇中の回想シーンではちゃんと周囲が白黒になって50年代にタイムスリップするといった設定も細かいな。なお題名の「ファイナルガール」というのはホラー映画で最後まで生き残る女性(「悪魔のいけにえ」とか)のことを指していて、劇中でファイナルガールだったはずの少女が実は…というのが1つの大きなプロットになっている。ちなみに「ファイナルガール」の対義語は「ファーストブラック」かな?と思ったけどこの映画では違いました。

いろいろ面白そうな設定ではあるんだけど、主人公たちが状況を理解してからの中だるみが結構激しかったような?90分程度の尺なんだから、もっとテンポよく人が殺されていかなくちゃ。とはいえ最後のほうは母と娘の物語になって、意外と感動するところもあったりしたよ。終り方も秀逸でした。

これ監督は「ハロルド&クマー」の三作目を撮った人?主演はタイッサ・ファーミガで、他にはマーリン・アッカーマンやトーマス・ミドルディッチといった中堅どころが脇を固めている。

ホラー映画をメタ的に扱った作品といえば「スクリーム」や「キャビン」などがありますが、これも低予算ながら頑張っている作品。こういうのこそ劇場でみんなで騒ぎながら観るべきだよなあ。

「ファンタスティック・フォー」鑑賞

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ご存知の通り本国では酷評されて興行的にも惨敗した作品であり、そんなにツマらないのかと恐る恐る観にいったわけですが、観賞中に席を蹴って帰りたくなるような内容ではなかった。とはいえ面白いのかと聞かれるとやはりツマらないと言わざるを得ないのですが。

脚本はリー&カービーのものでなくマーク・ミラーによるアルティメイト版のオリジン話を比較的忠実にフォローしていて、この映画と前後してミラーがフォックスのコンサルタントに就任したことを考えると必然的なことだったのかも。改善の余地はいくらでもありそうな脚本だが、そこまで悪いというわけではない。

問題はやはり演出面で、とにかく各所における「溜め」がないのだ。だから人を殴るシーンもすごくあっけないし、決めゼリフを言うところもカッコ良さがなくて、全体的にとてもメリハリが無い作品になってしまっている。まるで監督が自分の撮ったものに自身がなくて、とっとと次のシーンに行きたがっているような印象を受けてしまったよ。

公開されなかったロジャー・コーマン版のFFだって、(予算の関係で)作中ずーっと炎上しなかったヒューマン・トーチが最後にやっと炎につつまれて飛行するところは爽快感があったじゃん?この作品にはそれが欠けているのだ。個人的にアメコミ映画の映像化の1つの頂点はサム・ライミの「スパイダーマン」だと思ってるのですが、あれくらいベタな演出をやってくれたってバチはあたらなかっただろうに。

監督のジョッシュ・トランクは前作「クロニクル」のほうが、ファウンドフッテージの型式をとりながらも、もっと臨場感のある映像が撮れていたと思うけどね。フォックスが内容に満足せず撮り直しを命じたのは有名な話だし、予告編にあって本編にないシーンが結構あることを考えると、未公開映像が多分にあることが推定されるが、監督の思い通りのバージョンが出来たとしてもあまり出来映えは変わらなかったんじゃないかな。

役者もマイルズ・テラーがセリフを棒読み気味で、「セッション」で見せた迫真の演技はどこへ行ったのという感じ。リーダーとしてのペップトークが全然元気良く聞こえないのだもの。まあこれは前述のように演出面に負うところが大きいのかもしれませんが。逆にいまいち頼りない男性陣を管轄するお姉さん役としてのスー(および彼女のお父さん)は良かったな。

この映画の失敗を受けて、「FFはマーベルに返せ!」という意見も強いようだけど、何でもかんでもマーベルの映画ユニバースに含めれば良いというものでもないでしょ。続編製作の意向はあるようだし、キャストはまだしも監督を変えることによって、心機一転して優れた作品が作られることに期待します。